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死を招く破滅

 ガルトの放った刃を、陸は最小限の身ごなしで、紙一重にかわした。


 売り言葉に買い言葉の末の、真っ向からの一撃。


 空気を力任せに切り裂く、轟音。


 その直後、爆発でも起きたかのように、地面が砕け散った。


 「オラァァァッ!」


 土煙が舞い上がる。


 普通なら、パニックに陥る場面だった。


 ……普通なら、だ。


 陸を操る蓮の動きには、一瞬の迷いすらない。


 次の斬撃が来る。


 その瞬間、陸の身体は——自分の意思よりも一瞬だけ早く、右へと流れていた。


 本人は、何もしていない。


 いや、正確には——する必要が、なかった。


 陸の身体は、蓮の操作に合わせて勝手に動いてくれるのだから。


 「うわっ、危なっ」


 半歩だけ横へずれた陸の、その服の裾すら掠めることなく。


 ガルトの刃は、地面だけを豪快に抉った。


 いつもは明朗快活なアリシアでさえ、信じられないものを見るような目で、陸を見つめている。


 ズシィィィン。


 周囲の空気ごと震わせるような、重低音。


 三人の視線が、同時に音のした方向へと向いた。


 「グラァァァッ!」


 千歳巌ちとせいわおが、その巨頭を仰ぎ、固有技能を発動する。


 ——『震天鳴動グランド・ロア』。


 大気を引き裂くように、超高周波の重力振動波が、全方位へと駆け抜けた。


 「氷の符契ふけい——二条目、霜華鏡壁そうかきょうへき!」


 ガルトの足元から、冷気が渦を巻く。


 空気中の水分が瞬く間に凍結し、透き通る氷の壁が、彼の前へと立ち上がった。


 しかし。


 渾身の氷壁は、わずか一瞬で、ガラス細工のように儚く粉砕した。


 「くそっ……! 俺の……俺の誇る氷壁が、砕かれただと……!?」


 だが、ガルトは混乱しなかった。


 動揺で足を止めることも、ない。


 不屈の執念と傲慢さが、彼の胸中で激しく燃え上がる。


 「なら、これでどうだぁぁっ! 氷の符契——三条目、凍獄貫天矢とうごくかんてんし!」


 極寒の威力を秘めた氷の長矢が、魔物目掛けて一直線に飛翔する。


 だが。


 絶対的な存在差の前では、その足掻きすら、あまりに無力だった。


 千歳巌の体表を覆う黒の岩晶が、眩い光を放つ。


 ——『剛晶散爆リソス・バースト』。


 咆哮と同時に、硬質の岩晶が、霰弾のように全方位へ爆発散乱した。


 ガルトの放った氷矢は、空中であっけなく破砕される。


 次の瞬間——


 無数の黒岩晶の欠片が、ガルトの肉体を容赦なく貫いていた。


 「ガ、ア……っ!?」


 叫び声を上げる余裕すら、なかった。


 岩晶の雨に刺し穿たれ、ガルトの身体はその場に崩れ落ちる。


 「……嘘」


 アリシアの唇から、掠れた声が漏れた。


 B級の浪人が、たった一撃で。


 いつもの太陽のような笑顔は、完全に消え去っている。


 その瞳は、恐怖で大きく見開かれていた。


 だが、飛散する岩晶の弾幕は止まらない。


 砕け散った結晶が、雨のように絶え間なく降り注ぐ。


 「……か、風の符契——一条目、風之翔躍エアステップ!」


 震える脚に喝を入れ、足元へ風圧を発生させる。


 恐慌に呑まれそうになる心を押し殺し、アリシアは空を蹴るように身を躍らせた。


 「風の符契——二条目、風刃千斬ウィンドカッター!」


 無数の風の刃が、飛来する岩晶の雨へと襲いかかる。


 しかし、打ち破ることはできない。


 千歳巌の圧倒的な岩晶を前に、鋭利な風刃はことごとく弾き返された。


 「う、嘘……でしょ……!? がはっ……あぁぁっ!」


 衝撃の余波を受け、アリシアの身体が空中から地面へと叩きつけられる。


 死角から迫る、弾き返された岩晶の群れ。


 死の予感に、彼女の表情が硬直した。


 「させない……!」


 蓮の指が、ボタンを押し込んだ。


 その瞬間。


 陸の口が、勝手に動いた。


 「——風の符契、二条目。風渦曲陣ふうかきょくじん


 自分の意思ではない。


 喉も、舌も、勝手に言葉を形づくっていく。


 (え……? 今、俺、何て言った……?)


 暴風のごとき気流が弾幕を強引に吹き飛ばし、視界を一気に押し開く。


 そのまま蓮は陸を操り、弾き飛ばされたアリシアの腕を強引に掴み寄せた。


 「走るぞ、アリシア!」


 「う、うん……っ!」


 普段の頼もしさは、どこへやら。


 アリシアは陸の手にしがみつくように握り締め、恐怖に顔を歪めながらも、必死に足を動かす。


 背後から迫る、絶望的な足音。


 荒野の傍らに、一台の馬車が止まっていた。


 二人は死の淵から逃れるように駆け込み、そのまま飛び乗る。


 御者台の男は、何も言わない。


 ただ静かに、手綱を引いた。


 ガタガタと車輪が激しく揺れ、馬車が走り出す。


 だが、魔物の追撃は終わっていない。


 地響きを立てて迫る、千歳巌の殺気。


 その時だった。


 御者台に座る、変装したその人物——『神秘人《ミス?》』が、ほんの少しだけ後方を振り返った。


 言葉は、発しない。


 ただ、その鋭い眼差しを、静かに魔物へと向けただけだ。


 たった一瞬の、一瞥。


 そこに込められていたのは、深淵を覗き込んだかのような、圧倒的な重圧だった。


 追撃しようとしていた魔物が、恐怖に全身を硬直させる。


 災厄の巨獣が、まるで怯えた仔犬のように、その足を完全に止めた。


 馬車はそのまま魔物を置き去りにし、荒野を駆け抜けていった。


 ー

【ステータス(能力面板)】

--------------------------------------------------

【名前】リク(神坂 陸)

【LV】1

【種族】人族

【職業】無職


--------------------------------------------------

【基本能力値】

HP(生命力):15 / 15

MP(魔力) :0 / 5

SP(體力) :2 / 10


--------------------------------------------------

【裝備・武器】:羈絆の刃(預設初心者木刀)

【 招式塊スロット】:【 風渦曲陣ふうかきょくじん 】【 ロード中 】【 ロード中 】【 ロード中 】【 ロード中 】

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