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第97話「確認しすぎです」


昼前。


好代は、注文票を三度見た。


八番。

黄色いソース。

ピクルス抜き。

ポテトは小。


番号札を見る。

八番。


商品を見る。

ピクルスは入っていない。


もう一度、注文票を見る。


「……大丈夫です」


後ろから声がした。


「好代ちゃん、さっきから三回見てる」


渾沌だった。


「はい」


「一回でいいんじゃない?」


好代は注文票を置いた。


「昨日、間違えたので」


「昨日は一回間違えた」


「はい」


「今日は三回確認してる」


「はい」


渾沌が時計を見る。


「お客さん、増えてるよ」


好代は客席を見る。


入口の外まで列が伸びていた。



十二時。


注文が重なった。


十一番。

十二番。

十三番。

十四番。


好代は一つずつ確認した。


番号。

商品。

付け合わせ。


十一番。

確認。


十二番。

確認。


十三番。

確認。


「好代ちゃん」


渾沌が呼ぶ。


「はい」


「十四番、待ってる」


「今、確認します」


「それ、もう見たよ」


好代は手を止めた。


十四番。

黄色いソース。

チーズ追加。


確かに合っている。


「……そうですね」


渡す。


客は受け取った。


「ありがとう」


そのまま席へ行った。


次の注文。


好代はまた三回見た。


列が一人増えた。



十二時四十分。


客席から声がした。


「すみません」


好代が振り返る。


朝の客だった。


「はい」


「さっきの、注文通りだった?」


「はい」


「ならいいんだけど」


客は少し笑った。


「店員さん、すごく確認してたから」


好代は答えに困った。


「間違えないようにしています」


「うん。それは分かる」


客はトレーを持ち上げた。


「でも、こっちも急いでる時あるから」


帰っていく。


好代はその背中を見た。


厨房では、次の注文が鳴った。



午後二時。


好代は休憩室で、自分の注文票を一枚だけ机へ置いた。


昨日の間違い。


今日の確認。


どちらも自分がしたことだった。


間違えたから、確認する。


確認するから、遅くなる。


遅くなった分だけ、別の客を待たせる。


好代はペンを持った。


注文票の端へ小さく書く。


《番号を貼る前に一回》


その下。


《渡す前に一回》


それ以上は書かなかった。



午後三時。


同じ注文が二つ続いた。


三十一番。

三十二番。


好代は番号札を先に二枚並べた。


三十一。

三十二。


作る。


貼る。


渡す前に見る。


一回。


「三十一番のお客様」


「はい」


「三十二番のお客様」


「はい」


二人とも受け取った。


誰も待たなかった。


渾沌が横から覗く。


「減ったね」


「はい」


「何が?」


「確認です」


「いいじゃん」


好代は注文票を片づけた。



閉店後。


今日の廃棄数はゼロだった。


昨日は一つ。


好代は数字を見た。


ゼロだから正しかった、とは思わない。


昨日の一つも。


今日のゼロも。


どちらも結果だった。


その間に、自分がいる。


好代は業務メモを開いた。


《明日も二回確認する》


入力して。


少し考える。


《明日も必要なら二回確認する》


書き直した。


保存する。


端末を閉じる。


明日のことは、まだ分からない。


でも。


今日より少しだけ、待たせない方法は分かった。

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