第8話 「クラスメイトの女の子とヲタ通」
あれから1か月――。
俺たちは、地道に薬草採取を中心に依頼をこなしていった。
「クミ!! だいぶ余裕が出てきたね」
今日も依頼を達成したこともあり、ミリアとフィリアの表情が明るい。
「そうだな。そろそろミリアとフィリアの武器を新調しようか」
「「え? いいの?」」
「そうだよ。そろそろ替えないとね」
そう言うと、二人とも嬉しそうに抱きついてきた。
そんな俺たちを、ギルドにいる冒険者たちは生暖かい目で見ている。とはいえ、ここにいる男は俺一人だけだ。だが、まだ太っている俺に、ほかの冒険者たちは魅力を感じていないようだった。
そのため、この世界において“男がいる”という不自然さだけが、余計に存在感を際立たせていた。
こうして、カウンターへ到着すると――。
「今日もご苦労さん」
受付嬢のリリナが微笑みながら対応してくれる。
「はい。依頼達成ですね。これが今日の報酬です。あと……この後もよろしくね」
「はい……」
そこまではよかったんだけど、なんだかリリナの声に圧を感じる。
「ところで、その娘さんは誰?」
「え?」
横にくっついているミリアを見ると、首をかしげている。反対側のフィリアを見ても同じだった。
だが、リリナは「フン」と顎で俺たちの後ろを示した。
すると、そこにはボロボロのローブを羽織り、顔を隠した少女が立っていた。
俺たちが驚いていると、横から「誰?」「誰?」と質問が飛んでくる。だが、俺はまったく訳がわからない状態だった。
その時、その少女からか細い声がした。
「……お、お願いです」
この声、どこかで聞いた気がする。
「私を助けてください」
「「「「は?」」」」
俺たちは理解できないまま、その少女を見つめる。
すると、彼女は泣き出した。
「もう……行くところがないんです。お願いします。何でもしますから……国府田君のそばに置いてください」
すると三人が俺を呼び寄せた。
「あんた、何をしたの?」
「い、いや……俺は何も……」
「何でもするって、もうやったんでしょ?」
「無実だ!!」
するとナビ子が、
《クミが正しいです!!》
「ほら!!」
《クミは、まだキモいのでモテるはずがありません》
「おい!! ナビ子!!」
《安心してください。モテ期ではありません》
「そこまで言う!?」
俺たちの“見えない相手との会話”を見て戸惑っている女の子は、
「突然で戸惑うのも無理ないけど、国府田君しか頼れるところがないの」
するとミリアとフィリアが、その女の子のところへ行った。
「あなた、名前は?」
「小森結奈……そこにいる国府田君のクラスメイトです」
「そうなんだ。けど、さっき何でもするって言ったけど、魔力通環もするの?」
「あの……魔力通環って?」
「もう……エッチよ」
「はぁ!?」
結奈は顔を真っ赤にした。
次の瞬間――。
「む、無理です!!」
即答だった。
その言葉にダメージを受けるクミだったが、
《当然の反応だと思います》
ナビ子の突っ込みに、俺たちは「おい!!」と突っ込み返す。
だが、ミリアとフィリアは安心した表情を浮かべていた。
「じゃあ、大丈夫ね」
「そうね。増えるわけじゃないし」
「基準そこ!?」
そこへナビ子も、
《採用を推奨します》
《小森結奈。戦力は低いですが、料理・掃除に適性があります。だらしないクミにとって、生活支援要員として必要です》
「しかし俺、クラスメイトと関わりたくないんだけど」
《自業自得です》
「そこ!! 用法おかしくない!?」
《クミほどではありません!!》
こうして、結奈が仲間になった。
とりあえず、ギルドで風呂に入ってきてもらった後、食事をすることになった。
かなりつらかったようで、生活魔法しか使えない彼女は、戦力外な上に足手まとい扱いされていることを気にしていた。
友達の結衣の自殺。
美佐の彼氏・優斗を、風間が訓練と称して殺したこと。
それによって身の危険を感じ、逃げ出したまではよかったが、行く当てもなく、少し前にギルドで俺を見かけて頼ってきた――ということだった。
風間はすでにレベル50を超えており、その仲間もレベル30を超えているらしい。そして、女子上位組である笹山瑞稀は剣士としてレベル60、栗山莉亜羅は聖女としてレベル60。いずれも、風間より強いという。しかし、結奈のように弱い女子は、日々の恐怖に耐えるしかなかった。
こうして彼女は、俺たちの仲間として一緒に行動することになった。
一方――。
風間は、“簡単に抱ける女”に飽き始めていた。あの時、美佐を無理やり襲った時の、泣き叫ぶ声。その時に感じた、あのゾクゾクする感覚が忘れられなかった。
やがて彼は女子寮へ近づくようになる。だが、衛兵がいるため、実行には移せずにいた。
彼の“闇落ち”への序曲が、静かに始まっていた。




