第九十四話 謎
「.....は?殺すって何がだ」
「そのままの意味だ。お前なら確実にできるだろ」
「そういうこと言ってるんじゃねェ.....。
テメェ冗談のつもりか!?」
トワの胸倉を掴む。
そりゃ初対面の少女を殺害しろなど言われれば、
こうなるのは普通だと思いたい。
普通....なんだ。
だが、トワの表情はそれを否定していた。
その顔は、どこか儚く、笑顔ともとれるし、しかめっ面とも見えるような、
奇妙な表情だった。
気付けばトワが、俺の腕を掴んで自身の胸倉から外していた。
少しの殺気も感じなかった。
「何なんだよ....話が一向に見えてこねえ。
何が言いてェんだ.....。なんで殺す必要があンだ!?」
「......信じてもらえるかはわからない。
だが、今から俺が話すことは真実だ。
それを信じ、あの子を殺すかはお前が決めてくれ。」
「........は...?」
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「はぁ.....」
組織の本部の廊下を歩いていく。
結局、幽真とはあれから話せていない。
許してもらおうなんて思ってないけど、
話しかけられないよ。
「誰がンなこと信じるかよ!!」
「!?」
廊下際の男子トイレから怒号が聞こえてくる。
男子トイレから、黒いベルトのついた服を着た男性が走って出て行った。
眉間に皺を寄せ、焦ったような表情をしていた。
「.....お兄ちゃん?」
それは、私の実の兄だった。
兄はそのまま、廊下の奥の会議室に走りこんでしまった。
「.....ああ、ノアちゃんか。」
続いて、白髪の混じった黒髪の男性が男子トイレから出てきた。
何回かあったことがある。時間を操る異能の.....
「.....トワさん?」
「悪いな。ちょっとお兄さんと密談してたんだ。」
「....そうですか」
なぜかお兄ちゃんは怒っている様子だったが....。
「ごめん、俺ももう会議室に戻らないといけないんだ。じゃあな。」
「はい、さようなら」
トワさんはお兄ちゃんの走っていった、会議室の方向へと歩き出した。
にしても、密談とは何を話していたのだろう?
「.....まあいいか。」
私は今、組織のお偉いさんに呼ばれている。
なんでも、兄について聞きたいらしい。
私もお兄ちゃんの役に立ちたいため、
組織の仕事は一生懸命にこなしている。
お偉いさんの名前なんだっけ.....。
ああ、そうだ。平さんだっけ。
その息子さんである、緑空さんは、
組織の成績がお兄ちゃんの一つ下に並ぶすごい実力者だ。
きっと良い人なんだろうな。
期待を胸に、私は最上階へと向かった。
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「そんなわけがないだろ.....
そんなわけが.....」
俺は会議室の扉を開けた。
「あ、帰ってきた。連れション?サボり?」
「....ああ」
「あれ?キレない。」
ルナが俺の顔を覗き込む。
不思議そうに俺の目を見つめた。
俺のことを何だと思っているんだ。
「お帰り玲君。何を話していたんだい?」
「いや何も.....」
「.......大丈夫?玲。」
「あ"?」
なぜか、俺の頬を謎のぬるい液体が伝った。
「なんで....」
自分の脳味噌から、何かが抜け落ちたような感覚がした。
何か忘れてはいけないものを忘れたような気がする。
「泣いてるの?」
「....え?」
背後で、扉が開かれる音がした。
先程のトワの言葉が脳裏に焼き付いていた。
________「今回は地獄だぞ」
つづく




