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第9話 「ギョウザとヲタ通」


――翌日、俺たちは、ギルドに向かった。結奈のパーティ―登録と新しい依頼を受けるためだった。


「これで、登録完了です」


そういいながらちょっと不機嫌になっているリリナ


《早くフォローしてください》


ナビ子の声がしてきた。


「は?」


俺が驚いているとミリアとフィリアも突っ込みを入れてきた。


「そうよ」


「早くフォローしないと」


「え?なんのフォロー」


《もう…フォローできません》


目の前のリリナの圧がすごくなってきた。


「あの娘の仲間になったの?」


「あ……いや……パーティーに入ったって言えば、仲間になるか」


「「《はぁ~》」」


首元をつかまれ


「そうなんだ…魔力通環したんだ」


「え?…ええええええ!!!そ...そんなことするわけないでしょ」


「そうなの」


「そうだよ。クラスメイトには手を出しません」


「「私たちは」」


「その…だな…」


《緊急事態発生!!クミがヘタレ発動中!!》


「おい!!」


「ま…そういうことにしておきましょう」


話をしている俺たちの後ろで結奈は無言でじっと待っていたのだった。


☆☆☆


俺たちは、いつものように薬草採取へ来ていた。彼女は、数回この森に来て、実施訓練をしたことがあると言っていたが、薬草採取は初めてと聞いている。なので、本当は俺が見本を見せればいいのだが、最初にヒール草を見つけたミリアが、ヒール草を見せながら説明している。


「これがヒール草だよ。ちゃんと見分けるんだよ?このように根っこも一緒にとってね。さもないと」


「さもないと?」


「とんでもないことが起きるから」


「は、はい!」


スコップを受け取った結奈は真剣な顔で頷いていた。


だが。


数十分後――。


「クミくーん! 見つけたよ!!」


結奈の元気がいい声がしてきたので、俺たちは声がした方へ向かった。


「おぉ! どれどれ」


結奈が今にも抜こうとしている草を見て驚いた。


「今から抜くね」


「ま…待て!!」


俺たちが制止する前に、その草を抜いてしまった次の瞬間。


《マンドザエモンです》


次の瞬間、耳をつんざくような大絶叫が響いた。


「むぎゃぁあああああああああ!!」


その音にミリアが吹っ飛ぶ。フィリアは耳をふさいだまま気絶し、結奈もマンドザエモンを持ったまま、固まっている。

キーーーーンという耳鳴りが続く中、俺たちの目の前にポロポロチョウがぽとぽと落ちてきた。


☆☆☆


しばらくして、結奈の一言目が


「……耳が痛いです」


「私も」


みんな同じ状態だった。そして、結奈は俺たちの説明に驚いているのだが、俺たちもマンドザエモンを見たのは、初めてだった。


「え!? ヒール草じゃないの!?」


するとナビ子が説明を始めた、


《酷似植物のマンドザエモンです。引き抜くと根っこの部分が叫び声をあげるので注意が必要です。特に初心者がヒール草とよく間違えます》


「なんでそんな危険植物が生えてるんだよ!?」


《禁則事項です》


「は?」


本来なら突っ込みたいところだったのだが、なぜかやる気を持っている結奈は、別の草を抜こうとしている。


「まて!!」


そこまで行ったのだが、時すでに遅し、白い球根のついた草を抜いていたのだ。そして、


むぁあああ―――ん


ときつい匂いがしてきたんだけど、どこか懐かしい匂い。


「クミくーん。ちょっと臭いけど、どこかで嗅いだことがある匂いだね」


「ん?そうだな」


するとナビ子が説明を始めた。


《ギョウザニンニクです》


「なんだその名前!?」


《地球類似植物で、食用可能》


「え?」


《滋養強壮作用があります》


「……待てよ?」


俺の脳内に電流が走る。その瞬間。


《またろくでもない顔をしています》


ナビ子が冷たく言った。


「失礼だな!!」


《クミが何か閃く時は大体問題が起こります》


「偏見だ!!」


《事実です》


「ぐっ……」


☆☆☆


数時間後――。


ギルドに戻った俺たちを見た冒険者たちは匂いに気づいたのか変な顔をしている。


「また、臭いぞお前ら」


そういわれて困った顔をしているミリアとフィリア。しかし、俺と結奈は喜んでいた。実は、ギョウザニンニクの味がニンニクそのものだと分かった俺たちは、ちょうど落ちていたポロポロチョウをお肉にして餃子を作ろうということになった。ちなみに結奈は、餃子の皮を作ったことがあるらしい。なので、ギルドに戻った俺たちは無敵モードになっていた。


「ギョウザ作るぞぉぉぉぉ!!」


「おぉぉぉ!!」


そんな俺たちを見て呆れるフィリアに対して、困惑しているミリア


「な…なんで、クミたちはこんなにテンション高いの?」


「それはだな!!」


「「――それが、日本人の魂だからだ (よ)!!」」


俺と結奈がハモってしまったが、気にしない。それは、日本人の魂だから

厨房を借り、冒険者たちがざわざわ見ている中で俺たちは作業を始めた。


ギョウザニンニクを刻み。


肉を混ぜ。


皮っぽいものを作り。


包む。


包む。


包む。


「……なんか器用ですね」


フィリアが少し感心していた。


「ふっ……オタクは料理もできる」


《一人暮らし歴が長いだけです》


「夢を壊すな!!」


すると結奈ももくもくと包んでいる


「結奈もうまいね」


「まぁ…このくらいはね」


包み込む作業が終わって俺は叫んだ。


「焼くぞぉぉぉぉ!!」


ジュワァァァァァ!!


鉄板に並べた瞬間、とんでもない匂いが広がった。


「くっさ!!」


「またお前らかぁぁぁぁ!!」


ギルド中が騒ぎ始める。受付嬢のリリナまで飛んできた。


「何してるのよぉぉぉ!!」


「ギョウザだ!!」


「ギョウザって何!?」


「日本人の魂だ!!」


「知らないって言ってるでしょ!!」


ギルド内に広がるニンニク臭に冒険者たちが顔をしかめる。


「臭ぇ!!」


「また問題起こしてる!!」


「もうこいつら隔離しろ!!」


だが――焼き上がった。


「……できた」


こんがり焼けたギョウザ。パリパリ。ジュワジュワ。肉汁。香ばしい匂い。


沈黙。そして。


「……あれ?」


ミリアが一口食べる。


「お、美味しい……」


フィリアも目を見開いた。


「……これは、かなり美味です」


結奈まで感動している。


「なにこれぇぇぇ!?」


すると周囲の冒険者たちが近づいてきた。


「おい、ちょっと食わせろ」


「一個だけ!」


「うめぇぇぇぇ!!」


「酒くれぇぇぇ!!」


ギルドが一気に宴会状態になる。


「追加ぁぁぁ!!」


「もっと焼けぇぇぇ!!」


リリナまで食べて固まっていた。


「……なにこれ」


「美味しいだろ?」


「悔しいけど美味しいぃぃぃ!!」


俺はドヤ顔した。


「ふっ……これが地球知識だ」


《調子に乗っています》


「うるさい!!」


☆☆☆


餃子を食べ終わると、俺たちは、ホテルに戻った。

だが、問題は、その後だった。


《警告》


ナビ子の声。


《ギョウザニンニクの過剰摂取を確認》


「え?」


《滋養強壮効果があります》


「へぇ」


《精力増強作用があります》


「……は?」


沈黙。数秒後。


「……なんか暑くない?」


ミリアの顔が真っ赤だった。


「は、はい……なんだか……」


フィリアもふらついている。結奈まで耳まで赤い。


「うぅ……」


俺も汗が止まらない。


《ケモノ化傾向上昇》


「なんだそれぇぇぇぇ!!」


《本能優位状態です》


「やばいやつじゃん!!」


ミリアがふらふら近づいてくる。


「クミぃ……」


「近い近い近い!!」


フィリアまでぼーっとしていた。


「……なんだか、変です」


「俺もだよ!!」


だが、問題があった。結奈がいる。つまり、いつもの“魔力通環”ができない。


「うぅ……」


「ちょ、近づかないでぇ……」


「む、無理ぃぃぃぃ!!」


結奈が涙目で叫ぶ。その瞬間、クミに衝撃。


「ぐはぁっ!!」


《精神的ダメージを確認》


「うるせぇ!!」


しかも、


「クミ……なんで平気なの?」


「え?」


《脂肪により効果が分散されています》


ミリアが爆笑する。


「ぷっ、あはははは!!」


「笑うなぁぁぁ!!」


その夜、俺たちは、全員、必死に耐えていたが、限界が近かった。


「結奈!! 早く自分の部屋に戻れ!!」


「は…はい」


結奈がいなくなって、俺たちは、ケモノになっていた。


☆☆☆


翌朝――、ギルドでは、俺たちだけでなく、冒険者たちも完全にボロボロだった。

寝不足、フラフラ、しかも、全員ニンニク臭い。


「くっさ……」


「自分たちでわかる……」


「……最悪です」


結奈は顔真っ赤のまま、クミの隣でふらふらしていた。その時だった。ギルド入口が開く。


「おはようございまーす!」


入ってきたのは――クラスメイト女子たちだった。これから校外訓練らしい。そして、いなくなった結奈を見つけて、その姿を見て固まった。


「……え?」


女子たちの視線の、結奈は、顔真っ赤をして、うとうとしながらクミの隣で寄りかかったていたのだった。


沈黙。


数秒後――。


「国府田ぁぁぁぁぁ!!」


「お前、何したぁぁぁぁ!!」


「違うぅぅぅぅぅ!!」


ギルド中に、俺の悲鳴が響き渡ったのだった――。





読んで下さりありがとうございます。


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