第七十六・二話 穴
暗い森の中を進んでいく。
地面はなぜか泥だらけだ。
雨でも降った後のような......
「......マナさん?」
「.....アリスか?」
木からひょいっとアリスが出てきた。
こんな近くにスポーンするとは....。
「悠真とは会ったか?」
「いえ、マナさんが初めてです。
陣営は確認しましたか?」
「いやまだだ。そっちは?」
「まだです。同時に確認しましょう。」
端末を開く。
そこには、大きく”人間陣営”と書かれていた。
「......人間か。そっちは.....」
アリスの端末の画面を覗く。
.....あー....。
「...."影霊陣営"です。」
なぜかアリスが私に上目遣いをする。
「撃たせてくれません?」
「馬鹿なの?」
「冗談です。まあ、制限時間まで生き残ればいいだけでしょう。」
「.....そうだな。制限時間.....」
アリスとふざけた会話をしていると、
一つ、この試験の大穴を見つけてしまった。
その時、アリスが後ろを見ていることに気付いた。
「マナさん、後ろに”影霊陣営”の人がいます。」
「え?」
後ろから腑抜けた声が聞こえた。
即座に銃を取り出し、
振り向き、相手を捕捉する前に発射した。
見ると、木の後ろに銃を構えようとしていた男が立っていた。
男は胸を抑えている。
「マナさん、ナイスショットです。」
「ふざけるな....」
男が叫び始める。
「なんで言うんだよ!!
今やれそうだっただろ!!!」
「別に、この試験には”協力”なんて求められていませんよ?」
アリスが淡々と言う。
その通り、この試験は
「影霊側は人間側を脱落させることができて、
人間側は影霊側を推理して脱落させることができるだけ」だ。
別に義務でもない。
大切なのは、これを見ている試験官にどれだけ点数を付けてもらえるかだ。
「クソアマッッッ.......!!」
そのまま男は粉となって消えていった。
「______”影霊陣営”が一人、排除されました」
端末から音声が響く。
「これ....」
「使えますね.....」
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「穴だらけじゃねーーーか!!!!」
「そう怒るな玲君」
思わず怒鳴ってしまった。
隣のルナがなだめてくるが、これは致命的すぎる。
普通、こういうタイプの”人狼ゲーム”は、
制限時間内で”人間”が生き残れば人間だけの勝ち、
逆に”人狼”が”人間”を全員殺せば人狼だけの勝ちだ。
だが、この試験には、”勝利”という概念がない。
「.......どうすんのこれ?」
「どうするも何も.....」
顔を手で覆い、椅子にもたれかかる。
「お前等どう責任とるねん?」
「....あ?」
手を下げ、横を見るとハゲでネクタイのついていない
スーツを着た中年男性が立っていた。
「どうやらこの試験を考えたのはそっちの組の幹部らしいな。
どうすんねん?こんな試験にして」
「.....黙ってろよ。お前等はどうせこの後
何も面白味がないと思ってんだろ?
ハッ、そりゃそうだろうな。
自分のグループの試験者がウチの新人に倒されまくってたもんな?」
「.....ぐっ...!!」
「まあ見てろ。面白いのはここからだ。」
モニターへと視線を移す。
残り試験者は、11人。
つづく
意外と終わるの早かったですか?
面白いのはここからですよ。




