第七十六・一話 停止
視界が暗い森の中へと変わる。
「......あ?」
周りを見渡す。
もうさっきまでのダンジョンみたいなところは消えていた。
「二次試験......”人狼”ねえ.....」
別に人狼というわけではないんだろうが、
根本的には同じだ。
ルールを思い返していると、
後ろに気配を感じた。
「振り向くな。振り向いたら撃つぞ。」
背後から男の声が聞こえた。
.....確か影霊陣営は見ただけで相手が仲間かどうかわかるんだっけか?
...いや、コイツが人間陣営の場合でも影霊陣営の場合でも同じことを言うか?
どっちの陣営かっていう確証が欲しい.....
....いや、影霊陣営なら既に発砲していてもおかしくない。
そもそも拳銃の精度と弾数がわからない。
「あー、ちなみにお前はどっち陣営なんだ?」
「人間陣営だ。だがお前が影霊陣営ではないという保証がない。
幾つか質問に答えてもらう。」
少しずつ、聞こえる声の大きさは大きくなっていった。
.....近づいてきてるのか?
足音は聞こえない。だが、草が潰される音は聞こえる。
すり足でバレないようにしてるのか。
距離を測ってるわけね。
最初は遠かったから、確実に当たる位置まで移動してきたわけだ。
「お前は秘技師と影法師どちらだ。」
その声は、もうすぐ背中の近くまで来ていた。
.....まあ賭けだな。
肩を回し、コンパクトに振り向く。
男と目が合った。30代後半らへんだろうか?
「......!!」
男が銃の引き金を引き、銃弾が飛び出す。
銃弾がしっかり飛んだのを確認し、
弾よりも早くしゃがんで回避した後、男の腕を掴んだ。
「【時界凍結】」
「何を.....なっ....体がっ.....!?」
トワからもらった謎の球の力を使った。
正直使いどころに困っていたが、簡易的な拘束としては丁度いいだろう。
効果発動するの30秒だけだけど。
というより、私の右腕はこの試験内でも使えるようだ。
右腕自体が私と同じ扱いになってるのか...?
他の奴らは遺物ごと没収されてるはずだもんな。
男の表情が徐々に焦った顔になり、
汗が吹き出している。
「私からも質問だ。
お前は影霊陣営だな?」
「はっ....!?そんなわけないだろ...!!なんでだ...?」
「ああ、そんなわけないな。」
「は?」
「はぁぁぁ!!!」
腰を思い切り回転させ、脚を回す。
そしてその勢いのまま.......。
「おぶっ!!!」
男の股間に鋭い回し蹴りをクリーンヒットさせた。
30秒。男が膝から崩れ落ち、そのまま股を抑えて倒れた。
なぜあんな謎の質問をしたか不思議か?
本当に人間陣営か確認したかっただけである。
コイツが影霊陣営だった場合、
先程の質問への返答は「証拠はあるのか」か「だったら何だ」に
なっていただろう。だからこそ、既に「私がお前を影霊陣営であることを知っている」ような質問の仕方をしたのだ。
苦しそうにしている男を尻目に、私は森の中を進んでいった。
「かわいそ。」
つづく




