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テンプレな世界の少女を救う話  作者: やまし
第三部 国造り
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第9話 はじめての狩り

翌朝、カイはスミレとケンジを連れて山に入った。


 前日の夜のうちに、カイはくくり罠を三か所に仕掛けていた。獣道を探して、足跡を確認して、ワイヤーを地面に仕込む。父親に何度も見せてもらった手順だった。やってみると、体が覚えていた。


「罠ってこんな感じなんですね」とケンジが言った。「全然わからなかった」


「慣れれば見える。獣道の見つけ方から覚えた方がいい」


 スミレは黙ってカイの動きを見ていた。


 最初の罠は空だった。


 二番目も空だった。


 三番目に向かう途中、カイが手を上げた。二人が止まった。


 罠の先に、鹿がいた。


 後ろ足をくくられて、暴れていた。若いオスだった。角がまだ細かった。


 スミレが息を飲んだ。


「あれを、殺すんですか」


「ああ」


「暴れてる」


「疲れるまで待つ」


 三人は離れた場所で待った。鹿は暴れ続けた。十分ほど経って、動きが小さくなった。


「行くぞ」


 カイが近づいた。スミレとケンジも後に続いた。

 

 鹿がまた暴れた。カイは慌てなかった。距離を保ちながら、ケンジに向いた。


「氷弾で首を狙ってみろ。当たらなくてもいい、まず試せ」


 ケンジが手を向けた。緊張しているのが見えた。


「氷弾」


 弾が飛んだ。鹿の肩に当たった。鹿が激しく暴れた。


「外れた」


「わかってる。下がってろ」


 カイが前に出た。鹿が暴れる中、一瞬の隙を見て、ナイフを首筋に当てた。


 鹿が倒れた。


 静かになった。


 ケンジが少し青い顔をしていた。スミレは鹿を見ていた。表情が読めなかった。


「大丈夫か」とカイが聞いた。


「はい」とスミレが答えた。「続けましょう」


「次は血抜きだ」


 カイがナイフで喉元を切った。血が地面に流れた。ケンジが目を逸らした。スミレは見ていた。


「血を抜かないと肉が傷む。猟師の基本だ」


「わかりました」とスミレが言った。「次は手伝います」


「最初は見るだけでいい」


「いえ」スミレが言った。「看護師は見てるだけじゃなくて、やることで覚えるんです」


 カイは少し止まった。それから頷いた。


「じゃあ、やってみろか」


 解体が終わったのは、一時間後だった。


 スミレの手が血で汚れていた。スミレはそれを川の水で洗いながら、黙っていた。


「大丈夫か」とカイが聞いた。


「さっきと同じ答えになります」


「そうか」


 しばらく沈黙が続いた。

 

「命をもらいましたね」とスミレが言った。


「ああ」


「慣れなくていい、って昨日言いましたよね」


「言った」


「あたし、多分慣れないと思います」スミレが言った。「でもやれると思います」


 カイは何も言わなかった。


「魔石、取りましたか」とスミレが聞いた。


「ああ」カイが手のひらを開いた。薄く光る石が一つ、乗っていた。「これがここでの稼ぎだ」


 スミレは魔石を見た。それから山を見た。


「もう一か所、罠を見に行きましょう」


 立ち上がった。


 ケンジがまだ少し青い顔のまま、後に続いた

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