第16話 「作戦会議とヲタ通」
やがて、冷静になった残されたメンバーたちだったが、会議室には重苦しい空気が流れていた。
結奈が去った今、ようやく本来の議題へ戻れる、そう思った時だった。
《ゴブリンリン討伐会議を再開しますか?》
「イエス」
クミが即答した。
《会議を再開します》
《なお、マヨネーズは偉大です》
「お前まで引きずるな」
クミが疲れた顔でナビ子をツッコんだ。そして、再び地図を見つめる。
「まず前回失敗した作戦から考えよう」
《賛成です》
「水攻めは?」
《必要水量不足です》
即答だった。
「だよなぁ……」
今回の洞窟は前回より大きい。しかも内部構造も複雑だ。水を流し込むだけでは埋まらない。
「川とかないのかな?」
《あります》
「おっ」
全員の顔が明るくなる。
だが。
《なお、秀吉ではないので人力による水路変更は不可能です》
「そこ拾う!?」
《歴史ネタです》
「分かるけど!!」
思わず叫ぶクミ。しかし現実は厳しかった。秀吉のような人手もかけられない。なので。水攻め案は却。するとフィリアが腕を組んだ。
「火攻めは?」
《洞窟です》
「だよね」
却下。
「毒は?」
《換気されます》
却下。
「落とし穴」
《掘る時間がありません》
却下。
「もうダメじゃん」
《はい》
「はいじゃねぇ!!」
クミが机を叩いた。すると、何かを思い出したように顔を上げる。
「昔読んだ漫画でさ」
嫌な予感しかしない。
「おならのメタンガスで爆発――」
会議室が静まり返った。
《誰がおならをしに行くのですか?》
「そこ!?」
《なお、サッツメイモ程度では必要量に達しません》
「調べたの!?」
《計算済みです》
「なんで!?」
ミリアが呆れた顔をした。
「何を真面目に考えてるのよ……」
「いや、ワンチャン」
《ありません》
「はい……」
秒で否定された。再び沈黙。
重い。
空気が重い。
すると、オブザーバーとして参加していた茉子が遠慮がちに手を挙げた。
「あの……」
「お?」
「粉塵爆発とか?」
その瞬間、クミが立ち上がった。
「それだ!!」
「え?」
「漫画で見たことある!!」
《却下です》
「早い!!」
《洞窟内部は高湿度です》
「あ」
《粉塵濃度が条件を満たしません》
「マジか……」
《そもそも粉塵を集める手段がありません》
「ダメか……」
クミが再び椅子に座り、ミリアも頭を抱えた。
「もう手がないじゃない」
「うーん……」
完全に行き詰まった。すると、今度は瑞稀が小さく手を挙げた。
「あの……」
「どうぞ」
「匂い玉は?」
その瞬間だった。
「「「却下」」」
全員一致。
「なんでぇ!?」
瑞稀が驚く。
「前に大失敗したの!!」
ミリアが即答した。
「臭いし!!」
フィリアが続く。
「ゴブリンリンに追いかけ回されたし!!」
クミが続いた。
「そうだったんですね……」
瑞稀が静かに引き下がる。
会議室に再び沈黙が訪れた。誰も喋らない。作戦がない。本当にない。万策尽きた。
そんな時だった。
バァン!!
勢いよく扉が開いた。
全員が振り向く。
そこには。
満面の笑みを浮かべた結奈が立っていた。
両手いっぱいに荷物を抱えている。
「ただいま~!!」
嫌な予感しかしない。
「卵買ってきたよ!!」
予感が確信へ変わった。
「今からマヨネーズに挑戦するわ!!」
沈黙。
そして。
《大革命の時間です》
ナビ子が宣言した。
クミは天井を見上げた。
「俺たち……」
遠い目になる。
「ゴブリンリン討伐の会議してたんだよな?」
《過去形です》
「過去形にするな!!」
こうして、ゴブリンリン討伐作戦会議は再び中断、冒険者たちは何故かキッチンへ向かうことに




