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第3話 「初クエストとヲタ通」


クエスト 「薬草採取」


初級ポーション用の薬草――ヒール草は、地球でいうところのドクダミに近い植物だった。


湿った土の上、森の入口付近の日陰に群生している。


普通の冒険者からすれば、ただの臭い雑草。


だが、俺の目には違って見えていた。


《オタ通:植物知識検索》


《対象:ヒール草》

《地球分類:ドクダミ系統》

《効果》

・殺菌

・止血

・微弱回復


「……マジでゲームみたいだな」


視界の端には、半透明のミニマップまで表示されている。


緑色の光点がヒール草。


白色の光点が安全地帯。


そして赤い点が――モンスター。


《周辺モンスター》

・ホーンラビット

・ネズネズミ

・プルルンスライム


「名前がゆるいな……」


森の入口付近だけあって、危険度は低いらしい。しかし、ナビ子の指示で自衛の為に槍を背負っている。えっ?収納魔法?あるけど、ナビ子の指示でこうしている。


俺は腰を下ろして、地道にヒール草を採取していく。


しゃがむ。


抜く。


袋へ入れる。


ただそれだけ。


だが、数十分もすると汗だくになっていた。


「はぁ……っ、運動不足すぎる……」


息が切れる。


足が重い。


異世界に来たからって、急に強くなるわけじゃない。


むしろ今の俺は、完全に一般人以下だ。


《運動経験不足を確認》

《継続行動により脂肪燃焼効率が上昇しています》


「うるさい……」


そんなやり取りをしながら薬草を採取していると――。


突然、視界が赤く染まった。


【WARNING】


《緊急クエスト発生》


《近隣冒険者パーティが救援を要請しています》


「え?」


《対象》

女性冒険者×2


《脅威》

ガーウルフ×4


《生存予測》

3分12秒


「ちょ、ちょっと待て!?」


地図上へ赤いマーカーが点滅する。


しかも近い。


かなり近くだ。


すると、森の奥から悲鳴が聞こえた。


「いやぁぁぁっ!!」


「くっ……下がって!!」


若い女の子の声。


俺は反射的に立ち上がった。


「ま、マジかよ……」


助ける?


俺が?


無理だろ。


相手はガーウルフだぞ?


《検索開始》


俺の視界へ次々と文字が流れる。


《異世界知識》

《漫画》

《ゲーム》

《アニメ》

《サバイバル》


「な、何か使えるのないのか!?」


《検索中……》


《現在レベル不足》


《現在魔力量不足》


《スキル再現不可》


「役に立たねぇ!!」


《上位戦術の使用は不可能です》


《初心者向け戦術へ移行します》


すると、ナビ子の声が少しだけ明るくなった。


《提案があります!》


「は?」


《ガーウルフは犬科モンスターです!》


「……だから?」


《犬は大きな音と刺激臭を嫌います!》


「刺激臭?」


《ヒール草を使用してください!》


「え?」


俺は手元のドクダミ……もといヒール草を見る。


《地球知識参照》


《ドクダミ燃焼煙》

・刺激臭

・粘膜刺激


《さらにプルルンスライム粘液を混合》


《簡易煙幕の生成が可能です》


「いや待て待て待て! そんなの漫画知識だろ!?」


《オタク知識は偉大です!》


「雑!!」


だが、やるしかない。


俺は急いで袋からヒール草を取り出し、近くにいたプルルンスライムを石で潰す。


ぷちゅっ――。


青い粘液が飛び散った。


「うわっ、気持ち悪っ!」


《混合してください!》


「こうか!?」


ぐちゃぐちゃに混ぜる。


臭い。


とんでもなく臭い。


《火をつけてください》


「こんなので本当に……」


半信半疑のまま、火打石で着火した瞬間。


ボワァァァッ!!


緑色の煙が大量に吹き上がった。


「グルルルルッ!?」


「ギャウンッ!?」


森の奥から獣の悲鳴。


効いた。


《成功です!》


「マジかよ!?」


俺は煙幕を蹴り飛ばしながら、ガーウルフたちの前へ投げ込む。


煙を浴びたガーウルフたちは完全に混乱していた。


目を擦り。


鼻を鳴らし。


暴れ回っている。


「い、今だっ!!」


女の子二人が逃げ出す。


だが、そのうちの一匹が俺へ気づいた。


赤い目。


鋭い牙。


「うわっ……来たぁぁぁ!!」


俺はとっさに近くの木の枝を掴む。


《ホーンラビット討伐知識》

《槍術初級補正を適用》


「え?」


次の瞬間。


体が勝手に動いた。


突き。


払う。


避ける。


ゲームで見た動き。


アニメで見た動き。


それが一瞬だけ、現実になる。


ドスッ!!


枝がガーウルフの喉へ突き刺さった。


「ギャウッ!?」


そのまま勢い余って転倒する。


俺も地面へ転がった。


《緊急戦闘終了》


《魔力残量:3%》


「はぁ……はぁ……」


視界がぼやける。


頭痛。


吐き気。


全身から力が抜けていく。


《初回スキル使用による魔力枯渇を確認》


「……先に言えよ……」


そのまま、俺の意識は暗闇へ沈んだ。


☆☆☆


目を覚ますと、見知らぬ天井だった。


「……ん?」


柔らかいベッド。


薬草の匂い。


どこか騒がしい声。


「起きたっ!」


横から声が聞こえた。


振り向くと、二人の女の子がいた。


一人は赤髪のショートカット。


もう一人は、金髪で長い耳をしたエルフだった。


「ここ……どこ?」


「冒険者ギルドの治療室だよ!」


赤髪の少女が笑う。


「あなた、私たちを助けて倒れたんだから!」


「え……」


すると、エルフの少女がぺこりと頭を下げた。


「ありがとうございました。あのままだったら、私たち死んでました」


「い、いや……たまたまだから……」


そう言った瞬間。


ぐぅぅぅぅぅ……。


腹が鳴った。


最悪だ。


だが二人は吹き出した。


「ふふっ、なにそれ」


「命懸けで助けた後にそれですか」


笑われた。


でも、不思議と嫌じゃなかった。


異世界に来て初めてだった。


誰かに――感謝されたのは。


しかし、彼女らが俺を見る目がなにかおかしい。しかも、距離が近い。

読んで下さりありがとうございます。


・面白かった、楽しかった

・続きが気になる

と少しでも思ってくださった方は、画面下部の☆☆☆☆☆を★★★★★にして応援して下さると嬉しいです。

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