第9話 はじめての狩り
翌朝、カイはスミレとケンジを連れて山に入った。
前日の夜のうちに、カイはくくり罠を三か所に仕掛けていた。獣道を探して、足跡を確認して、ワイヤーを地面に仕込む。父親に何度も見せてもらった手順だった。やってみると、体が覚えていた。
「罠ってこんな感じなんですね」とケンジが言った。「全然わからなかった」
「慣れれば見える。獣道の見つけ方から覚えた方がいい」
スミレは黙ってカイの動きを見ていた。
最初の罠は空だった。
二番目も空だった。
三番目に向かう途中、カイが手を上げた。二人が止まった。
罠の先に、鹿がいた。
後ろ足をくくられて、暴れていた。若いオスだった。角がまだ細かった。
スミレが息を飲んだ。
「あれを、殺すんですか」
「ああ」
「暴れてる」
「疲れるまで待つ」
三人は離れた場所で待った。鹿は暴れ続けた。十分ほど経って、動きが小さくなった。
「行くぞ」
カイが近づいた。スミレとケンジも後に続いた。
鹿がまた暴れた。カイは慌てなかった。距離を保ちながら、ケンジに向いた。
「氷弾で首を狙ってみろ。当たらなくてもいい、まず試せ」
ケンジが手を向けた。緊張しているのが見えた。
「氷弾」
弾が飛んだ。鹿の肩に当たった。鹿が激しく暴れた。
「外れた」
「わかってる。下がってろ」
カイが前に出た。鹿が暴れる中、一瞬の隙を見て、ナイフを首筋に当てた。
鹿が倒れた。
静かになった。
ケンジが少し青い顔をしていた。スミレは鹿を見ていた。表情が読めなかった。
「大丈夫か」とカイが聞いた。
「はい」とスミレが答えた。「続けましょう」
「次は血抜きだ」
カイがナイフで喉元を切った。血が地面に流れた。ケンジが目を逸らした。スミレは見ていた。
「血を抜かないと肉が傷む。猟師の基本だ」
「わかりました」とスミレが言った。「次は手伝います」
「最初は見るだけでいい」
「いえ」スミレが言った。「看護師は見てるだけじゃなくて、やることで覚えるんです」
カイは少し止まった。それから頷いた。
「じゃあ、やってみろか」
解体が終わったのは、一時間後だった。
スミレの手が血で汚れていた。スミレはそれを川の水で洗いながら、黙っていた。
「大丈夫か」とカイが聞いた。
「さっきと同じ答えになります」
「そうか」
しばらく沈黙が続いた。
「命をもらいましたね」とスミレが言った。
「ああ」
「慣れなくていい、って昨日言いましたよね」
「言った」
「あたし、多分慣れないと思います」スミレが言った。「でもやれると思います」
カイは何も言わなかった。
「魔石、取りましたか」とスミレが聞いた。
「ああ」カイが手のひらを開いた。薄く光る石が一つ、乗っていた。「これがここでの稼ぎだ」
スミレは魔石を見た。それから山を見た。
「もう一か所、罠を見に行きましょう」
立ち上がった。
ケンジがまだ少し青い顔のまま、後に続いた




