表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/33

閑話 軍師茉子の誕生

「はぁ〜……」


思わずため息が漏れる。


原因は、


さっき瑞稀に言われた言葉だった。


「来週のガーウルフ討伐もよろしく」


よろしくも何も、どうしよう。

この前は、男子たちにガーウルフが集中していた。だから、まだやりようがあった。

けど今回はいない。一番やってはいけないのは、取り囲まれてしまうことだ。

戦力をもう一度確認することにした。

現在の女子は13人。元々15人いたんだけど、二人抜けている。一人は結奈、もう一人は風間に殺された小日向結衣(こひなたゆい)


嫌なことを思い出した。


結衣ごめんね。


あの時の衛兵は、あの瑞稀ですら勝てない相手、だから、あの場面、私たちにどうすることもできなかった。瑞稀もやめろ!!と食ってかかったが衛兵に取り押さえられ、何も出来なかった。


結衣は風間に殺された。


少なくとも、

私たちはそう思っている。


そして、一番弱かった結奈は、王城から脱走して、今は国府田くんのところにいる。あの時、わたしに力があれば、みんなそう思って頑張っている。

けど、王城から逃げ出して、自分の居場所を見つけた結奈が、少しだけうらやましかった。


あっといけない。


現在の戦力は、

前衛が瑞稀、莉亜羅、彩音の三人。


遠距離が、わたしを含めて五人。


救護班が一人。


残り四人が防御役。


うーん、どうしても戦力不足。でも、結奈たちは、4人で同じ数のガーフルフを倒していた。

結奈の弓矢とフィリアさんの魔法攻撃、私たちと比べると天と地ほどの差がある。あっちは、即死もしくはそれに近いダメージを与えられ。しかも連射できる。


でも私達では、一匹を止めるだけで精一杯だ。

だからこそ――

取り囲まれたら終わる。


国府田くんもミリアさんも強いもんな、あれで二人ともEランクなんて、正直おかしい。

でも、だからこそ分かる。

私たちは、

“倒し切る力”が足りない。


そう


足りないのは――

私たちの“火力”だ。


火力がなければ、

数を減らせない。


しかし、魔法攻撃はどうすることもできない。せめて、救護班の女の子が弓矢でも使えたら、あの子は結奈と同じ生活魔法しか使えない。


うーん。


もう一度、あのときのガーフルフ戦を思い出す。四人の連携、取り囲もうとするガーウルフを遠距離で確実に攻撃、動きを封じ込める。その隙に二人で倒して行く。

しかし、私たちにあの精度の攻撃はできない。


私は、実習訓練の申請を出した。すると2日後なら可能という返事が来た。こうして私たち3人とめぐみとりさ、そして、救護班のゆきえの6人で行くことにした。

なんとかゆきえが弓を使えますようにと祈っていた。


2日後、私たちは結奈のところに来ている。しかし、ゆきえとめぐみとりさは、国府田くんを警戒している。仕方ないけど、しかし、結奈に


「ゆきえに弓を教えてあげてほしい」


そう伝えると。


「いいよ」


即答だった。


クエストはお決まりの薬草採取なんだけどね。薬草採取をしながら、一方で、私たちは、フィリアさんに魔法を教えてもらうことにした。


すると


「あなた達、魔力の使い方がなっていない。結奈、こっちに来て」


ゆきえを教える結奈を呼び寄せる。


「結奈、ファイヤーボールをあそこに向かって撃って」


生活魔法しかできない結奈には、無理な話、と思っていると。


ドン!!



えっ?



的が木っ端微塵になった。しかも、無詠唱って、チートすぎない?


「結奈、どうやったの?」


「えっ?ただのファイヤーボールだけど、フィリアさんこれでいいんですよね」


「うん、合格だ。前より威力が上がっているな」


「えへへ、実は、風魔法を少しかけているんですよ」


「ちょっと待て、そんなことできるのか?」


「ファイヤーボールをこうして作って、発射する時に風魔法でこのようにスピンをかけるとほら」


ドン!!  


火球が唸るように回転し、

的を粉砕した。


「おおっ!!わたしもやってみよう」


って、私が置き去りにされている。


「結奈、どうややっているの」


「えっ?これ?これはね。私、生活魔法しかできないから」


結奈がそこまで言った時だった

ゆきえの悲鳴は聞こえた。

私たちがゆきえのところに行くと、ミリアさんときゃっ、きゃっと喜んでいる。


「当たった。当たった!!」


「どうしたの、ゆきえ」


「茉子、見て」


すると弓を引く力もないはずのゆきえが、弓を引いて、しかも、的に当てた。


「うそ?」


するとミリアさんが


「魔力操作がうまくいったな」


「はい」


一体何が起きているの?


そして、わたしは、

結奈にもう一度、

ファイヤーボールについて教えてもらった。


つまり、ファイヤーで小さな火の玉を作って、魔力を込める。そして、目標に向かって早く飛ばすイメージをするのだという。


どうやら私達が教わっている。異世界あるあるの詠唱魔法ではないらしい。ファイヤーは生活魔法なので、ファイヤーと念じる程度で作れる。

けどこれにどうやって魔力を込めるのかイメージできない。魔力を込めると念じても何も起きない。そして、横で見ていた結奈が


「筋肉に魔力を込める感じなんだけど」


ますますわからなくなって悩んでいるとミリアさんが


「結奈、それだとわからないから、魔力循環をして、魔力を感じさせてやんな。王城にいたんだろ。衛兵クラスの連中は、元々魔力が高いから魔力とは何かを教えないで、教科書通りの詠唱魔法しか教えなからな。魔力がどんなものかもわからないはずよ。」


「魔力循環?」


「とりあえず、やってみましょう」


結奈が私の両手を掴んだ。


「目を閉じて、魔力を流すから手からその流れを感じて」


しばらくすると細い流れが何か波動のように通っていくのが分かった。


「それが魔力よ。感じたものを全身で感じるよう。体の中を巡らせて」


魔力循環をめぐみ以外のみんなも同じようにした。その後だった。魔法攻撃のスピードと威力が上がり、

しかも、

無詠唱で発動できる。

そして、

魔力の減りが少ない。


「これが魔力操作よ」とミリアさんが微笑んだ。


そしてもう一つ、ガーフルフの特徴を教えてもらった。彼らは直感で動く、なので一つ目の攻撃を見て、次の動きをする。だから最初はわざと外す、しかも動いて欲しい方とは逆に撃つこと、それを数回繰り返したあと、次は外した同じ距離を反対側に外して撃つと、当たることが多いらしい。


そして、私は、結奈にある疑問をぶつけた。


「……ところで?」


「うん?」


「なんで結奈だけ、そんな簡単に出来るの?」


「え?」


結奈は首を傾げた。


「だって生活魔法って、毎日使うから」


結奈が不思議そうに首を傾げる。


《結論:主婦力おばさんりょくの差です》


「うるさいよ、ナビ子!!」


「え?」


わたし達は一斉に結奈を見る。


「……誰と話してるの?」


「え?」


結奈がきょとんとする。


「だから、誰?」


「えっと……」


結奈が困ったように視線を泳がせた。


《説明不能です》


「だから黙って!!」


「いや怖い怖い怖い!!」



そして私は、

初めて、

“戦い方”を理解した気がした。


こうして、私たちは、ガーウルフに“囲まれない方法”を手に入れた。


そして、ガーウルフ討伐は、見事成功したのだった。






読んで下さりありがとうございます。


・面白かった、楽しかった

・続きが気になる

と少しでも思ってくださった方は、画面下部をクリックして応援して下さると嬉しいです。

ブックマーク、大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ