第14話 暴動
「魔王を出せ」
男が叫んだ。広場がざわめいた。
カイは動かなかった。
「俺たちは生き返らされて、理由も聞かされないまま狩りをさせられてる。魔王に直接文句を言う権利がある」
「落ち着いてくれ」とカイが言った。
「落ち着けるか」
別の男が前に出た。また別の男も。気づけばカイを囲む形になっていた。
誰かが叫んだ。
「カイは魔王の犬だ」
どっと声が上がった。押し合いになった。カイがよろけた。誰かに肩を掴まれた。振り払おうとした。
その瞬間、氷弾が飛んだ。
当てるつもりはなかったと思う。もみくちゃの中で、誰かが魔法を暴発させた。
カイの脇腹に当たった。
どっと倒れた。
広場が静まり返った。
誰も動かなかった。カイが地面に手をついていた。息が荒かった。脇腹を押さえていた。血が出ていた。
「カイ」
マイが建物の影から飛び出した。
誰かが悲鳴を上げた。マイの目が変わっていた。
「触らないで」
声が低かった。広場の空気が変わった。風が止まった。
マイがカイの隣に膝をついた。カイの顔を見た。
「大丈夫?」
「平気だ」
「平気じゃない」
マイが目を閉じた。
次の瞬間、カイの傷が光った。キュアだけじゃ足りなかった。マイが何かを願っていた。傷が塞がっていった。
マイが立ち上がった。広場を見渡した。
五十人が黙って立っていた。
「あたしの話を聞いて」
誰も動かなかった。
「あたしのせいで、みんな死んだ。それは本当のこと。ごめんなさい」
静寂が続いた。
「でも、あたしはみんなに生き返ってほしかった。それも本当のこと」
男が一人、地面を見た。
「カイは悪くない。カイはあたしのために動いてくれてるわけじゃない。みんなのために動いてる」
マイの声は震えていなかった。
「文句があるなら、あたしに言って。カイに当てないで」
誰かが泣き始めた。
スミレが人混みの中に入っていった。さっきカイに当てた男の隣に立った。その男は両手で顔を覆っていた。
◇◇◇
夜、カイとマイは二人だった。
「痛い?」
「もう平気だ」
「ごめんね」
「マイが謝ることじゃない」
「でも」
「みんな怖かっただけだ」とカイが言った。「自分がどうなるかわからなくて、怒鳴るしかなかった」
マイが顔を上げた。
「カイの魔法の制限。全部外す」
「なんで」
「カイがいないと困る場面が、また出てくる。その時に備えたい」
カイは少し考えた。
「わかった」
マイが目を閉じた。
カイの中で、何かが変わった気がした。
「これでなんでも願える」とマイが言った。「あたしと同じ。あたしの願いと矛盾しなければ」
「ありがとう」
マイは少し間を置いた。
「カイ、いなくならないでね」
カイは答えなかった。
夜が続いていた。




