第20話:天界の投げ銭祭りと、愛しき玩具(社畜)
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【神様視点】
天界――そこは、無限の光と退屈に満ちた、神々の箱庭。
雲よりも高い場所に浮遊する「至高の観覧席」では、数千の神々が巨大なクリスタル・モニターを囲み、下界の様子を熱狂的に眺めていた。
彼らにとって、数千年の寿命はあまりに長く、下界の文明の興亡すらも、ただの暇つぶしに過ぎない。
だが、最近、その神々の間で爆発的なブームを巻き起こしている「番組」があった。
「おお、始まったぞ! 本日のメインディッシュだ!」
モニターに映し出されているのは、薄暗いダンジョンの中で、ボロボロの赤いジャージを着て泣きながらルームランナーを回す一人の少女、佐藤凛の姿である。
「見ろ、あの『なんで私がこんな目に』という絶望に満ちた瞳! あれこそが至高の芸術だ!」
戦を司る軍神が、酒杯を片手に大笑いした。
「前世で社畜として死に、現世で安眠を求めて転生したというのに、結局、前世以上の重労働を強いられている……。この皮肉! この矛盾! 脚本家でも書けんぞ!」
「あはは! 影山とかいう元悪魔、いい仕事をするじゃない。あのドSな管理体制が、彼女の羞恥心と恐怖を限界まで引き出しているわ!」
美を司る女神が、扇子で口元を隠しながら優雅に笑う。
神々の前には、デジタルな数値が絶え間なく流れていた。
それは、凛が発する「負の感情エネルギー」がポイントへと変換される、天界公式の『投げ銭システム』のログである。
『【軍神】が100ポイントを投げ銭しました:もっと加速させろ!』
『【豊穣神】が50ポイントを投げ銭しました:汗が足りない、もっと走れ!』
『【美の女神】が200ポイントを投げ銭しました:あのジャージのダサさがたまらないわ』
神々が面白がってポイントを落とせば落とすほど、影山の手によってダンジョンの設備は「無駄に」豪華になり、防衛機能が強化される。
そして、その防衛機能を維持するために、凛はさらに働かされるという「永久機関(地獄)」が完成していた。
「……おや、次はラーメン王国の国王が、史上最大規模の大騒音パレードを引き連れて向かっているようですよ」
知恵を司る神が、眼鏡をクイッと上げながらモニターを指差した。
「平和を求めて向かうはずのパレードが、安眠を求める彼女にとっては、軍隊の侵攻以上の脅威になる……。これは面白い。ポイントを倍増させるチャンスです」
神々が一斉に沸き立った。
「おい、運営! 彼女がさらに絶望するように、新しい試練を追加しろ!」
「そうだ! あのフワフワした羊を守るために、彼女が自分の尊厳を投げ捨てるようなイベントを発生させるんだ!」
神々にとって、凛はもはや「救うべき哀れな魂」ではない。
最高に反応が面白い、愛すべき「玩具」なのだ。
彼らは凛が幸せになることを望んでいない。
彼女が安眠の一歩手前で、誰かに叩き起こされ、白目を剥いて走り出す瞬間の、あの「理不尽への抗議の叫び」を聞きたいだけなのだ。
「さあ、見せてくれ、佐藤凛! お前の『寝たい』という執念が、どこまで世界を引っかき回すのかを!」
天界に、神々の下卑た、しかし純粋な歓喜の声が響き渡る。
【凛視点】
その頃。
ダンジョンの中で、凛はふと空を見上げ、全身に鳥肌が立つのを感じた。
「……なんか今、ものすごく嫌な視線を感じたんだけど。誰かに笑われてる気がする……」
「主様、気のせいです。それよりも心拍数が下がっています。膝をもっと上げて!」
「影山ァァァァッ!!」
凛の絶叫が響くたび、天界のクリスタル・モニターには『ボーナス確定!』の文字が踊る。
神々の悪意に満ちた慈悲(投げ銭)は、彼女を永遠の安眠から遠ざけるために、今日も降り注いでいた。
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