第六十五話 究糾舎
「.....おいなんだあれ?」
「な.....なんか来てないか.....?」
試験が終わるまでコッソリと
過ごしていようとしていた試験者達の方向へ
猛獣のような黒い物体が走ってくる。
「なんじゃありゃ!?
とりあえず逃げるぞ!!」
「....あ....ああ...!!」
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「な...にが.....」
「あー.....ごめん揺れてるよな...」
俺は今黒い物体を操作している。
まあ仕組みから話すと.....。
全方向に影壁を出し、それらを常に新品の状態にする。
そしてそれらを俺の移動に合わせる。
そして俺は足に影を纏って高速で滑走.....。
曇っているため、どこにでも影が出来ているから
できる芸当だ。
それでも結構影力を消耗している。
だが上は壁で塞いでいない。
酸素を補給するためでもあるが、
光線を一点に集中させるためだ。
光線は形状を変えてくる。
多分足元に小さい穴を開けると、
細くなった光線が襲ってくるだろう。
だから上だけ開けておけば、
光線が来る度に一瞬だけ影壁を出せば済む。
これが俺の新技......【究糾舎】。
......そろそろか。
左手から弾性の影を出し、
木に巻き付ける。
影を思いっ切り引っ張り、
反動で上へ飛ぶ。
「着いたぞアリス.....!!」
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「試験番号33番、端末の破壊により脱落。」
.....なんか味気ないな。
というより、なんでこんなに
すぐ脱落するような奴らが多いんだ?
これ一級試験だよな?
まぁ考えられる理由としては.....
調子乗って急に一級にチャレンジした奴、
そもそも端末の破壊が試験の内容として初だったりか?
......いや、端末を破壊するより
直接殺す方が簡単か。
そんなことを考えながら黙々と
光線の絨毯爆撃をしていると、
森林から見覚えのある顔をした男が飛び出してきた。。
「......悠真....」
まあもうちょっと試験者の数を減らしてから
近づくか.......
とか思っていると、悠真が何かを抱えていることに気付く。
.....女の子?
両手を開き、攻撃を中断し、
悠真の場所まで飛んだ。
「悠真.....その子どうした?」
悠真と一緒に森林の中に戻る。
大体5分くらいか?攻撃続けてたの。
「お前の光線をモロに受けたんだ。
治療できるか?」
「.....えっ?」
そんなわけはない。
自分で言うのもなんだが、
自動追尾光線の追尾精度は結構高い。
その証拠に、今まで来た通知の中に、
「絶命による脱落」は存在しなかった。
爆風によって飛んできた枝や石によるものか?
とも思ったが、悠真が光線によるものと明言している。
「......マナ、時間がない。
早く治してあげてくれるか?」
「ああ。」
悠真が少女を地面に寝かせる。
シャツをめくり、傷口を確認する。
「....ひどいな。」
傷口に手を当てる。
「影を使って応急処置をしたのか?」
「ああ....止血のためにな。
消した方がいいか。」
「判断としては間違ってない。
お前の影は特殊だしな。
まあ一旦消してくれ。」
影が消え、腹部から血が流れ出す。
...治癒する能力は私の【魔術】の箱の中に元々搭載されている。
目を瞑り、傷に集中する。
適切な位置に影力を送り込む。
他人の治癒はムズいが、
何とかなってくれ....!!
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「.....神経接合完了だ。」
少女の腹部に、肌色の皮膚が戻っていく。
「....今は意識がないが、
直に戻る。.....ふぅ、何とかなってよかったぜ。」
「すごいな。そんだけ治癒能力が高ければ
その右腕ももう治せるんじゃないか?」
「いや...腕が切断されてから時間が経ってるし
義手にした方がメリットが大きいしな。
......ここまで高度な治癒ができるようになったのも
私が0級の遺物.....【夢を魅せる宝石】を
取り込んだせいだろうな。」
あれから色々な文献を調べた。
だが詳しく書いてあったのは一つの文献のみ。
それ以外の文献には都市伝説のように書かれていた。
なぜ影捌賢者がそんなものを持っていたのかは
上の奴らが調べているらしい。
「まぁ....そんなことより聞きたいことがある。
お前、自動追尾の対象を人間そのものにしてたのか?」
「ああ、私も聞きたかったんだよそれ。
対象は端末にしてた。実際、私の端末の通知にきた
脱落の連絡の中に絶命によるものはない。」
私の端末の画面を悠真に見せる。
「本当に私の光線がアリスに当たったんだな?」
「ああ、間違いない。
光線の色も、放っている影力も一致していた。
.....いや、お前の自動追尾弾よりも少し速かったような.....」
「......だとしたら.....」
ずっと思ってた一つの可能性があった。
それは.......
「誰かが私の自動追尾弾を捻じ曲げた...?」
つづく




