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「うん。見えないけどいるんなら喜ぶかなって思って。実際に減ってたりしたら嬉しいし!」
想像してみてほしい。小さな愛らしい妖精たちが皿に群がってお菓子を頬張っている姿を。何と可愛らしい事か!
手を組んで想像上の妖精について熱く語っていると、そんな私にセターレがポツリと言った。
「小さなお菓子って、もしかしてあの窓辺に置いてあったやつですか?」
「ええ、そうよ」
「それ、姫と高位妖精様が食べてらっしゃいましたが——ああ、これは言ってはいけないやつでしたか。それは失礼しました」
話の途中でセターレはチラリとルチルを見て笑みを浮かべたが、それを聞いて私はもちろん激怒した。
「な、なんですって!?」
冷静に淡々と言うセターレを押しのけてルチルに詰め寄ると、ルチルは既に涙目で首をしきりに振っている。そこへちょうどクリスが身支度を終えて戻ってきた。
「はぁ~さっぱりした! ん? どうしたんだ?」
「あなたと姫の悪行がバラされたんですよ。たっぷり叱られてください」
そう言ってトワはクリスを私の前に差し出してきたのだが、クリスは私の顔を見るなり回れ右をしてその場から逃げ出そうとした。
そんなクリスの襟首とついでにルチルの襟首も掴んで、私は朝食がやってくるまで延々と二人にお説教をしたのだった。
「はぁ~朝ごはんも美味しかったし、豊穣祭も楽しかったわね~。子どもたちも喜んでたみたいだし!」
私達は朝食を食べ終えてからもう一度豊穣祭に参加して、皆へのお土産と自分たちのお土産、そしてあの病院の子どもたちへのお土産を大量に買い付けた。
そして子どもたちにお菓子やおもちゃを渡してこれから帰る所だ。
ホクホクしながら私はビールの瓶が入った木箱を「よいしょ!」と抱え直した。これだけの荷物を抱えていても、今日はトワは手伝ってはくれない。何故ならトワは私の二倍ぐらいの量のビールを既に持っているからである!
「私……こんな重い荷物を運ぶのは生まれて初めてだわ……」
そんな事をボヤきながらルチルは片手で持てそうな量のビールを両手で運んでいる。
「ルチル、お前もヒマリを見習え。見ろよ、あの量」
「……凄いのね、ヒマリ……セターレよりも力持ちなんじゃないの?」
後ろからそんな声が聞こえてくるが、私はそれを全て無視した。この世界に便利なダンボールなんて物はない。そう、古の木箱だ。そこにビールが整然と並べられていて、異様に重い。
「思うんだけどさ、この世界の荷物運搬システムって弱すぎない? これさ、木箱。これが中の商品よりも重いってどういう事よ!?」
「何だよ。お前の世界では木箱じゃなかったのかよ?」
「違うわよ。ダンボールって言って、紙と糊で出来た箱だったのよ。使う時に組み立てて、使い終わったら畳んで捨てる。そしてまたダンボールになる。そういうのがあったの。対してこの木箱! これ後々椅子ぐらいにしかならないじゃない!」
木箱はこの世界では貴重だ。使い終わったら専門の人が回収に来てはくれるが、それまでずっと家に置いておかなければならない。はっきり言って邪魔である。
「それ、とても便利そうね! でも紙で出来ているのなら耐久性は無いんじゃないの?」
「確かに水とかには極端に弱いし重すぎるのも底が抜けるでしょうね。あと、この世界の道路の舗装では割れ物とかは無理だと思う。でもそうじゃなきゃダンボールで十分よ!」
「使い所めっちゃ限られるじゃん」
そんな事を言うクリスの手にもきちんとビールが持たれている。流石のクリスも重いのか、今日はいつもよりも高度はかなり低めだ。
「ヒマリ、大丈夫? もうちょっとだから頑張ってね」
「私は平気。それよりルチルとセターレさんがヤバそう」
さっきから一言も口を利かないセターレを見て私が苦笑いすると、そんな私にセターレは一旦荷物を下ろして言った。
「僕はあくまでも専属占星術師なので、こんな重い物を持つような仕事には向いていないのです」
「それを言ったら私なんて姫なんだけど!?」
「あなたは普段からそこら中で大暴れしているのですから、こんな時ぐらいはその力を発揮してください」
「ひ、酷い」
「お前らはまだいいよ。僕なんて高位妖精だぞ? その僕が! こんな大荷物! 身内に見られたら良い笑いもんだよ」
「笑われるような事なの? これが?」
ただ荷物を運んでいるだけの事なのに何をそんな大袈裟な。そんな事を思いつつクリスを見ると、クリスは羽を震わせて叫んだ。
「あったりまえだろ! 何度も言うけど、高位妖精は貴重なの! 超貴重なの! 本来なら崇め奉られるぐらい凄いの! 庭の草むしりとか買い物とか掃除とかするような存在じゃないの!」
「面倒な価値観ねぇ。郷に入っては郷に従えって言ったでしょ?」




