第10話 数ヶ月後
その後の狩りは順調とはいえなかった。だけど少しずつ上達していった。部屋から出てこなかった2人も翌日からは参加した。
スミレは最初の狩りから戻った翌日、また山に入った。その次の日も。一週間後には、ケンジより手際が良くなっていた。
そして転生者が増えていった。
最初の四人から始まって、一週間で十人、一ヶ月で五十人になった。カイが説明して、マイが転生させた。毎朝、広場で同じことを繰り返した。
◇◇◇
村が賑やかになっていった。
朝になると転生者たちが山に向かった。夕方には魔石を持って戻ってきた。酒場で食事をした。食べなくても平気なはずなのに、食べることを選んだ。
カイがそれを見て、少し安心した。
マイは毎日転生作業をして、毎日世界の設定を調整した。疲れた顔をしていた。でも聞くと「大丈夫」と言った。
◇◇◇
三ヶ月が経った頃だった。
スミレがカイのところに来た。手に何かを持っていた。
「これ、山で見つけました」
差し出したのは、潰れた空き缶だった。
見覚えのあるデザインだった。日本語で書いてあった。カイはそれを受け取って、しばらく黙った。
「缶コーヒーですよね」とスミレが言った。「ファンタジーの世界に、缶コーヒーはないはずです」
カイは何も言えなかった。
「他にも見つけました」スミレが続けた。「山の奥に、コンクリートの構造物が残ってる。道路標識も。森に飲み込まれてるけど、確かにある」
カイは空き缶を見ていた。
「説明してもらえますか」
◇◇◇
広場に座った。
夕日が村に差し込んでいた。
「ここは未来の日本だ」とカイが言った。「二年前、日本から全員が消えた」
スミレは黙って聞いていた。
「魔王は、その原因に関わってる。悪意はなかった。でもそうなった」
スミレは空き缶を見ていた。それから空を見た。
「みんなに話しますか」
「ああ」
「怒る人もいると思います」
「そうだろうな」
「わたしは怒らないです」スミレが言った。「生き返ってるから。それだけで十分だと思う」




