表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレな世界の少女を救う話  作者: やまし
第三部 国造り
26/31

第15話 停滞

 暴動から三日が経った。


 村は静かだった。静かすぎた。


 朝になると転生者たちは狩りに出た。でも戻ってくると、それぞれの部屋に引きこもった。酒場に集まっても、誰も話さなかった。思い出の品を眺めていた。


 スミレがカイのところに来た。


「みんな、生きることに疲れてきてる気がします」


「そうか」


「狩りには行く。魔石も稼いでる。でも目が死んでる人が増えてる」


 カイは広場を見た。ベンチに座ったまま動かない男がいた。アルバムを膝の上に置いて、空を見ていた。


「話しかけてみるか」


「してます。でもあたしには限界があって」スミレが言った。「看護師って、体を治すことはできても、生きる意味は与えられないから」


 カイは何も言えなかった。


◇◇◇


 その夜、カイは村の外れで願いの実験をしていた。


 制限解除後、初めて一人でやってみた。


 石を浮かせた。木を成長させた。水を出した。風を起こした。


 なんでも叶った。


 マイが来た。


「何してるの」


「実験だ」


 マイが隣に座った。


「どう?」


「すごいな」カイが言った。「なんでもできる」


「でしょ」


「これは社会が混乱するわけだ」カイが言った。「みんながこれを使えたら、争いが止まらない」


「だから制限してる」


「なるほどな」


 しばらく沈黙が続いた。


「一個だけ、叶わなかったことがある」とカイが言った。


「なに?」


「時間を巻き戻す願い」


 マイは少し黙った。


「無理みたい」


「なんで?」


「パパが政府の人が研究してた結果を教えてくれた。時間っていうのは、因果の積み重ねの結果なのだろうって。起きたことは起きたこと。なかったことにはできない、って」


「そうか」


「うん」マイが言った。「あたしも試したことある。ママが、その前の状態に戻せないかって」


 カイは何も言わなかった。


「無理だった。起きたことは起きたことだから」


 風が吹いた。


「でも」マイが続けた。「だから今があるって、パパは言ってた」


「そうだな」


◇◇◇


 翌日、マイはスミレを呼んだ。


「みんな、どんな感じ?」


「生きることの意味を探してる気がします」スミレが答えた。「思い出の品を持ち帰ってから、余計に考えてる」


「思い出」マイが繰り返した。


「家族の写真を毎日見てる人がいます。愛車のキーを握ったまま寝てる人もいる」スミレが言った。「でも不思議なのが、そういう人の方が、落ち着いてる気がするんです」


 マイは少し黙った。


「思い出のある人の方が、落ち着いてる?」


「欲しいものとか、やりたいことより、思い出の方が、人を安定させてる気がして」


 マイは広場を見た。


 アルバムを眺めている男がいた。目が穏やかだった。三日前とは違う顔だった。


「そっか」とマイが小さく言った。


 スミレは気づかなかった。でもカイは見ていた。


 マイの中で何かが動いた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ