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第20話 「誘拐とヲタ通」


宴会も終わり、私たちのパーティーとリリナさんが残っていて、魔導士長のルナを見送る準備をしていた時だった。


《本日のレベルアップを開始します》


ナビ子の声が響く。


一瞬、胸が跳ねたんだけど、次の瞬間。


《人員不足のため、追加対象を選定》


「追加?」


《魔導士長ルナを追加します》


その言葉に私は固まった。


ルナさん。つまり。今回の相手に――。


胸の奥が少しだけ重くなる。でも、それが何なのか分からないし、分かりたくもなかった。


そして、ルナさんを見るとガッツポーズをしていた。


《ルナはやる気満々です》


そして夜、部屋に戻った私は、ベッドに潜り込んで眠ろうとするけれど眠れない。

壁一枚向こう、隣の部屋にクミ君、いやクミ君たちがいる。

そう思うだけで落ち着かなかった。


違う。


別に気にしてない。

気にする理由なんてない。

何度もそう言い聞かせる。


この世界では普通のことだ。


男性は貴重、魔力通環も必要なこと、だから、気にする方がおかしい。


そう、おかしいのは私、なのに、耳が勝手に隣の部屋を意識してしまう。


「っ……ぁ……!」


「クミぃ……♪」


「んっ……♪」


「いい……♪もっと……」


聞きたくない。


でも気になる。


聞きたくない。


でも――胸が苦しい。


なんで?なんでこんな気持ちになるの?


私は毛布を頭から被った。聞こえないように。


考えないように。


忘れるように。


それでも。


心のざわつきだけは消えてくれなかった。


そして翌朝。


ほとんど眠れなかった。


鏡に映る自分の顔は少しだけやつれていた。


昨夜のことを思い出してしまう。


そして。


そんなことで落ち込んでいる自分に気付いてしまう。


「なんで……」


思わず呟く。


本当に分からなかった。


なんで私は落ち込んでいるんだろう。


☆☆☆


―――翌朝


最悪の朝を迎えた。昨夜も眠れなかった。モヤモヤしているのにあのなまめかしい声


「クミぃ……♪」


「んーーーー♡」


思い出して机に伏してしまった。


《結奈のレベルアップ条件を達成しました》


「え?」


思わず顔を上げる。


《新スキルを取得しました》


《生活魔法が商業魔法へ進化しました》


《錬金術を取得しました》


《魔力総量上昇》


《適性再計算を実施します》


え?なになに?いったい何が起きたの?と思っているとリリナさんが私のところに駆け寄ってきた。


「結奈ちゃん。新しいスキル…すぐ鑑定するわよ」


そういって、私の手を引いて、カウンターに連れて行って、ギルドで鑑定をしていた。


「レベルアップしたクミのスキル相変わらず意味が分からなかったんだけど、結奈ちゃんのレベルアップ、すごいことになってるわ」


ちなみに、クミくんのレベルアップは以下の通りだったそうだ。


《レベルアップ完了》

《ステータス更新》

【国府田 久実】

レベル:5 → 9

体重:92kg → 85kg

筋力:14 → 23

体力:18 → 29

魔力:21 → 54

敏捷:8 → 16

知力:38 → 49

運:1 → 1


《少しマシになりました》


「うるさい!!」


《新規スキル獲得》

・危険察知 Lv1

・指揮補助 Lv1

・魔力循環効率化 Lv1

・生活知識応用 Lv1

・商談耐性 Lv1

《スキル成長》

・簡易罠作成 Lv1 → Lv2

・集団解析 Lv1 → Lv3

・自虐耐性 Lv2 → Lv4

・雑学連結 Lv1 → Lv3


《称号獲得》

『Dランク冒険者』

『ガーウルフ殲滅補助者』

『魔導士長のお気に入り(仮)』


「なんだ最後の称号!?」


《削除できません》


「削除しろ!!」


《さらに報告があります》


「嫌な予感しかしない」


《女性比率が上昇しました》


《37% → 49%》


「なんで増えるんだよ!!」

《分析結果》

《ミリア・フィリア・リリナ・ルナ》

《結奈(解析中)》

《クミにはもったいなすぎます》


「やめろぉぉぉぉぉ!!」


ということだったらしい。すると、私のところに魔導士長のルナがやってきて、私をじっと見ている。


「な…何か?」


「ほう……」


「お主、面白いものを持っておるな。リリナ。部屋を借りるぞ」


「え?」


「ちょっと来い」


結奈


「え?」


思わず声が漏れる。


「ルナ様?」


ミリアさんまで困惑した顔をしていた。


「少し調べるだけじゃ」


と言葉少なくルナは、結奈を連行し始めた。


「え?」


「大丈夫じゃ。変なことはしないから、安心しろ…」


「え?」


でも、ルナ様の目が何か変。すると、通りがかったフィリアを見つけた


「ちょうどよかった。フィリアもちょっと来い。こいつが抵抗しておる。手伝え」


「フィリアさん」


「結奈ちゃん…観念しなさい」


「え?ええええ!!!」


こうして私はギルトの一室に連れ込まれたのだった。



☆☆☆



その後、私は地獄を見た。魔力循環、前回フィリアさんとやった時は、細い線状の波動がじんわりと体に伝わってきたんだけど、全身を流れる膨大な魔力、線状に伝わる魔力の通り道を無理やり広げられる感じだ。


「う~痛い!!痛い痛い!!」


骨の一本一本、筋肉の繊維、血管の先端に至るまで、身体そのものを作り変えられる感覚。


激痛。


「痛ーーーい。うーーーー。ひぃぎぃいいいいい!!うわぁああああ」


それに混じる説明できない快感に体が引き裂かれそうになる。やがて、痛みは消え、快感のみが全身を駆け巡り、味わったことがない。絶頂の連続に恐怖が走る


「やぁあああ!!」


頭の中が真っ白になって、一時的に全身が痙攣しえびぞりになって、目の前のルナさんも同じようななっていた。


これが私にとって、初めてのホワイトアウトだった。

どれほど時間が経ったのか。


「あ♡…ああ......♡......ううん♡」


気が付けば床に倒れ込んでいた。全身が汗で濡れている。指一本動かすのも辛い。


「ほう。耐えたか」


ルナが感心したように頷いた。


「お主、なかなか筋が良い、それに、魔力循環だけで快感を味わったのは、久しぶりじゃ」


私は返事すらできない。ただ肩で息をしていた。そして、すぐにフィリアさんに魔力循環をしていた。


「ぐひぃいいいい♡♡♡」


ルナ様は、私と同様にヘロヘロになっているフィリアさんを見ながら言った。


「今後、お主とフィリアには魔法を教える」


「……ふぁい?」


私はかすれた声を漏らした。


「お前達には、才能がある。鍛えれば伸びる」


それだけ告げると、ルナは踵を返した。


「ではな」


そのまま部屋を出て行き、残された私は呆然としていた。



☆☆☆



何とか立つことはできたんだけど、そんな私を見つけたリリナさんは


「よし行くわよ」


「え?」


「商業ギルドよ」


「え?」


「契約をしに行かないと、契約」


「え?」


「それと天ぷらとから揚げとマヨネーズを登録しないと」


「まっ...」


と言う間もなく、私の手を引いて冒険者ギルドを出た。そして、商業ギルドまで一キロほど歩かされた。


ぜぇぜぇぜぇ……


うー死ぬかと思った。しかし、リリナさんは呼吸ひとつ「だれていない。それどころか、汗一つかいていない。どうなっているの?


と思ったら、さらなる地獄が私を待っていた。難しい契約の話やそのあと、再び魔力検査だの。スキル検査だのまであって、ただでさえへとへとな私、商業ギルドを出た時にはすでに日も暮れていた。


☆☆☆


足が重い。


頭もぼんやりする。


ルナ様との魔力循環。


あれだけでも十分地獄だった。


体の奥を引き裂かれるような激痛。


なのに同時に押し寄せる快感。


今思い出しても体が震える。


その後も休む暇はなかった。


リリナさんに連行され。


商業ギルドへ行き。


契約書。


登録。


説明。


手続き。


質問攻め。


気が付けば半日以上が過ぎていた。



☆☆☆


商業ギルドをでたら、リリナさんは、「これでよし!!じゃぁ、私は、用事があるからここでね」と言うと私を置いて、どこかに行ってしまった。


疲れた。心も体も限界だった。


その上――


昨夜の隣の部屋から聞こえてきた声。

必死に聞かないようにしたのに聞こえてしまった声。

胸の奥がまだ痛かった。

私はふらふらと歩いていた。

だから気付くのが遅れてしまった。私の目の前をふさいだ人がいた。


「結奈」


「越智くん?」


「もう大丈夫だ」


「え?」


「今から俺がお前を助けてやる」


意味が分からなかった。


ん?


そう思った瞬間にはもう遅かった。


口を塞がれる。


「んっ!?」


反射的に振り払おうとする。


だが力が入らない。


足もふらつく。


体が思うように動かない。


疲労で判断力まで鈍っていた。


「大丈夫だ」


大丈夫じゃない。


そう言いたいのに声が出ない。


抵抗しようと腕を振り上げる。


だが力が入らない。


ルナとの魔力循環と商業ギルド巡りで、体力は完全に底をついていた。


頭から袋を被せられ、視界が消えた。




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