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未知の世界

 「……異世界ゲームに入ったって、どういう意味?詳しく説明しなさい。」


 蓮の母親 神坂かみさか 綾乃あやのの顔が一瞬に歪み、すぐ普段の様子に戻った。


 蓮は説明していた。


 「わかった。父さんのもとに戻って、あとは私が何とかするから」


 「君たち、誰だ?」


 突然、自分に視線を向けてきた二人を見て、陸は首を傾けた。


 「へへ、私、人族ギルド所属のC級浪人アリシアなの!」


 「海王族ギルドのB級浪人ガルト。」


 隣に立つ青年は短く名乗った。


 「人族と海王族ギルド?」


 聞き慣れない言葉に、陸は思わず聞き返した。


 「何かおかしいことあるの?」


 アリシアが不思議そうに首を傾げた。


 「ギルドが種族ごとに分かれてるなら、ゴブリンギルドもあるよね?さっきのキングゴブリンなんて、ギルドマスターかも」


 陸が冗談半分で言うと、アリシアは慌てて首を横に振った。


 「そんなのないよ!ゴブリンは魔物だから……でも、獣人族ギルドがあるよ。」


 「獣人族?他にあるのか?」


 「うん、あるよ。ほかにはドワーフ、妖精族、竜族、悪魔族、神族のギルドもあるよ。」


 「へえーそんなにあるんだ。」


 陸は少し感心したように頷く。


 そして次の瞬間。


 「じゃあ、海王族ギルドって刺身を売ってる?」


 「…………」


 空気が数秒間止まった。


 ガルトの眉がぴくりと動いた。


 「……お前さぁ。」


 低い声が響く。まるで、雷のようだ。


 「ここはルーキーが遊べるところじゃねえんだよ。」


 「なるほど。」


 陸は真剣な顔で何度も頷いた。


 「つまり、ここは老人しか遊べないところなんだ。」


 「…………」


 アリシアは頭を抱えた。


 ガルトのこめかみに青筋が浮かんだ。


 「……お前、殺されてえのか?」


 腰の侍刀へ手を伸ばしながら睨みつけた。


 「紙みてえな木刀にその空気読めねえ性格。一瞬で死んでもおかしくねえぞ。」


 そう吐き捨てると、ガルトは指をくいっと動かした。


 「……出てこい。お前に礼儀っていうもんを教えてやる!」


 ガルトは陸の襟首を掴み、そのまま馬車の外へ引きずり出した。


 「やめてよ!二人ども!」


 アリシアは慌てて二人の間へ割り込んだ。


 “……オヤジ、わるいな。で、こいつはだれ?”


 母のもとから戻ってきた蓮がそう言うと、その声は再び陸の脳内へ直接響いた。


 「ただの、ナマ臭いおじさんだけさ。」


 陸がかっこいよく言い返したかったが、ステータスを確認した蓮は、ガルトのほうが強いと判断していた。


 ガルトは陸の言葉を気にも留めず、彼の木刀へ視線を向ける。


 「お前、その刀……招式化しょうしきかは済ませたのか?」


 「招式化?」


 困惑する陸を見て、蓮が説明を始めた。


 “招式化は、浪人になる前に必ず自分の刀に与える儀式なんだ。招式のかたまりを刀の上に載せれば、自動的に完成する。招式の塊は石みたい見た目をしてる。”


 「……なるほど。」


 陸は頷いた。

 

 しかし、蓮は自分の父親のことをよく知っていた。


 その表情を見れば、本当に理解しているわけではないことはすぐにわかる。


 「ふん、したことねえのかよ。……一つ選べ。」


 ガルトは浪人としての誇りを持っている。だからこそ、相手にも最低限の準備はしてほしかった。


 “オヤジ、本当にわかってる?”


 「わかってる。この石だろう。」


 陸は近くに転がっていた石を適当に拾い上げた。


 “違うよ!それは普通の石だ……”


 蓮の声は聞こえないものの、陸の行為を見たガルトは思わず吹き出した。


 「愚かなものだ。普通の石と招式の塊を間違えるとは。」


 陸はガルトの言葉を無視し、改めて周りを探す。


 しばらくして、ようやく招式の塊を見つけると、それをを木刀の上に載せた。


 そして、陸は大げさな動きで叫ぶ。


 「出てこい!大谷翔平パワー!」


 “なにそれ?大谷翔平ってプロ野球選手じゃん、招式化に関係ないよ。”


 「いいじゃん、かっこいいもん。」


 金色の光が木刀を包み込んだ。


 やがて光が消えると、五つの光球はゆっくりと木刀の中に吸い込まれていった。


 「い、五つ?」


 ガルトも蓮も驚きを隠せなかった。


 “五つ?オヤジ、神引きじゃん。”


 「おい、勝負しようぜ。」


 戦う条件が揃った。


 ガルトは腰の刀に手を添え、不敵な笑みを浮かべた。


 その時、不意に蓮が異変に気付いた。


 ”オヤジ、大変だ、使えないスキルを五つも手に入れた。”


 「そうか……。」


 陸はただ静かに目を閉じる。


 「じゃあ、任せたな、蓮。」


 その声に恐れはなかった。


 あるのは、息子への揺るぎない信頼だけだ。


 陸が微動だにしない姿を見たガルトは、鼻で笑う。


 「腰でも抜けたか?」


 それを言ったガルトは、地面を力強く蹴った。


 一直線に陸との距離を詰まる。


 「かかってこい!!」


 その瞬間。


 蓮の見ていたゲーム画面が赤く点滅した。


 システムが警告音を鳴らした。


 【WARNING】

 魔物の接近を検知しました。


 ー

【ステータス(能力面板)】

--------------------------------------------------

【名前】リク(神坂 陸)

【LV】1

【種族】人族

【職業】無職(初心者)


--------------------------------------------------

【基本能力値】

HP(生命力):15 / 15

MP(魔力) :0 / 0

SP(體力) :10 / 10


--------------------------------------------------

【裝備・武器】

・羈絆の刃(預設初心者木劍)

[招式塊スロット]:[ ロード中 ][ ロード中 ][ ロード中 ][ ロード中 ][ ロード中 ]

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