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ご近所付き合いはとっても大事である。これが出来るか出来ないかでそのコミュニティに入れるかどうかが決まるのだ。
「そういう意味ではヒマリはそういうの上手いね。俺がこんなにも何の気を使うことなく話せる女性は初めてだから」
「僕は元々そういうのあんま考えない方だけど、確かにこいつは異様にそういうの上手いよな。やっぱ歯に衣着せないからかな」
「それは褒めてないのよ。せめて人懐っこいって言ってよね」
フンと胸を張って言うと、途端にトワとクリスは首を傾げる。
「そんな可愛い感じでは……ないような?」
「それはお前、もっと可愛らしい態度のやつに言うやつなんじゃ?」
二人の意見に何故かルチルとセターレまでもが神妙な顔をして頷くが、今はそんな話をしている場合ではない。
「まぁここで話し込んでも分からないもんは分からないし、私達は今まで通り過ごすしかないわよね」
「それはそうだな。な~んかお前の場合やること成すこと良い方に向かうみたいだし、フレッドから書類も貰ったし、明日帰るだろ?」
「そうね。明日手分けして地ビール買い漁って、日持ちしそうな物とかも見て帰りましょ」
「……買い漁るという単語が不穏ですね……一応言っとくけどヒマリ、いくら騎士団の馬でもそこまで重いものは無理だからね?」
「分かってるってば! 流石の私もそこまで常識外れな買い方しないわよ!」
この棚の物全部ちょうだい、とか一度でいいからやってみたいが、それを馬まで運ぶのは私達である。絶対に嫌だ。
「ではそろそろ休みましょうか。それから思ったのですが、僕達はもっと聖女周りの情報を集めた方がいいかもしれませんね」
セターレの言葉に立ち上がろうとした私とトワはもう一度腰を下ろした。
「どういう意味?」
「そのまんまです。今回のフレッドのように聖女に予言をされている人が他にも居るかもしれませんし、姫のように自分の周りから排除しようとした人も居れば、逆にそうでない人も居るかもしれないでしょう?」
「確かに! その眼鏡は伊達じゃなかったんだね!」
「……どういう意味です?」
「いや、なんか眼鏡の人って賢そうに見えない?」
私の言葉に全員が黙り込んでしまうが、仕方がない。何となく私の中ではそういう先入観があるのだ。
「えっと……それも社畜のルールか何かか?」
「ううん。ただの私の先入観。試しにあんた、セターレさんの眼鏡借りてかけてみなさいよ」
「そんなもんか? セターレちょっと眼鏡貸してくれよ」
「はあ」
面倒そうに眼鏡を外してクリスに渡したセターレは、胸ポケットから予備と思われる眼鏡を取り出した。
「どうだ? 賢そうに見えるか?」
セターレから借りた眼鏡をかけた得意げなクリスを見て皆が何とも言えない微妙な顔をする。もちろん、私もだ。
何か言わなければと思ったのか、一番に口を開いたのはルチルだった。
「え、えっと……に、似合ってはいます! とても」
「普段のクリスを知ってるので、俺は特に何も思いませんね」
「おかしいわね。ありがとクリス。あんたのおかげで眼鏡は賢いって方程式が無くなったわ」
「おい!」
私達の言葉を聞いてクリスは羽根を揺らしながら眼鏡を取ると、それをセターレに押し付ける。
「ったく! 気づいたらもうこんな時間じゃねぇか! そろそろ寝るぞ」
「そうですね。あ、二人とも、明日の朝食はこの部屋に運んでくれるらしいから起きたらここへ来てね」
「ありがと。何が出るか楽しみね! それじゃあ皆おやすみ~。行くわよ、トワ」
「は、はい。あのヒマリ、本当に俺と同じ部屋でいいの?」
「仕方ないでしょ。それしか無いんだから。何よ、あんたイビキ凄いとか寝相悪いとか?」
「いや、それは多分大丈夫だけど、最悪俺はこの部屋のソファとかでも……」
一応ルチルの護衛のトワだ。本来ならそうすべきなのだろうが、そんなトワの台詞をクリスとセターレが遮った。
「いけません、トワ。ヒマリさんは高位妖精様の名付け役です。その事を一部の人しか知らないとは言え、一人部屋に一晩放置するのはあまりにも無防備です。隣室とかならまだしも、あまりにも2つの部屋は離れすぎていますし」
「そうだぞ! ヒマリに何かあったらどうすんだ!」
「そうよ、トワ。私の事はいいからあなたはヒマリを守ってちょうだい」
殊勝な態度でそんな事を言ったルチルにトワは諦めたようにため息をつく。
「いえ、問題はそこではないんですよ……はぁ……徹夜か……」
「ははは! ざまぁ!」
ガックリと肩を落としたトワに何故かクリスが嬉しそうに言う。そんな態度が気に入らないのか、トワは思い切りクリスを睨みつけて私の手を取った。
「覚悟は決めました。行きましょう、ヒマリ」
「覚悟って何よ。私だってイビキとかかかないわよ、多分。それじゃ皆、おやすみ~」




