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影葬の剣  作者: いうな
第五章 一級試験編
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第八十五・一話 違和感

「.....いつ見てもデケェな....」


ノアの家の前に着いた。

都内に建てられたとは思えないほどの豪邸である。


「静かにね。みんなもう寝てるから」


「ああ....」


ノアが鉄の門を開けて、中に入る。

俺も追って敷地を跨ごうとすると、


「痛ッッッッッッ」


謎の透明な壁に弾かれた。

そうだった。なんか俺だけ上手く入れないんだった。


「ああ、ごめんね。」


尻餅をついて倒れた俺にノアが手を差し伸べる。

立ち上がらせてもらい、手を繋いだまま門をくぐる。


.....何ともなく、敷地に入れた。


「私と接続されているものは自由に通れるからね。

 後は、顔認証に登録されてる人は通れるはずなんだけど.....

登録してなかったっけ。」


「.....記憶にないな....」


広い庭を抜け、大きい玄関に着く。

ノアがゆっくりドアを開けた。


中に入る。


「.....お邪魔しま~す....」


出来る限り静かな声でしゃべるようにする。

全員寝ているというのは本当のようで、

物音ひとつ聞こえてこない。


靴を脱ぎ、ノアが棚から取ってきたスリッパを履いて、

階段を上っていく。


以前に一度来たことがあったため、

部屋の場所は覚えていた。


「どうぞ」


「......ありがとう」


角の部屋の扉をノアが開け、中に入っていく。


一度見たことはあるが、まあ何というか、

いかにも女子といった部屋だ。


部屋の端にはコスメがたくさん置いてある机があったり、

ベッドの近くにはウサギやクマの人形が置いてあったりした。


「そこ座って。」


「.........。」


ノアが指を差したのは、床に置いてある小さいテーブルの

横のクッションだった。


クッションの上に腰を下ろす。


「.....で......話してくれるか?」


「.......うん。」


ノアは小さく頷き、ベッドに腰を下ろした。


「……話す前に」


ノアが口を開く。


「.......”言えない”ことの方が多いの。」


「......ああ」


何らかの強制的な”契り”か.....?


......誰が?


「……でも」


ノアが少しだけ視線を逸らす。


「私、ちょっと……怖くて」


「……」


小さな違和感が胸に引っかかる。


「……何があったかは、言えない」


「ああ」


「でも……これから近くで守ってほしいんだ」


「......ああ。」


そこで、視線が合った。


「……まあ言えることだけ言ってくれないか?」


「うん......実は....組織の人に色々されちゃっててさ...」

……すごく怖かったんだよ。」


そう言って、少しだけ俯く。


震える肩。


「……それで、外に出てたのか」


「……うん」




「……悠真に、会いたくて」


「……」


そこで初めて、心臓がわずかに強く打った。


「……そうか」


「だから会えてよかった」


ノアは顔を上げて、少しだけ微笑んだ。


「……なあ」


「なに?」


ノアが首を傾げる。


「さっきの話、続きいいか」


「……うん」


「“怖い”って言ったよな」


「……うん」


「何が一番怖かった?」


ほんの少し、踏み込む。


ノアは一瞬だけ、言葉に詰まった。


ほんの一瞬。


「……全部」


「……全部?」


「うん……全部、怖いの」


「……そうか」


短く返す。

沈黙が部屋の中に落ちる。


時計の音だけが響く。


「……悠真は」


ノアが口を開いた。


「私を守ってくれるの?」


「……ああ」


少しだけ間を置く。


「……ノア()()


そう答えながら、視線をノアから外す。


「……そっか」


ノアは小さく頷いた。


「……」


「……なあ、ノア」


「なに?」


頭が死ぬほど痛かったが、顔を上げる。

.....もういい。


「幾つか質問いいか?」


「……え?」


「いいから」


一瞬だけ、間。

それから、ノアが体を前に乗り出した。


「俺があげたネックレスはどうした?」


「…....ああ、アレね。

 カバンの中にしまいっぱなしなんだ。

 取り出して付けるのもったいなくなっちゃってさ。」

 

 ……どうしたの?」


「……いや」



「ちょっとな」


目を細める。

......頭がガンガンしてきた。


俺は背中に手を回した。


「……悠真?」




「.......もういい。」


一瞬、部屋の空気が止まった。


「.....誰だ、お前.....!!!!」


ノアの表情が、ぴたりと固まる。

ほんのコンマ数秒。

すぐに、いつもの表情に戻る。


「……何言ってるの?」


完璧な、ノアの顔で笑っている。


「……ノアはな」


ゆっくりと言う。


「不器用な所が一生直らねえんだよ。

 “俺に会いたかった”なんて、んなこと言わねえ。」


部屋に冷たい空気が流れる。

俺の背中に這っている汗のせいだろう。


「……」


ノアは何も言わない。

ただ、じっとこちらを見ている。

その瞳の奥に___いつもなら輝いているはずの光が消えていた。


....なんで初手で気付かなかった....!!

なんで俺はここまで騙されてたんだ..!!


他の部屋に孤児たちがまだ居た場合....

そいつらも守りながら戦う必要がある。

そもそもコイツはなんなんだ....?


「....すごいね、君。どこで気づいたの?」


「....一番最初に違和感を感じたのは、

 お前が”怖い”と言ったところだ。

 ノアは”怖い”なんて俺に口にしたことは無い。 

 そもそも相談とかしてくれないタイプだしな........!」


「あっそう.......。

 めんどくさいね、君。」


そう言うと、ノア(?)は足を組み、ベッドに倒れた。


「あーあー、面倒くさい、面倒くさい。

 アイツのこと後で殴っとこう.....。

 こんな奴を好きになって助けを求めてた()()()の私もムカつくな。しっかり色々教えてあげないと....」


そう言い、ノア(?)が勢いよく飛び上がり、顔を抑えて

立ち上がった。


「【壊・廻】」


「....!!」


ノア(?)が謎の詠唱をすると、周りに影の玉が次々と現れた。

影の玉は形を変え、鋭利な槍となり、俺へと飛んできた。


「チッ...!!」


咄嗟に走って避ける。

影の槍がノアの部屋の白い壁に突き刺さっていく。


全身に影力を纏うまでの数秒だった。


偏差撃ちで俺の前へと槍が飛んでくる。

目に影を纏って動体視力を上げ、何とか避ける。

その時だった。


「.......あ”?」


「はい、終わり」


影の槍を10本ほど同時に体に撃ち込まれた。

当然、影力はまだ纏えてはいなかった。


体の中に複雑に槍が刺さっていく。


影力を纏おうとしたが、上手く力が練れない。

槍に影が吸収されてる....!?


「.....はぁ、じゃあもう私の仕事は終わり。

 じゃあね、ウジ虫くん。()()()()私と違って、    

 君に興味ないから。」


「待.....てよ.....!!テメェは....結局何なんだ....!?」


「はぁ~......?分かってるでしょ?」


ノア(?)がポケットから謎の白い仮面を取り出し、

顔に装着する。


そして、部屋の窓を開け、縁に飛び乗る。


影人(ドッペルゲンガー)だよ。」


ノア(?)はそう言い残し、暗い夜の闇に飛び降りた。



.......。


影の槍が消えない。生暖かい俺の血が部屋の床に広がっていく。

俺も治癒系の技教えてもらえばよかったな....。


.....死ねない。ノアに危険なことが起きてるのが確定した以上、

無理矢理にでも生き延びねばならない。


__お前もそんな怪物にならないようしっかりこいつの死に際を見せてから殺すからな。恨みや執念、後悔は影力を倍増させてその怪物__「影霊」になる。そうなれば面倒臭いから完全に意思を潰してから殺さないといけない_____________


”影”に関わってから最初に出会った誘拐犯の言葉が脳裏によぎる。

.....俺もなるのか?影霊に....。


腕を動かして少しでも何かしようとしたが、

床ごと槍が俺の四肢を貫いているため、何も出来ない。


....意識が朦朧としてきた。

仮に俺が影霊になれたとして.....。

俺自体の意思がなくなっているとしたら.....


その時は頼んだぞ、マナ。


そこで俺の意識は途絶えた。


つづく

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