第17話 三ヶ月後
三ヶ月が経った。
村は変わっていた。
最初の五十人から、二百人を超えるようになっていた。家族が生き返り、その家族がまた家族を呼んだ。村は広がった。建物が増えた。
でも何かが、ずっとおかしかった。
◇◇◇
夜、カイとマイは村を見下ろせる丘に座っていた。
明かりが増えていた。人が増えた証拠だった。でも声のトーンが変わっていた。
「状況を確認しよう」とカイが言った。
マイは膝を抱えた。
「まず、家族を生き返らせたら、家族同士で固まり始めた」
「族化だな」
「そういうんだね。最初はよかった。助け合ってたし、狩りも効率よくなった。でも」
「でも?」
「うちの族の方が魔石を多く稼いでる、って言い始めた。だから発言権があるって」
「権力争いか」
「うん」マイが言った。「で、魔石の多い族が、少ない族の狩り場を奪い始めた。狩り場の取り合いになった」
「それが一ヶ月前か」
「うん。あたし、狩り場を均等に割り振った。これはここの族の場所、って決めた」
「それで収まったか?」
「一週間だけ」マイが言った。「今度は、スキルの問題が出てきた」
「スキルの?」
「氷弾と回復魔法だけじゃ、狩り以外のことができない。農業したい人が出てきた。建物を作りたい人も。でもスキルがないからできない。だからあたしにスキルをよこせって言い始めた」
「それが今の状態か」
「うん」マイは丘の下を見た。「族によって、スキルが多い少ない、で力の差が出てる。少ない族が不満を持ってる。多い族は手放したくないから強硬になってる」
カイは黙って聞いていた。
「あたし、毎日誰かの話を聞いてる」マイが続けた。「でも決めるたびに、別の問題が出てくる」
「疲れたか」
「うん」マイが素直に答えた。「正直、疲れた」
風が吹いた。
「あたし、なんか根本的に間違えてる気がする」
「どこが?」
「わからない。でも何かが違う」
カイは空を見た。
「欲を持った人間に、欲で動かそうとしてるからじゃないか」
マイが顔を上げた。
「欲を出させたら、欲が止まらなくなる。ご褒美を出せば出すほど、もっと欲しがる」
「じゃあどうすれば」
カイは答えなかった。
村の方から、言い争う声が聞こえた。
「スミレはなんて言ってる?」とカイが聞いた。
「思い出のある人の方が穏やかだって、前に言ってた」マイが言った。「でも思い出だけじゃ動かなかった」
「動かす必要があるのか」
マイが止まった。
「え?」
「欲で動かすんじゃなくて、別の方向があるんじゃないか」
二人はそれから長い時間、話し合った。
答えにたどり着いたのは、夜が深くなった頃だった。
マイが目を閉じた。何かを願った。
村の声が、静かになっていった。
カイは村を見ていた。
「うまくいってる?」
「うん」とマイが言った。「たぶん、これでいい」
風が吹いた。
村が、静かだった。




