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「どうしよう! あれもこれもすっごい安い! うわ! え、この生地がこんな値段!? マジか! 買い! あ、これも可愛い! 買い! はぁぁ! 聖女様バンザイ!」


 会ったことも無い聖女に感謝しながらあちこちの店を見て回っていると、前方から誰かが小走りで走り寄ってきた。


 誰かと思いながら目を細めていると、優雅なドレスの裾が大きく揺れるのも気にせず美少女がやってくる。


「ヒマリ!」

「ん? この声……マリアンヌ様!」


 そう、あのムンクの叫び少女、もといマリアンヌだ。マリアンヌは飛びつかんばかりの勢いで私の前までやってくると、肩で息をしながら眩しいほどの笑顔を浮かべて開口一番に言った。


「今日のメイクは何点?」

「100点です! どこの美少女が走ってきたのかと思いました!」

「相変わらず口が上手いわね! ところでヒマリはこんな所で何をしているの?」

「お買い物をしてたんですよ。聖女様がやって来たって聞いて、もしかしたら色んな所で色んな物がお安くなってないかな~って」


 あけっぴろげに言う私にマリアンヌは口元を隠しておかしそうに笑った。


「ヒマリってば! でも確かに今日はそこら中がお祭り騒ぎになってるわ。何か面白い物はあった?」

「ありましたよ! 色んな色の鉱石をこんなにもゲット出来ました! これでまた化粧品のカラー物の新色を作ろうと思って」


 そしてがっぽり儲けるのである。安く仕入れ高く売る。商売の基本だ。


「まぁ! 出来たらまた教えてくれる?」

「もちろんです。またお手紙送りますね」

「ええ! 楽しみにしているわ! あなたが作った化粧品を最近凄くお友達に聞かれるの。お教えしたいけど、あまりにも忙しくなったらヒマリ、大変よね?」

「そうですね。一斉に来られると大変なので予約を取ってから来てもらえば大丈夫ですよ。マリアンヌ様はうちの歩く広告塔ですね!」

「そ、そんな重大な任務を請け負ってもいいの?」

「もちろんです! あなたのおかげで依頼が増えたんですよ」


 そう言って笑うと、マリアンヌは本当に嬉しそうな顔をしてくれた。そして私の手を取ってキラキラした目で言う。


「あのね、私、再来月とうとう結婚する事になったの! それでね、私たちの結婚式にヒマリをお呼びしても……構わない?」

「え!? それはおめでとうございます! で、でもマリアンヌ様の結婚式に……私が!?」


 結婚の報告は本当におめでたいし嬉しいが、それは完全にアウトだろう。何せマリアンヌはルチルの友人で侯爵令嬢だ。そこに私みたいなド庶民は流石においそれと行ける訳がない。


 困った私の顔を見て何かを察したのか、マリアンヌの顔がみるみる間に悲しげに歪んでいく。だから私は考えた。そして一生懸命考えて辿り着いたのは——。


「そ、そうだ! 二次会! 二次会をしましょう!」

「二次会? なぁに? それ」

「私の居た世界では結婚式の後に披露宴、その後にさらに二次会と言うものがあったんです。そこには色々な事情で呼べなかった友達や家族も招待してお祭りみたいに無礼講ではしゃぐって言う……まぁ、そんな感じのやつです」


 途中でふと先に嫁に行ってしまった友人たちの二次会を思い出して言葉を詰まらせてしまったが、まぁ概ねこんな感じだったはずだ。


 私の心配を他所にそれを聞いてマリアンヌは手を叩いて喜んだ。


「素晴らしいわ! 二次会? それにはどんな人を呼んでもいいの? 乳母も? 料理長も? 庭師も!?」

「もちろんです。どんな人でも階級や出自に関係なく参加する事が出来るのが二次会ですから。マリアンヌ様はお屋敷の方たちを呼びたいのですか?」

「ええ。私がずっと小さい頃からお世話をしてくれた大切な家族だもの。でもお父様に駄目って言われてしまったの。でもその二次会なら!」

「二次会なら!」

「そういう方達を気兼ねなく呼べる! 天才ね! ヒマリ!」

「いえ、私が天才な訳ではないですが……でも、それならご家族のお許しも出るのではないですか? 是非旦那様とご検討ください。そしてもし開催されるのであれば、私も喜んで出席します」


 何よりも侯爵家の食事を食べてみたい。そんな私とは裏腹にマリアンヌは目をキラキラさせて二次会についてあれこれと聞いてきた。


「ありがとうヒマリ! 絶対に開催するわ! その時は是非参加してね!」

「ええ、喜んで」

「それじゃあまたね! この計画を忘れない内に帰らなきゃ! お礼は後で届けるわね!」


 そう言ってマリアンヌは来た時よりも軽い足取りで走り去って行った。相変わらず台風のような忙しなさだが、可愛いので良し!


 何だかホクホクした気持ちでその後もウロウロと店を見て回っていると、今度は上の方から声が聞こえてきた。


「あれ? ヒマリさん!?」

「ん? あ! スタンさん!」

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