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影葬の剣  作者: いうな
過去編
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94/97

第九十話 少年達

電子機器の音が飛び交う。

大きく設置されたモニターには世界地図を拡大したものに、

赤いポインターのようなものが付けられている。


「東百塩市南で遺物盗難事件発生!

 犯人は一般道路を乱走行している模様!」


「二次被害も考えた方が良いですね、これは.....」


”組織”が対応する事案の9割は現実世界.....一般市民の目に付く場所で起こる。

悪事を働くような輩はそもそも周りの目など気にしていないのだ。

状況を考え、マップのポインターに注目する。


「東地区、専門学生を三人向かわせる。

 それで恐らく十分だろう。」


「!?正気ですか?周りの人間と町の被害を考えるならば少なくとも1級を向かわせた方が...」


「なら尚更大丈夫だ。」


俺は目の前に置いてある、組織用の無線を手に取った。


「専門学生の内、東地区に近い所にいる者は今すぐ向かってくれ。

 位置を見た所.....南地区に滞在している者達が適任だ。アイツらに連絡をとってくれ。アイツらは専用無線の電源切ってやがるからな」


--------------------------------------


「え?何?東の方で遺物の盗難?」


白髪....とは言えない、グレーがかった髪色の少女が電話に応答する。


「おけおけー、じゃちゃちゃっとやりますよ」


電話を切る。カフェのテラス席に座っていた少女達は、荷物をまとめはじめ____なかった。

代わりに、少女達三人が出したのは握った拳であった。


「「「ジャンケンポン!!!」」」


少女は握った拳をそのままにし、白髪の混じった黒髪の少年も握り拳を出していた。

もう一人の少年は、人差し指と中指を立てていた。


「じゃあ玲、後はよろしくー。」


「....あ?おい待てや..」


次の瞬間、チョキを出した少年の足元がガラスのように割れた。

黒い穴が出現し、少年はそのまま落下していった。


「玲に敵は任せるとして....トワはどうするわけ?」


白髪の混じった少年____トワは、椅子に立てかけていた、鞘に納まった刀を手に取った。


「先に結界だろ。俺は周りの人達をどうにかするから、それは任せた、ルナ。」


「もう張ってあるよ。」


灰色の髪の少女、ルナはそう言って、指を弾いて、ウインクをする。


「便利だな、お前の”箱”は」


「それほどでも?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッハー!もっと飛ばせ!」


「現世にこんな遺物があるとはよ!!」


男三人衆は、武装したトラックを乗り回していた。

走行している道路はもちろん現世の国道であり、周りの人間の目など気にしていなかった。


「もっと早く走れや!」


「わかっとるわ!」


「....にしても...なんなんだろうなこの遺物は....」


一人の男が、多種多様な遺物が入った箱から取り出したのは、

十字架のような、手のひらサイズの遺物であった。


「どれも一緒さ、高く売れりゃ何だっていいぜ!」


「いや、なんか溢れ出る影力が違うというか」


「ごちゃごちゃうるせ....あ?」


運転席の男の目には信じられないものがあった。

目の前に青空が広がっていたのだ。

サイドミラーには地面が映っている。


「うお.....」


トラックが傾いているのか、荷台に遺物が落ちていく。

それに続き、男二人も荷台へ滑り落ちていった。


「何が起きてやがんだ....。.....!?」


運転座席の男が見たのは、太陽の前に浮かぶ人影だった。

人影__もとい少年__さらにもとい、玲は二本指をトラックに構えていた。


「【磁】.....」


自身の真下まで浮いてきたトラックに一発、蹴りを入れる。

トラックは横転し、倒れて道路に転がった。


玲も地面へ着地し、トラックを追う。


「後ろがガラ空きだぜクソガキ!!」


トラックの中にいた男が、ナイフを持って玲の後ろに回り込んでいた。


「死ねええええ!!...え?」


男がナイフを振り下ろす。

だが、ナイフは玲に届く前に止まり、代わりに男の体が玲を頭上を超え、

トラックへ吹っ飛ばされた。男がトラックに追突し、荷台に大きな窪みができた。


「ぐあっ.....」


「チッ。こんだけか......」



「く...クソ....」


トラックの運転手が四つん這いになりながら降りてくる。

その手には、十字架の遺物が握られていた。


玲にバレないよう立ち上がり、ダッシュでトラックのある場所から逃げていく。

だが....。


「どこ行くのかな?」


「ひいっ!」


男の後ろには、佩刀を男の首に当て抑えている少年...トワが立っていた。

トワは男を縄で縛り、地面に転がらせた。


「いやー、にしても玲、立派だったよー。」


トワは玲へ歩み寄っていく。


「ざけんな!!」


「わ」


玲は大声で怒鳴りつける。


「まず勝手に落としてンじゃねえよ.....殺すぞ.....!!」


「口悪いのは相変わらずだねえ.....」


「死ね!!てか殺す!!」


「暴言ばっか使ってるとモテないよー」


「「!!」」


二人の間に割って入ったのは灰色の少女、ルナであった。


「さっさとコイツら組織に渡そう。ほら、行くよ。

 .....にしてもすごいねー玲くんの【万象】は。」


「バカにしてンのか!?」


玲の”箱”_____【万象】は本質は神をも超える、この世の理を操る能力であった。

だが、玲はその二割程度の出力しか出せておらず、成長するにつれて発現する異能も、

現時点では【電気】【磁力】しか解放できていない。


「どういう経緯でその箱を取り込めたかは知らないけど、

 もうちょっと頑張りなよ?ノアちゃんのためにもさ。」


「わかってるわクソアマ......!!」


こうして、事件を解決した少年達は本部へと戻っていくのであった。

だが、この事件がこれからの世界を変化させるとは、誰も思わなかっただろう。

()の物語は、誰にも予測できないのだから。


つづく

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