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「ほんとじゃねぇか! おい、ナユタだったか? なんで知ってんだ? さてはお前、僕たちの命を狙う奴らの回しもんじゃねぇだろうな!?」
「居ないでしょ、そんな人。で、もしかしてトワが言ったのかしら?」
微笑む私を見て悪びれる事もなくナユタが頷く。
「少しね、カマをかけたんだ。彼にこんな物を思いつくはずがないから。そうしたら最近遠い地方からやってきた旅人の話が出てね、ようやく出来上がったから今日はこうやって尋ねて来たんだ」
「そういう事か。あいつ……帰ってきたら覚えてろよ……」
ボソリと低い声で呟いた私を見てクリスがお腹を抱えて笑い、ナユタは困ったように付け加える。
「悪いのは僕で彼ではないよ。だからそんな怒らないでやって」
「もちろんあなたが一番悪いけど、口を滑らせたトワも悪いでしょ。私はこの世界で何にもしない! あれほど毎日口を酸っぱくして言ってるのに!」
「そうだそうだ! ヒマリはこの世界でも社畜人生を頑張るんだもんな?」
「そうよ! 堅実に未来を掴み取るためにね! ん? 待って、私別にここでも社畜するなんて一言も言ってないわよ?」
「そうだっけ? お前の毎日はまるで馬車馬だけど」
「嫌だ、クリスってば! これぐらいで馬車馬だなんて! 真の馬車馬はね、寝ないのよ。食べないのよ。そんな時間すら無いのよ」
そう言って真顔でクリスに詰め寄ると、クリスは途端に青ざめた。
「マジかよ……死んじゃうじゃん」
「そうよ。それが過労死というやつよ。おまけに大抵それは孤独死とセットなんだから。そんな訳だからナユタさん。トワから聞いた話は絶対に他言は無用。約束してちょうだい! 何ならこの瓶詰めはあなたが開発したって事にしておいてちょうだい!」
そのままナユタに詰め寄ると、ナユタは楽しそうに目を細めて頷いた。
「大丈夫。そこだけはトワにもしっかり言われてる。この瓶詰めも圧力鍋もそろばんも、僕が開発したって事にしておくよ」
「ありがとう! 本当に助かるわ! ささ、飲んで食べて!」
私はナユタの前にお茶と瓶詰めを置いた。そんな私の行動にナユタは何の違和感も持たずに瓶を開けて中身をほぐしだす。
「どうかな? 良い感じじゃない?」
ナユタはほぐれた何かを皿の上に出して、それをさらに広げだした。ところどころに混ざるこの小さな骨! これは間違いなく……。
「ど、どうしてウサギ汁を卒業する為に教えた物にウサギを詰めて来られましたの?」
「え? いや、たまたま食材が手元に無かったから、庭に居たのを撃ったんだけど、ウサギは嫌い?」
「嫌いかと言われたら、愛でるのは好き——ん? 撃ったって何? 弓か何か?」
とても弓など扱えなさそうな優男だが、人は見た目によらないな、などと考えていると、ナユタ少しだけ躊躇ったように手袋を取った。
「いや、これだよ」
その下から現れたのは銀色の立派な義手だ。それを見て私は思わず目を輝かせたが、そんな私を見てナユタは驚いたような顔をしている。何故だ。
「すっご! え、ちょっと触ってもいい?」
「ど、どうぞ」
ナユタはそう言って右手の義手をこちらに差し出してきたので、私はその手を取ってしげしげと角度を変えて眺め倒す。
「ちょ、ヒマリ! 僕にも見せろよ!」
「待って。まだ見てるから」
義手の指一つ一つについた関節に興味津々な私を見て、ナユタが小さく咳払いをした。それに気づいて私がパッと手を放すと、ナユタは耳を赤くしてそっぽを向いている。
「あー……これは義手だけど感覚は僕に繋いでるんだよ。だからそんなに触られると流石に緊張するね」
「ごめんなさい。感覚まであるのね、この義手。ねぇねぇ、これでどうやって撃つの? ビームとか?」
思わず尋ねた私にナユタは今度は噴き出した。
「流石にビームは撃てないな。これをこうして、こうするとほら」
ナユタはそう言って義手についていたボタンを押してガチャガチャと義手の形を変えた。するとどうだろう! あっという間に拳銃の形になったではないか!
「え、これヤバくない!?」
思わず私が言うと、隣でクリスも目を輝かせてコクコクと頷いている。
「ヤバい! かっけぇ!」
「他に何か出来ないの!?」
「他? 他にはそうだなぁ。火をつけたりとか、ホース繋いだら水撒きも出来るね」
「ふぁーーー!!! 便利過ぎる!!!」
「いや、興奮しすぎだから。落ち着け、社畜」
「これが落ち着いていられますかっての! 私こう見えてあっちの世界で球体関節人形作りしてた事があるんだけどさ、こんな細部まで稼働するように作るのってすんごい労力なんだからね! しかも形も変わってそれぞれに役割がある訳でしょ!? これって本当に、ほんっとうにえげつないんだからね!」
「分かった! 分かったから落ち着け! ナユタがドン引きしてんぞ!」




