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ベッドの上で大きく伸びをして手ぐしで髪を整えていると、ようやくトワが洗面台から姿を現した。
「あ、おはよ、トワ。ごめんね、私トワの事抱きまくら扱いしてたみたい」
「う、うん、おはよ。それはいいけど、こっちこそごめん……守るとか言いながら先に寝ちゃって」
俯きながら申し訳なさそうにそんな事を言うトワに思わず私は笑ってしまう。
「そんなの別に良いって! それにあのまま放っておいたらトワ、一晩中本でも読んで起きてるつもりだったでしょ?」
「! どうして分かったの?」
「分かるよ! あなた騎士団団長なだけあって責任感の塊みたいな人じゃん! だからさっさと寝かしつけようと思ったのよ」
「……寝かしつけるって……いや、まぁその作戦は大成功だったんだけど。それに今回ばっかりは責任感だけじゃないっていうか……」
俯いたまま何かゴニョゴニョ言うトワの声は小さすぎて聞き取れない。
「え?」
「いや、何でもないです! そろそろ朝ごはん食べに行く?」
「そうだね。すぐ支度するから、悪いんだけどそこらへんの物、私のリュックに詰めといてくれない?」
そう言ってサイドテーブルを指差すと、トワは戸惑ったように頷く。
「分かった。いや! じゃなくて、俺がリュック開けていいの?」
「別にいいわよ。見られちゃ困るような物何も入ってないし。それじゃよろしくね!」
「……はい」
私の返答にトワは何とも言えない顔をしていそいそとスキンケア道具を私のリュックに仕舞っていく。
それから私達は帰る準備を万端にして部屋を出ると、そのまま螺旋階段を上りルチル達の部屋に向かった。
ルチル達の部屋に行くとノックをする前に扉が開き、中から面倒そうな顔をしたセターレが姿を現した。
「あれ? セターレさんじゃん。おはよ」
「ああ、ちょうど良い所に。今あなた達を呼びに行こうと思っていたのですよ」
「私達を? 朝ごはんに遅れちゃった?」
「いえ、遅れそうなのは高位妖精様です。我々の呼びかけではあの方は起きてくれないのです」
困り果てたようにセターレがそんな事を言うので、私は頷いて部屋に入った。
「ヒマリ! 待ってたわ!」
クリスの部屋の前で悲壮な顔をしてそんな事を言うルチルの頭を撫でた私は、何の遠慮もなくクリスの部屋のドアを開けた。そんな私の行動にギョッとしているのはルチルとセターレだけだ。トワはもうこんな光景を毎朝見ていてすっかり慣れてしまっている。
「クリス! いい加減に起きなさい! 朝よ!」
大声で怒鳴りながらクリスのベッドに近づいた私は、まだスヤスヤと気持ちよさそうに眠るクリスの布団を引っ剥がした。
「ほら! もう朝ごはん来るわよ!」
「んー……あと五分……」
「あと五分じゃないの! さっさと起きて顔洗って! 髪はやったげるから準備しなさい!」
「んー……?」
私はそれでも起きないクリスの羽根をおもむろに掴んだ。その瞬間、ドアの外からルチルの小さな悲鳴とセターレの息を呑む音が聞こえてくる。
「今すぐ起きないとこの羽根で鶴折るわよ!?」
「ひっ!? ……なんだ、ヒマリか……もう朝ー?」
「ええ、朝よ。もうじき朝ごはんだからさっさと準備して。それともその恰好で食卓につくの?」
目を擦りながらノロノロと起き上がったクリスに私が言うと、途端にクリスは顔を輝かせてベッドから飛び起きた。
「朝食なに?」
「分かんない。楽しみよね。このホテル結構良いとこみたいだし」
「マジか! 顔洗ってくる!」
「うん。洗面所べちょべちょにしないようにね」
「おう!」
そう言って嬉々として部屋から出て行ったクリスを見て私はいそいそと剥がした布団を綺麗にベッドに戻して部屋を出ると、ルチルとセターレが何とも言えない顔をしてこちらを見ている。
「どしたの? 二人とも」
「い、いえ……何でも」
「あなたの世界にはもしや妖精は居なかったのでしょうか?」
まるで恐ろしい物でも見るかのようなセターレに私は間髪入れずに頷いた。
「居たのかもしれないけど、クリスみたいに見えたりはしなかったもの。それはここの世界もでしょ?」
「それはそうね。小さな妖精たちは私の目には見えないわ。でも、そこに居るの」
「うん。だから私の世界でもそんな感じだったんじゃないかなって最近ようやく思えるようになったよ」
クリスを相棒にしてから見えない小さな妖精たちにかなり手助けしてもらっている私だ。むしろうちの商品はほぼ彼らの働きだと言っても良い。
「ヒマリは誰よりも妖精たちのお世話になってますもんね」
「そうなの。うちの商品のほとんどはあの子達のおかげよ。凄く感謝してる」
「ああ、だから最近よく寝る前にミルク入れたコップ置いたり小さなお菓子焼いてたの?」




