第13話 「天ぷらとヲタ通」
~茉子Side~
王城の訓練場
覇気のない訓練、私自身もやりたくない。しかし、やらないと生きていけない。それが現実、もういやだ。真奈ちゃんと紗季ちゃんも同じだと思う。唯一の楽しみは実習訓練で結奈ちゃんのところに行くこと。はっきり言って、私、ここから逃げて結奈ちゃんのところに行きたいくらい。みんながキモデブという国府田くんがいても、そっちの方がいいと思っている。(さすがに、クミ君とは呼べない。キモイというより、結奈に悪いから…)
すると訓練が終わり、私たちに集合がかかった。
「明日、ガーウルフ討伐実習を行う」
衛兵長が私たちに向かって言った言葉がそれだった。来たか…それが本音。風間くんは、今度こそやるぞ!!と息巻いている。一方で謹慎が明けて、やつれて帰ってきた越智君やここにぎりぎり残っている男子たちの顔色は悪い。そうだよね。あんなバカの指示通り動いていたら、死ぬって思っていると思う。そして、風間君は、瑞樹に向かって、
「足を引っ張るなよ。女子たち」
瑞稀も呆れて、何も言わない。そんな反応を見て
「怖気づいて何も言えないか、ま…しっかり戦ってくれや」
瑞稀は怖気づいたのではなく、風間の言葉に呆れているんだよ。と心の中でつぶやいていると真奈ちゃんと紗季ちゃんが私の手をぎゅっとつかんだ
「茉子…」
「大丈夫っだって、この間も私たち無傷だったじゃん」
「そうだけど…」
今にも泣きそうな二人を私が抱きしめる。って、私だって泣きたいよ。そして、本音がポロリと出てしまった。
「お弁当、結奈ちゃんのだったら頑張れるのに…」
私が呟くと
「「わたしも…」」
二人も同時に呟いた。
「ふふふ…だったら、頑張って、また結奈のところ行こ」
「そうね。パンケーキ」
「パーンケーキ」
「もう…二人とも現金なんだから」
「「へへへ…」」
すると瑞稀が私のところにやってきた。
「ちょっといい?」
「あ‥うん」
すると3人とも来てというので3人で行くと。瑞稀と莉亜羅がいた。そして、私に向かって、
「お願いだ。次のガーウルフ討伐で指揮をとってくれ」
「へ?」
☆☆☆
~結奈Side~
ここはギルドの練習場
「ぐは…」
「遅いよ。今ので死んでいたよ」
ミリアさんの檄が飛ぶ。
「はい!!もう一度お願いします!!」
「結菜!!行くよ!!」
私は今、ミリアさんから戦闘スキルを教わっている。魔力も体力もない私、そんな私が使える戦闘スキル、それは、必要なところにその瞬間だけ魔力を使って、動きを早くしたり、筋肉を強化したりするスキル、これは、冒険者が身に着けるものだそうだ。だから、攻撃を受ける直前に当たるところに魔力を集めダメージを少なくすることもできる。けど、わたしはまだ未熟だから、ミリアさんのスピードに追い付けない。
「そこ!!結奈は、小さいんだからこういう時は、魔力を使って最速でしゃがむ。そうすると相手には消えたように見える。もう一度」
「はい!!」
言われて通りにやるが攻撃が入ってくる
「ぐは!!」
「遅い、それじゃあしゃがんでいるのが見えている」
「すみません!!」
きつい。痛い。逃げたい。けど、クミくんも頑張っていた。同じ練習場で、暇なときは、ここにきて、上のランクの冒険者と槍の稽古をしていた。クミくんも今の私同様、ぼろぼろになりながら、練習をしている。ある日、私は聞いたんだ
「クミくん。どうしてそこまでやるの?」
「俺弱いから…」
「え?」
「いつもミリア、フィリアに守られてばかりなんだ」
「でも」
「こんな俺でも…みんなを助けられるようになりたいんだ」
私は、クミくんに助けられてばかりいる。このままじゃだめだ。そう思った時、弓の才能があることを知って、弓を一生懸命に練習した。しかし、これだけじゃだめだ。相手が襲ってきたとき、私も戦えるようになりたい。ミリアさんやフィリアさんと肩を並べるようになりたい。
こうして、私も訓練を続けている。
もう一度!!」
ミリアの蹴りが飛ぶ。その瞬間。結奈の姿が、
スッ――
と沈んだ。
蹴りが髪を掠める。
ミリアが目を細めた。
「……今のは悪くない」
「え?」
「少しだけ、見えなくなった」
「えっ?ほんと」
「ええ」
「やったぁー!!」
☆☆☆
《クミがまたバカなことをしています》
ナビ子の声が私にも聞こえた。それは、訓練が終わって、ギルドのシャワーから出て、待合室に入った時だった。私の横には、ミリアさんがいたんだけど、この声にきょとんとしている。
「結奈、クミ、何かバカなことしているの?」
私が首を横に振ると
「そうみたいだね…」
《クミがラードを大きな個体のまま鍋にかけました》
「大変」
《このままでは爆発します。爆発まで、5、4、3》
すると共同キッチンの方でパン!!という音が鳴って、クミくんの間の抜けだ「うぁあああ」という悲鳴が聞こえてきた。
《ラードが爆発しました》
「は?」
私とミリアさんは慌てて、共同キッチンに行くとそこらへんがラードまみれになっていて、爆発に驚いたクミくんが、腰を抜かして、地面に座っていた。するとリリナさんが顔にいっぱい怒りマークを付けて怒鳴り込んできた。
「何やっているんですか。あ~あ!!こんなに散らかして、きれいに掃除しないと罰金よ。罰金」
ということで、私たちも掃除する羽目に
「クミくん、何していたの」
「ラードを油にして、揚げ物にしようと思って、鍋に入れて火にかけたらこうなった」
「もう…ラードは、こんな大きなまま火にかけたら当然爆発しますよ」
「え?そうなの」
「本当に何も知らないんだから」
「でも、揚げ物って食べたくね?」
《クミは全く反省していません。バカにつける薬はありません》
「うるせーー!!」
揚げ物か…でも、この世界のラードだとこてこてになるし、バターじゃ無理だし…と思っていると。やけどをしているクミ君を見たフィリアさんがヒールをかけていた。あれもできたらいいのに、少しうらやましんだけど。そうだ、油だ
「サラダ油の方がいいんですけどね」
するとフィリアさんが
「あぶら?油って言ったら、ランプ油くらいかしら」
「ランプ油?」
「あれは比較的安いわよ」
「食べられるんですか?」
「さあ…オイルシードを絞ってとる油だから…そうね。誰も食べないからわからないわ」
するとナビ子が
《オイルシード:地球でいうオリーブオイルの類似品・食用可能》
「ちょっと」
「まじ!!」
「そのランプ油って、エクスラバージンオイル?」
《地球ではそうよばれています》
私たちの顔がにやけてしまった。
《今度は結奈さんがおかしなことを考えています》
するとミリアが
「あ~あ…結奈までクミのバカが伝染ってしまった」
「伝染ってません」
《結奈が不治の病にかかりました》
「不治の病になんてなっていません」
《病名:クミ》
「おい!!」
「フィリアさん。ランプオイルはどこで買えるんですか?」
《やはり伝染っています。病名;クミ》
「おい!!」
私は早速、ランプオイルを買ってきて、小麦粉を水に溶かして、野菜とかをくぐらせて、揚げ物を作ってみた。
するとクミが
「うぉおお!!天ぷら!!天ぷらだ!!」
大喜びしている。しかし、天つゆはできない。お醤油がないから。残念だけど
「私が作った。だし汁につけるか、塩で食べてね」
「うまい!!」
「これ何、サクサクしている」
「脂っこくない。食感がサイコー…めっちゃお酒が欲しい」
私たちだけで試食しているとリリナさんが現れて、ぱくりと天ぷらを一口食べた。
「これはずるい…」
私は、更に天ぷらを揚げた。
熱した油の香りが広がる。
衣が、
ジュワァァァ……
と音を立てた。
オイルシード油特有の青い香りと、
揚がった衣の香ばしさ。
その瞬間。
ギルドの冒険者たちが一斉に振り向いた。
「な、なんだこの匂い……」
こうして、久しぶりにギルドで天ぷらを使った宴会が始まった。
☆☆☆
~茉子Side~
あ~あ~なんで私が、指揮をとらないといけないの?
ここは魔の森、結奈ときているときは楽しいけど、今はプレッシャーで胃が痛い。なぜって、私が女子の指揮を執ることになったからよ。ほんとに、瑞樹がとればいいのに
あほな男子たちは、相変わらず能天気にはしゃいで目的地に向かって歩いている。多分、脳が筋肉でできているに違いない。
一応、出発前、女子たちだけで、ミーティングをした。そして、男子が突撃しても私の指示があるまでは待機してと伝えた。いつもは風間についている彩音も素直に従っている。前回、相当怖い目にあったものだから、従っているようだ。
すると、目の前に一匹のガーウフルが現れた。すると、男子たちは案の定
「やっちまぇ~!!」と突撃していって、ガーウルフに囲まれてしまった。
「遠距離班、救護班、は木の上に、前衛は、ガーウルフと距離をとって待機。守備隊は、木を守るように待機」
遠距離班は、魔法攻撃できる女子
救護班は、戦力外の女子とヒールが使える女子(ただし、莉亜羅は攻撃力が高いので前衛)
守備隊は、遠距離攻撃ができない。攻撃力はあるけど、前衛ほど攻撃力がない女子
前衛は、戦闘力がある女子
私の指示にみんな準備をする。
「遠距離班、救護班、前衛、守備隊、の各部隊、準備ができました」
男子たちの悲鳴が聞こえだしている。男子たちを中心にガーウルフは取り囲んで、連携をして、攻撃を続けている。
「うぁあああ!!」
「遠距離班、手前の3匹のガーウルフに向かって、一斉攻撃」
「用意ができました」
「撃て!!」
ドン!!
一斉射撃された魔法攻撃、手前の3匹に直撃はできなくても、ケガをさせることができた。
「前衛!!手前の3匹を倒して、倒したらすぐに戻ってきて」
「遠距離班は、魔法攻撃準備!!」
「「了解!!」」
前衛部隊が前進し、3人一組でガーウルフを一匹づつ倒して、元の位置に戻ってきた。そこに隙ができて、男子たちが逃げ出してきた。それをガーウルフは、まとまって、追撃している。
「魔法攻撃準備できました」
「今よ!!目の前に突っ込んでくるガーウルフ向けて一斉攻撃!!ってーーー!!!」
どどーーん!!
「前衛は、各個撃破せよ」
「了解!!」
男子が私たちのところまで逃げてきた。すると木の上にいる。救護班に向かって怒鳴りつけた。
「おいそこで何やっている!!早く!!回復しろ!!」
「オレたちは、前で戦ってたんだ、はやくしろ!!」
しかし、戦闘は続いている。怪我したガーフルフとそれを討伐している瑞稀たちを避けて、一部のガーフルフが迫って来た。
「うぁああー!!来た!!」
「何、やっているんだ。早く魔法を撃て!!」
私は、後衛の守備隊
「抜刀!!攻撃準備」
「なにが抜刀だ!!後で覚えてろ!!」
「もう!!ダメだーー逃げろーー!!」
男子たちは私たちのところからも逃げ出したけど、それどころではない。更にガーフルフが迫って来ているのだ。
「魔法攻撃!!撃てーーー!!」
ズドン!!
ズドン!!
近距離での攻撃に、すばしっこいガーフルフも避け切れずに魔法攻撃を浴びる。
「守備隊!!斬りかかれ!!」
こうして、ガーフルフを討伐できたんだけど、討伐後の処理をしていると、男子たちがやってきて、
「怪我してんだよ。はやく治せ!!」
「こっちも怪我人がいて、手当中なので、後にして」
「なんだ、このやろー!!」
すると瑞稀が
「やめろ!!」
瑞稀には勝てないのだろう。その男子は、すみませんと逃げていった。
「茉子、こちらの治療はほぼ終わった。男子たちの治療に向かわせるがいいか」
「瑞稀がそう言うなら、いいです。あと、瑞稀も一緒に行ってください。今の男子たち、なにするかわからないので」
「そうだな」
こうして、討伐後の処理を終えた。私たちは、衛兵に討伐の証拠をみせていた。一方、前回同様、多くの負傷者を出した男子たちの成果は、ガーウルフ数匹だけだった。
風間は息を荒げながら、
「助けるのが遅ぇんだよ!!」
と怒鳴った。
しかし。
女子たちは誰も反論しなかった。
代わりに。
瑞稀が冷たい目で言った。
「先に突撃したのは、そっちでしょう」
その瞬間。
男子たちが黙る。
さらに茉子が心の中で、
――ああ。
もう無理だ。
私たち、完全に別のグループになっちゃった。
と思う。
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