第九十話 少年達
電子機器の音が飛び交う。
大きく設置されたモニターには世界地図を拡大したものに、
赤いポインターのようなものが付けられている。
「東百塩市南で遺物盗難事件発生!
犯人は一般道路を乱走行している模様!」
「二次被害も考えた方が良いですね、これは.....」
”組織”が対応する事案の9割は現実世界.....一般市民の目に付く場所で起こる。
悪事を働くような輩はそもそも周りの目など気にしていないのだ。
状況を考え、マップのポインターに注目する。
「東地区、専門学生を三人向かわせる。
それで恐らく十分だろう。」
「!?正気ですか?周りの人間と町の被害を考えるならば少なくとも1級を向かわせた方が...」
「なら尚更大丈夫だ。」
俺は目の前に置いてある、組織用の無線を手に取った。
「専門学生の内、東地区に近い所にいる者は今すぐ向かってくれ。
位置を見た所.....南地区に滞在している者達が適任だ。アイツらに連絡をとってくれ。アイツらは専用無線の電源切ってやがるからな」
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「え?何?東の方で遺物の盗難?」
白髪....とは言えない、グレーがかった髪色の少女が電話に応答する。
「おけおけー、じゃちゃちゃっとやりますよ」
電話を切る。カフェのテラス席に座っていた少女達は、荷物をまとめはじめ____なかった。
代わりに、少女達三人が出したのは握った拳であった。
「「「ジャンケンポン!!!」」」
少女は握った拳をそのままにし、白髪の混じった黒髪の少年も握り拳を出していた。
もう一人の少年は、人差し指と中指を立てていた。
「じゃあ玲、後はよろしくー。」
「....あ?おい待てや..」
次の瞬間、チョキを出した少年の足元がガラスのように割れた。
黒い穴が出現し、少年はそのまま落下していった。
「玲に敵は任せるとして....トワはどうするわけ?」
白髪の混じった少年____トワは、椅子に立てかけていた、鞘に納まった刀を手に取った。
「先に結界だろ。俺は周りの人達をどうにかするから、それは任せた、ルナ。」
「もう張ってあるよ。」
灰色の髪の少女、ルナはそう言って、指を弾いて、ウインクをする。
「便利だな、お前の”箱”は」
「それほどでも?」
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「ハッハー!もっと飛ばせ!」
「現世にこんな遺物があるとはよ!!」
男三人衆は、武装したトラックを乗り回していた。
走行している道路はもちろん現世の国道であり、周りの人間の目など気にしていなかった。
「もっと早く走れや!」
「わかっとるわ!」
「....にしても...なんなんだろうなこの遺物は....」
一人の男が、多種多様な遺物が入った箱から取り出したのは、
十字架のような、手のひらサイズの遺物であった。
「どれも一緒さ、高く売れりゃ何だっていいぜ!」
「いや、なんか溢れ出る影力が違うというか」
「ごちゃごちゃうるせ....あ?」
運転席の男の目には信じられないものがあった。
目の前に青空が広がっていたのだ。
サイドミラーには地面が映っている。
「うお.....」
トラックが傾いているのか、荷台に遺物が落ちていく。
それに続き、男二人も荷台へ滑り落ちていった。
「何が起きてやがんだ....。.....!?」
運転座席の男が見たのは、太陽の前に浮かぶ人影だった。
人影__もとい少年__さらにもとい、玲は二本指をトラックに構えていた。
「【磁】.....」
自身の真下まで浮いてきたトラックに一発、蹴りを入れる。
トラックは横転し、倒れて道路に転がった。
玲も地面へ着地し、トラックを追う。
「後ろがガラ空きだぜクソガキ!!」
トラックの中にいた男が、ナイフを持って玲の後ろに回り込んでいた。
「死ねええええ!!...え?」
男がナイフを振り下ろす。
だが、ナイフは玲に届く前に止まり、代わりに男の体が玲を頭上を超え、
トラックへ吹っ飛ばされた。男がトラックに追突し、荷台に大きな窪みができた。
「ぐあっ.....」
「チッ。こんだけか......」
「く...クソ....」
トラックの運転手が四つん這いになりながら降りてくる。
その手には、十字架の遺物が握られていた。
玲にバレないよう立ち上がり、ダッシュでトラックのある場所から逃げていく。
だが....。
「どこ行くのかな?」
「ひいっ!」
男の後ろには、佩刀を男の首に当て抑えている少年...トワが立っていた。
トワは男を縄で縛り、地面に転がらせた。
「いやー、にしても玲、立派だったよー。」
トワは玲へ歩み寄っていく。
「ざけんな!!」
「わ」
玲は大声で怒鳴りつける。
「まず勝手に落としてンじゃねえよ.....殺すぞ.....!!」
「口悪いのは相変わらずだねえ.....」
「死ね!!てか殺す!!」
「暴言ばっか使ってるとモテないよー」
「「!!」」
二人の間に割って入ったのは灰色の少女、ルナであった。
「さっさとコイツら組織に渡そう。ほら、行くよ。
.....にしてもすごいねー玲くんの【万象】は。」
「バカにしてンのか!?」
玲の”箱”_____【万象】は本質は神をも超える、この世の理を操る能力であった。
だが、玲はその二割程度の出力しか出せておらず、成長するにつれて発現する異能も、
現時点では【電気】【磁力】しか解放できていない。
「どういう経緯でその箱を取り込めたかは知らないけど、
もうちょっと頑張りなよ?ノアちゃんのためにもさ。」
「わかってるわクソアマ......!!」
こうして、事件を解決した少年達は本部へと戻っていくのであった。
だが、この事件がこれからの世界を変化させるとは、誰も思わなかっただろう。
私の物語は、誰にも予測できないのだから。
つづく




