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異世界ゲームに入った?

 “オヤジ!早く、逃げろー!”


 って、頭の中でこの言葉しかない。


 目が開いた時に何かが滴った。


 「何、これ?水?」


 顔を上げ、自分より大きい陰が現れた瞬間に気づいた。これはゲームの中にしかいない魔物の涎なのだ。


 「ーーっ!」


 その魔物は大声で吠えた。


 “オヤジ!死にたいの?逃げろってば!”


 あの言葉はまるで直接脳内で叫んだみたいだ。そして、足はやっと動いた。しかし、ストレスがつい抑えられないぐらい、叫びながら、逃げた。


 「なぜ俺はここにいた?息子と一緒に部屋にいたのに…」



 昨夜ーーーー


 「主人、奥様、蓮様、お帰りなさい、夕食はもう用意いたしました。」


 三人は順番に腰を掛け、メイドたちが用意したオードブルをダイニングに運んだ。


 「母さん、今日オヤジがまたバカなことをしてさ。」


 「へえー今度は何をしたの?」


 「そうがーー」


 陸は昼間で会社の出来事を思い出した。会議室のモニターには、新作『異世界ゲーム』の戦闘システムに関する企画資料が映し出されている。


 「……以上のように、今回のコンセプトは、プレイヤーごとに独自のプレイスタイルを構築できる設計しています。プレイヤーは武器の成長やスキルの組み合わせによって、自分だけの戦闘スタイルを築けるようになれます。」


 企画部長 長谷川はせがわ 拓真たくまは眼鏡を軽く押し上げながら、真面目な声で説明を続けた。


 社長席に深く腰掛けた陸は、実に真剣な表情で頷いている。参加者たちの視線が一斉に彼へ集まった。


 陸はしばらく黙ったままだった。


 三秒ほど経ったころ、不意に何かを思いついたように表情が明るくなる。


 「……すごいゲームになりそうだな。」


 それを聞いた副社長 御剣みたつぎ あきらの口元は、ニヤリと歪んだ。ほかの出席者も何も言わない。ただ、会議室の空気だけが妙に重い。


 「お見事なご分析ですね、社長。……で、現在の『プレイヤーの成長曲線』につきまして、何か修正のご指示は? 社長のご高見をお聞かせください。」


 御剣晃は丁寧な敬語を使っているものの、どこか皮肉のある言い方だった。蓮はその言葉に胸騒ぎを覚える。


 陸は資料を最初から読み返し始めた。専門用語だらけの資料だけに、読むのにかなりの時間を要している。やがて顔を上げると、自信満々の笑みを浮かべて言った。


 「プレイヤーは、遊べば遊ぶほど強くなるんじゃないか?」


 「…………はい。まさにそれが『成長曲線』でございます。」

 その時、デザイン部がモンスターの設定画を取り出した。


 「こちらが序盤の魔物、『沼地の毒獣』です。毒液でプレイヤーを攻撃して、継続ダメージを与えます。」


 「……こいつ、ちょっと寒そうじゃないか?」


 「え?」


 陸はモンスターのつるりとした首を指差した。


 「ほら、服を着ていないだろう。」


 「社長、これは魔物ですよ。」


 「魔物だって寒いだろ?」


 「オヤジ、そいつはは皮が厚いからな、寒さなんてへっちゃらなんだ。」


 陸はしばらく真剣に考え込んだ。


 「じゃあ、暖かい上着でも一枚着せてやるか」


 「プレイヤーは魔物を倒すんだ。ペットを飼いたいわけじゃないんだよ!」


 蓮がぼそりとつぶやく。


 会議室にいた社員たちが、思わず下を向いてくすくす笑った。


 陸は気にせず、なおさら熱心に続ける。


 「素材も暖かそうなのを選ぶといい。これなら風邪もひきそうに見えないだろ。」


 「このゲームは獣を攻撃するんだ。獣を育つことじゃない。」


 会議室で何人かの社員が思わずくすくす笑った。


 「はー。」蓮は深いため息をついた。


 「ふふふ、父さんったら、お疲れー」


 「はいはい、そんなに怒るなよー、後で一緒に新しいゲームをしようか?」


 「...いいよ。」


 「へへっ、キングゴブリンって雑魚だな。」


 「ゲームの中に入ってきてそいつとやり合ったら、勝てるかどうか見ものだな。」


 「もちろん。」


 その一瞬、画面から強い光が飛び出した。


 陸が消えたことに気づいた


 「オヤジ、オヤジ、どこに行った?」


 「おい、オヤジ。」


 そのとき、テレビから小さく声に聞いた。


 「待て、なぜ俺はここにいた?部屋にいたのに…。待て、ここはどこ?森?」


 「ちょっと待て、一体何が起きたんだ……? おい、オヤジ、何でゲームにいる!?」


 「なあ、これは夢だよな……?夢だって言ってくれよ……。蓮、またいるかい?」


 陸は息子の声をよく聞こえない。どこか雑音があるのだ。


 「そんなこと言われたって、俺だって何も分かんないよぉぉぉ!……っ、オ、オヤジ、お前の後ろ……嘘だろ、何だあのデカい魔物...キングゴブリン!?」


 「嘘だろ......。待て、なんで俺の体が自分の意識で動けない?」


 「あ!オヤジの体が操作できる!オヤジ、振り返るな!――今からお前を動かすぞ!」

 

 それでこうなった。


 「..….キングゴブリン?何だこれ...?蓮、早く、助けてくれ!早く走れ!」


 「走れないよ!オヤジの身体能力がダサすぎっ!……うーん、キングゴブリンだよね...…あ!ゴブリンは水泳できないから、この前の川に行って!やく100メートルだ。」


 「川を飛び越える?無理だ。」


 「ゴブリンに食べられたい?」


 「やっぱ食べられたくねえよ!……やるよ!力を貸してくれ。」


 「いくぞー」


 「わあああぁぁーっ」


 陸の体がガクンと強制的に動かされ、そのまま川を飛び越えて向こうの岸に着地させられた。


 「はあ、はあ……もうダメだ、私の体。」


 「...…クソザコ体力だな。オヤジのステータス、もう体力赤じゃん。……で、そこ安全そうに見えるから、とりあえずそこでちょっと休んでて、母さんに伝えてくるから。」


 陸は蓮の話を聞くと、倒れ込んで寝てしまった。


 何時間かかったかわからない。馬車の音がパカパカしている。


 「ここは……どこ?」


 「あ、目が覚めたの?お名前はなんていうの?」


 「……陸。君たちは誰?」


 ー

【ステータス(能力面板)】

--------------------------------------------------

【名前】リク(神坂 陸)

【LV】1

【種族】人族

【職業】無職(初心者)


--------------------------------------------------

【基本能力値】

HP(生命力):15 / 15

MP(魔力) :0 / 0

SP(體力) :0 / 10


--------------------------------------------------

【裝備・武器】

・羈絆の刃(預設初心者木劍)

[招式塊スロット]:[空][空][空][空][空]

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