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第7話 「レベルアップとヲタ通」


ゴブリンリン討伐から一夜――


俺たちは、討伐証明を持ってギルドへ戻ってきていた。

ギルド内へ入った瞬間、そこにいた人たちの視線が集まった。


「おぉ、帰ってきたぞ」


「マジで達成したのか?」


「新人三人組だろ?」


ざわざわと周囲が騒ぎ始める。

すると、カウンター奥から受付嬢が顔を出したので、机の上に討伐証明のゴブリンリンの耳とボブゴブリン・ボブリンメイズの耳と魔石の入った袋を置いた。


「これです」


「……え?」


一瞬、固まる。


「ほ、本当に達成したの!?」


「したぞぉぉぉぉ!!」


俺は一度机の上に置いた討伐証明を掲げた。


「ゴブリンリン討伐完了だぁぁぁ!!」


ギルド内がどっと沸く。


「マジかよ!?」


「生きて帰ってきやがった!」


「しかも三人で!?」


ミリアとフィリアも、へろへろになりながら笑っていた。


「も、もう二度とやりたくない……」


「……しばらくゴブリンリンは見たくありません」


受付嬢は、呆れたように額を押さえたあと、小さく笑った。


「……ほんと、おバカね」


そう言いながらも、どこか嬉しそうだった。


そして、耳元で「後払いの分もしっかりと貰うからね」


俺は、一昨日のことを思い出してしまったんだけど、ミリアとフィリアは


「ガンバ」


☆☆☆


その後――。


報酬を受け取り、俺たちは酒場スペースで晩飯を食べていた。肉にパンとスープ、そして、今回は、ジュース。え?なんでジュースかって、3人ともお酒を飲んだら寝る自信があるからです。


「うめぇぇぇぇ……」


「生き返る……」


「……文明って素晴らしいです」


三人そろって感動していると、その時だった。


《条件達成を確認しました》


ナビ子の声。


《レベルアップ上限が解放されました》


「おぉ!?」


《ただし、次のレベルアップには条件があります》


「条件?」


ミリアとフィリアも顔を上げる。


すると、


《魔力通環を行ってください》


「ぶふっ!!」


ミリアがジュースを吹いた。


「な、なななな……!?」


フィリアまで顔を真っ赤にしている。


「そ、それ、今ここで言います!?」


《重要事項です》


俺は頬をかいた。


「……まぁ、その……」


二人がちらりとこっちを見ている。目が合った途端なんか照れる。俺は頭を掻きながら、小さく笑った。


「こんなバカな俺についてきてくれて、ありがとな」


「「……っ」」


ミリアの顔が赤くなり、フィリアも、少しだけ視線を逸らした。


「な、なんか改めて言われると照れるね……」


「……でも、その……嫌ではありません」


なんかいい空気になっていて三人でキックオフごっこの状態になり始めたその瞬間。


《はぁ……》


ものすごく深いため息。


《らしくありません》


「なんで!?」


《急に青春空間を形成しないでください》


「うるせぇ!!」


《なお、レベルアップ条件に対して対象人数が不足しています》


「……へ?」


《対象者不足です》


「え?」


三人で固まった。


その時だった。


「いいなぁ……」


横から声、見ると、受付嬢のリリナがじぃーっとこちらを見ていた。


「今晩も三人でいちゃいちゃするんでしょ?」


「ぶっ!?」


「なっ!?」


「い、いちゃいちゃではありません!」


受付嬢は頬を膨らませる。


「いいなぁ……」


「仲良しで……」


「毎晩楽しそうで……」


なんか羨ましそうだった。そして…


《対象者を確認しました》


「は?」


俺たちが固まった瞬間、受付嬢がピクリと止まる。


「……え?」


《条件適合者です》


「「「えぇぇぇぇ!?」」」


その瞬間だった。


「リリナさーん!!」


奥から声が響いて、受付嬢のリリナさんが振り返る。


「あっ、はーい!」


慌てて立ち上がった。だが、その前に、スッと一枚の紙を俺の前へ置いた。


「……私が終わるまで待っててね?」


「え?」


「じゃ、後で♪」


そして、ぱたぱたと去っていく。


沈黙。


数秒後。


ミリアとフィリアが、じーっと俺を見る。


「……クミ?」


「……なんで増えてるんですか?」


「知らねぇよ!?」


☆☆☆


その時だった。


ギルド入口が騒がしくなる。


「失礼します!」


入ってきたのは――王城のクラスメイト女子たちだった。今回の校外学習の成果を、ギルドへ提出しに来たのだ。


「やばっ」


俺は反射的に身を隠した。


《自虐モード発動中》


ナビ子が突っ込んできた。ミリアとフィリアも慌てる。


「なんで隠れるの?」


「いや、なんか条件反射で……」


だが。


「あれ?」


一人の女子が気づいた。


「……国府田?」


「げっ」


目が合った。


女子は書類提出を終えると、こちらへコツコツ歩いてくる。


周囲の女子たちも気づき始めた。


「え?」


「うそ」


「キモオタじゃん」


グサッ。


普通に刺さる。


女子は俺の前まで来ると、じーっと見た。


「……なんか痩せた?」


「うっ」


「ていうか、生きてたんだ」


「失礼!?」


ミリアがムッとする。


「ちょっと、クミをそんな風に――」


だが、その時。


後ろから別の女子が声をかけた。


「ほら、行くよ」


最初に「キモい」と言っていた女子だった。彼女は、ちらっと俺たちを見る。特に、ミリアとフィリアを見る。


「……」


そして、少しだけ驚いた顔をした。


「あの二人……」


「え?」


「国府田を守ろうとしてた」


その言葉に、周囲の女子たちがざわつく。


「は?」


「なんで?」


「ありえなくない?」


だが、話しかけていた女子は、小さく肩をすくめた。


「……でも、なんか」


「楽しそうだったよ?」


その言葉を残し。


「じゃあね、国府田」


女子たちは去っていった。


静寂。


「……なんか疲れた」


俺は机へ突っ伏すと、ミリアが、ふっと笑う。


「でもさ」


「ん?」


「前より、ちゃんと見てくれてる気がする」


フィリアも、小さく頷いた。


「……少しずつ、変わっているのかもしれません」


その時、背後から声。


「むぅ……」


振り返る。リリナさんだった。


「あ!!リリナさん」


頬を膨らませている。


「なんで“さん”付けなの?」


「え?」


「ミリアちゃんとフィリアちゃんは呼び捨てなのに」


「いや、だって受付嬢さんだし……」


「リリナって呼んで」


「圧が強い!?」


ミリアとフィリアがニヤニヤしていた。


「増えるねぇ……」


「……増えてますね」


「だからなんで!?」


☆☆☆


その夜――宿の部屋。


「ふふっ♪」


「今日は頑張ったもんね」


「……ご褒美は必要です」


「リリナも混ざっていい?」


「増えたぁぁぁ!?」


《レベルアップ条件達成を確認》


《魔力循環を開始します》


「うぉぉぉぉぉ!?」


その夜、俺は、またして、深夜まで翻弄されることになるのだった――。


☆☆☆


翌朝――


《レベルアップ完了》


《ステータス更新》


【国府田 久実】


レベル:2 → 5


体重:98kg → 92kg


筋力:8 → 14


体力:10 → 18


魔力:5 → 21


敏捷:3 → 8


《新規スキル獲得》


・簡易罠作成 Lv1

・集団解析 Lv1

・自虐耐性 Lv2

・雑学連結 Lv1


《称号獲得》


『ゴブリンリン生還者』


《なお》


《女性比率が増加傾向です》


「やめろぉぉぉぉぉ!!」

読んで下さりありがとうございます。

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