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初期ポイントは「SSR執事」と「UR至高の安眠セット」に全ツッパしました。~防衛力ゼロから始まる、全自動タワーディフェンス迷宮運営~  作者: tky
第1章:爆誕!不労所得(という名の地獄)編

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第7話:定時アラームの増殖と、眩しすぎる侵入者

明日も0時に更新します

 ――カーン、コーン。


 どこからか聞こえる、清々しい朝の鐘の音。


『朝だァァァァァッ!! 邪悪なる魔王よ、俺の正義の剣の錆となるがいいィィィッ!!』


 そして、それに続く鼓膜を破るような大音声。


「……はいはい。おはようございます、勇者クン。今日も元気ねぇ」


 私は最高級の羽毛布団の中で、目をこすりながら小さくあくびをした。


 あれからさらに二週間。


 レオンと名乗るあの熱血勇者志願者は、本当に、文字通り「毎日」同じ時間にダンジョンへ突撃してくるようになっていた。


 最初の数日はストレスで死にそうだったが、人間の適応力とは恐ろしいものだ。


 毎日きっちり同じ時間に、同じテンションで怒鳴り込んでくる彼を、私はいつしか『非常に正確な目覚まし時計(スヌーズ機能なし)』として受け入れるようになっていた。


「主様、お目覚めですね。本日の起床時間は午前七時ジャスト。素晴らしい規則正しさです」


 枕元では、SSR万能執事の影山が、湯気を立てるコーヒーを片手に優雅に微笑んでいる。


「ええ。おかげで最近、肌の調子がいいわ」


 ポイントを稼ぐためには「起きている時間」が必要だ。


 レオンの定時襲撃のおかげで、私は無理やり叩き起こされ、彼が影山の『全自動消音防衛網(スライム沼&真空回廊)』に引っかかって外に放り出されるまでの数分間、極度のストレスを感じてポイントを爆発的に稼ぐ。


 そしてその後、二度寝をする。


 このサイクルが確立されてから、私のポイント残高は安定し、ダンジョンの防衛設備――というか「防音設備」は着実に強化されていた。


「さあ、今日の分のポイントも回収しましょうか。モニター出して、影山」


「畏まりました」


 空中に魔力映像のスクリーンが展開される。


 今日もまた、レオンがスライムに顔を覆われて無音でジタバタする間抜けな姿を見て、適度にストレスを発散(ポイント化)しよう。


 そう思って画面を見た、その時だった。


「……え? なにこれ、眩しっ!?」


 私は思わず目を覆った。


 薄暗いはずのダンジョンの入り口が、まるで真夏の太陽を持ち込んだかのように、暴力的なまでの純白の光に包まれていたのだ。


 目を細めて光の発生源を凝視すると、そこには見慣れた赤い髪の少年――レオンの後ろに、もう一人の人影があった。


 純白の法衣を身にまとい、銀色の長い髪を揺らす、いかにも神聖そうな美少女。


 彼女が掲げた錫杖から、目が潰れそうなほどの強烈な光が放たれていたのだ。


『浄化の光よ! 邪悪なる闇の迷宮を照らし出しなさい!』


 凛とした、しかし洞窟の中で酷く反響するソプラノボイスが響き渡る。


 その光が入り口の『沈黙の泥濘(スライム沼)』を照らすと、ジュゥゥゥッという音と共に、私がなけなしのポイントで買った防音スライムたちが浄化され、消滅していくではないか。


「あぁぁぁぁっ! 私の防音設備が溶けてるぅぅぅ! なによあの女! どこから湧いて出たの!?」


「服装から推測するに、神聖なる教会から派遣された『聖女』か、高位の神官でしょう。レオンの噂を聞きつけ、彼を支援するために合流したものと思われます」


 影山が冷静に分析する。


 冗談じゃない。


 ただでさえレオン一人でうるさいのに、その上、防音設備を壊して強烈な光を放つ追加メンバー(聖女)までやって来たというのか。


 安眠の敵が二倍になったのだ。


「止めさせて! 今すぐあのピカピカ光るのを止めさせて! 寝起きの目に悪すぎるし、防音スライムがなくなったらレオンの地声がダイレクトに響いてくるじゃない!」


「畏まりました。直ちに排除プロセスを――」


 影山が指を鳴らそうとした、その時。


 モニターの中から、予想外の音声が飛び込んできた。


『おい! 誰が手伝えと言った、教会の女!』


 レオンが、自分を助けてくれたはずの聖女に向かって、剣を突きつけて怒鳴り散らしていた。


『……え? 私は、この恐ろしい呪いの迷宮に単身で挑むあなたを助けるために、わざわざ王都から……』


 聖女は目を丸くして困惑している。


『ふざけるな! 俺は未来の勇者だ! 強大な魔王を前にして、多人数で押し寄せるなど騎士道に反する! 卑怯者のそしりを受けるくらいなら、一人で玉砕した方がマシだ!』


『なっ……!? あなた、馬鹿なのですか!? この迷宮の異常な魔力溜まりを感じないのですか! 音を奪い、呼吸を奪う、これは明らかに人の手には負えない高位悪魔の領域です! 一人で挑むなど、ただの自殺行為――』


『うるさァァァァァい!! 俺の戦いに水を差すなァァァァァ!!』


 レオンの特大の怒声が、聖女の言葉を遮った。


 そしてその怒声は、防音スライムが消滅したダンジョンの石壁を幾重にも反響し、玉座の間で丸まっている私の鼓膜を、物理的な凶器となって激しく殴りつけた。


「ぎゃあぁぁぁぁっ! 耳が! 耳がぁぁぁぁっ!」


 私はベッドの上で耳を押さえてのたうち回った。


 痛い。うるさい。そして眩しい。


「複数で攻めるのは卑怯とか、騎士道とか、そういうのは外でやってよぉぉぉ! なんで私の玄関先で仲間割れしてんのよぉぉぉ!」


 パニックに陥る私の横で、UR至高の安眠ベッドの赤いランプが、かつてないほどの猛スピードで点滅を始めた。


『警告! 警告! 致死レベルの騒音と異常発光を検知! マスターの精神崩壊の危機! 強制脱出シーケンス、最高出力で点火します!』


「待って! 走らないで! 今日はまだ心の準備が――」


 ドゴォォォォォォォォン!!!


 私の静止も虚しく、ベッドの底部から凄まじい青白い炎が噴き出した。


 しかも今回は「最高出力」だ。


 ベッドは時速百二十キロを超える猛烈なスピードで、玉座の間を壁走りのように暴走し始めた。


「あばばばばばばばばッ!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬッ!! 影山ァァァァ!! 早く、早くあいつらを黙らせてェェェェ!!」


 遠心力で眼球が飛び出しそうになりながら、私は執事に命乞いのような命令を叫んだ。


「……承知いたしました」


 玉座の間の中心。


 猛烈な風圧の中で微動だにしない影山が、かつてないほど冷たく、鋭い声で応えた。


「主様の安らかな朝を、下等な口論と不快な光で汚す愚か者共。まとめて『遮光』と『防音』の処置を施させていただきます」


 影山の切れ長の瞳が、血のような真紅に染まる。


 彼は両腕を優雅に広げ、交差させるように振り下ろした。


 その瞬間、ダンジョンの入り口の空間そのものが、真っ黒な闇に塗り潰されるのが見えた。


「とにかく、あのピカピカ光る女をピンポイントでどうにかしてぇぇぇぇ! 眩しいのよぉぉぉぉ!!」


「御意。ご要望通り、あの発光体から優先的に『お掃除』を開始いたします」


 暴走するベッドの上で気絶する寸前、私は影山のその言葉を聞いて、少しだけ安堵した。


 あの聖女さえいなくなれば、光は消えるし、防音スライムも復活する。


 仲間割れの騒音も終わるのだ。


 どうか、私の安眠を取り戻して。


 私は、前世で徹夜明けに神に祈った時と同じくらい切実な思いで、有能な悪魔の執事に全てを託したのだった。

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