第九十三話 ある少女
「この遺物は.....この世界の森羅万象を否定する。」
神崎がそう言い放つ。
だが.......
「言うほど強力でもなくねェスか?」
実際、この遺物はサイズも小さく、
付属されているはずの異能の起動条件もわからない。
「ある一定の条件を満たせばこの遺物は起動するんだよ。
その起動した後が厄介でね。持ち主の思うがままに変形させることができるようになるらしい。」
「へーそれは....」
「敵に奪われて玲がボコボコにされる未来しか見えなくない?」
「あ"!?」
「.....実際、玲君は実体のある現象を現実世界に引っ張り出すだけだからね。
この遺物が敵の手によって起動されれば、まず何もできなくなるのは玲君だ。」
「.......」
そりゃあ非常にまずい。
まあ敵が起動させる前に最短で殺す。
「そして.....発動条件は既にわかっている。」
「「「!!!」」」
「....入ってきてくれ。」
神崎さんが自身の後ろを指差す。
白い壁をなぞるように覗くと、鉄の縁のついた扉があった。
扉が音を立てて開けられる。
すると、そこには......。
......黒い髪のショートヘアをした、俺達と同世代に見える少女が立っていた。
「......セツナ?」
「あ”?」
トワが何か小さく呟く。
上手く聞き取れなかった。だが、トワの目は大きく開かれていた。
クマが目立つ瞼だ。
「.......こんにちは。」
少女は小さくお辞儀をした。
「紹介させてもらう。彼女の名前は....」
「千歳雪奈です。よろしくお願いします。」
「......ん?」
「あ?何よ玲?」
ルナが俺の顔を覗き込む。
......いつか聞いたような名前だ。
さっきだったような気もするし、何十年も前だったような気もする。
「なんでもねえ。こっち見んなクソが」
「口悪ッ。セツナちゃん怖がっちゃうよ?」
「大丈夫です。あの....影がどうとかはよくわからないんですが、
お役に立てるよう頑張ります!」
「この遺物の起動条件だが.....彼女が必要となる。
彼女は特殊な体でね。ほぼ全ての遺物を解放することができるんだ。」
「.....ちょっといいですか。お腹痛くなってきて...」
「ん?ああいいよトイレ行ってきて...」
トワが突然腹痛を訴え、俺の横を通り過ぎようとする。
だが、突然トワに背中の服の裾を引っ張られる。
次のの瞬間、俺はトイレに立っていた。
「.....あ?」
「悪いな玲。話があるんだ。」
「待てやクソ襟足...。勝手に連れションさせてんじゃねェ」
「.......ああ。」
珍しく、トワが暗い顔をしている。
普段は能天気であり、笑っているというのに。
先程からコイツに違和感は感じていた。
だが、異能を使ってまで俺と話したい理由は何だ?
「......チッ、何の話だよォ」
「....急で悪いが....」
トワが俺へ一歩近づく。
その目は光などなかった。
「あの女の子を、殺してくれ。」
「......は?」
つづく




