表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初期ポイントは「SSR執事」と「UR至高の安眠セット」に全ツッパしました。~防衛力ゼロから始まる、全自動タワーディフェンス迷宮運営~  作者: tky
第1章:爆誕!不労所得(という名の地獄)編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/23

第12話:ラーメン王国の聖戦と、恐怖のチキンレース

明日も0時に更新します

 ――運命の正午が、刻一刻と近づいていた。


「影山……もう、限界……。一ミリも、動きたくない……」


 私は、UR至高の安眠ベッドの上で、抜け殻のような状態で白目を剥いていた。


 あれから丸一日。


 私は影山が用意した「地獄のポイント稼ぎ・VRブートキャンプ」をノンストップで叩き込まれていた。


 断崖絶壁のロープ渡りから始まり、巨大な毒グモに追いかけられる迷路、さらには「前世の未払い残業代が全て消滅する通帳」を見せ続けられるという精神的ブラクラまで。


 私の生命エネルギーは、恐怖と怒りと絶望によって限界まで搾り取られ、ポイント通帳の数字は、ついに目標の三千ポイントを突破していた。


「お見事です、主様。その不屈の社畜精神……いえ、安眠への執念、感服いたしました。これより、全ポイントを投入し、外壁に『重層式・防振防音結界』を展開いたします」


 影山が指を鳴らした瞬間。


 ダンジョン全体が、まるで巨大な繭に包まれるように、鈍い銀色の魔力膜に覆われた。


 これだ。


 これさえあれば、外で何が起きようと、私の部屋には図書館以上の静寂が保たれるはず。


「ふふ……ふふふ……。これで勝ったわ。ラーメン王国だか何だか知らないけど、私の眠りを妨げるものは何一つ――」


 その時だった。


 ズゥゥゥゥゥゥン……。


 結界を透過して、微かな、しかし腹の底に響くような重低音が届いた。


「……え? 今、揺れた? 影山、三千ポイントも使ったのに揺れたわよ!?」


「主様、モニターをご覧ください。敵の攻撃は、我々の予想を遥かに上回る『騒々しさ』でした」


 影山が映し出した外部映像を見て、私は絶句した。


 森を埋め尽くす「ラーメン王国」の軍勢。


 彼らは、巨大な攻城魔導砲を何門も並べ、数千人の魔術師が『増幅』の魔法陣を展開して、一斉に呪文を詠唱していたのだ。


『邪悪なる虚無よ! 光の裁きを受けよ!』


『全軍、構え! 聖戦の火を放てェェェッ!!』


 ガレウス将軍の号令と共に、天を焦がすほどの極大魔法が、私のダンジョンに向かって撃ち放たれた。


 ドゴォォォォォォン!!


 魔導砲と極大魔法の着弾。


 その凄まじい振動が、三千ポイントの結界をミシミシと軋ませる。


「ちょ、ちょっと! 結界が、結界が悲鳴を上げてるじゃない!」


「王国軍の総攻撃です。彼らの放つ物理・魔力的エネルギーは、結界の許容量をギリギリで超えようとしています。このままでは、あと数分で第一層が破られます」


 ピーーーッ、ピーーーッ。


 私の枕が、不吉な赤い光を放ちながら警告音を鳴らし始めた。


『警告。外部騒音が規定値を突破。マスターの睡眠環境が著しく損なわれています。強制脱出モード、レベルMAX……点火まで、カウントダウン開始』


「やめてぇぇぇぇ! 走らないで! カウントダウンしないで!」


 私は必死で枕を叩いて止めようとしたが、警告音は止まらない。


 外では五千人の軍勢が、全力で私のダンジョンを叩き壊そうとしている。


 もし結界が破られれば、あの騒音が直接この部屋に流れ込む。


 そうなれば、私のベッドは時速二百キロでこの岩山を突き破り、私は永遠の眠り(物理)につくことになる。


「影山! どうにかして! 結界を補強してよ!」


「……主様。もはやVRでは、結界の修復速度が追いつきません。今の倍、追加で三千ポイントを数分で生成する必要があります」


 影山が、かつてないほど真剣な、しかしどこか悪魔的な光を宿した目で私を見た。


「そんなの、無理よ! もうVRはたくさん!」


「ええ。ですから、VRではありません。現実の『死の恐怖』をご提供いたします」


「……は?」


 影山は、私の返事を待たずに、白手袋の指をパチンと鳴らした。


『強制脱出モードのセーフティを解除。手動オーバーライドを受け付けました。これより、室内限定での緊急機動を開始します』


 枕の音声アナウンスが響いた直後。


 ドゴォォォォォォォォン!!!


 私のベッドの底部から凄まじい青白い炎が噴き出し、ロケットスタートを切った。


「な、なになになに!? 何これぇぇぇぇ!?」


「結界内での、時速百五十キロによる『反復横跳び』です。壁に激突する寸前でわたくしが強引に弾き返しますので、主様は『壁に激突して死ぬ』という究極の恐怖を、休むことなく味わい続けてください!」


 ギュイィィィィィン!!


 ベッドは猛烈なスピードで壁に向かって突進し、激突する数ミリ手前で、影山の見えない力によって弾き返され、逆側の壁へとすっ飛んでいく。


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!! 死ぬ死ぬ死ぬ! ぶつかるぅぅぅ!!」


 右へ、左へ。


 時速百五十キロのベッドの上で、私は本物の絶叫を上げた。


 遠心力で内臓が偏り、三半規管が崩壊し、壁が目の前に迫るたびに寿命が十年縮むような錯覚に陥る。


「素晴らしい! ポイントの生成速度がかつてない数値を叩き出しております!」


「影山、あんた後で絶対にクビにするからぁぁぁぁ!!」


 私は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、外の王国軍による魔導砲の斉射と、内側の執事によるチキンレースという、二つの地獄の狭間で絶叫し続けた。


 私の安眠を守るための戦いは、私の精神と肉体を限界まで追い詰める、史上最悪の防衛戦へと変貌を遂げていたのだった。

高評価とブックマークをよろしくお願いします。

コメントへの返信はしないと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ