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テンプレな世界の少女を救う話  作者: やまし
第三部 国造り
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第6話 明日の朝


 ダンジョンから戻った時、日はまだ高かった。


 村の広場に座って、二人は話し合った。マイが石板を膝の上に置いて、カイが隣に立っていた。


「社会の構成を決めよう」とカイが言った。


「うん」


「目標は、転生した人達が自立して生活できること。マイが直接管理しなくても回るように」


 マイは石板に目を落としながら頷いた。


「転生した人達への説明はこうしよう。ここは魔王の国だ、と。魔王が君たちを生き返らせた。当分の衣食住は保証する。でも、自分で稼がなきゃいけない」


「稼ぐって、どうやって?」


「狩りだ。今は動物が溢れてる。その動物を狩ってもらう。動物から魔石が取れる。魔石をこの国の通貨にしよう」


 マイが顔を上げた。


「パパが言ってた。政府も魔石本位制みたいなものを検討してたって」


「なら話が早い」カイが頷いた。「魔石を集めれば食料が買える。そういう仕組みにする」


 しばらく沈黙が続いた。


「野菜や米ってどうしてたんだ?」


「NPCの人達に作らせてる。パパがそうしてたから、ずっと」


 カイは黙った。


 村の畑が見えた。整然と並んだ野菜が、風に揺れていた。誰も食べない野菜が。


「食料が要るなら、新しく転生した人達にも必要だよな」


「必要ないと思うよ」


「なんで?」


「だって、あの人達の身体、食べなくて平気だもん」


 カイが止まった。


「食べなくて、平気?」


「うん。兵隊さんになるために作られたボディだから、魔力さえ足りていれば動くようになってる。効率的なんだって」


 カイはしばらく黙っていた。村の畑を見た。


「でも酒場はあるよな。あの時、人がいた」


「あれは盛り上げるために配置してるだけ。実際には飲み食いしてないよ」


「そこまでこだわってたのか」カイが少し笑った。「でも、料理は作れるわけだ」


「うん。料理専用の人がいる」


「なら、ちゃんとした食事をするべきだな。睡眠も」


 マイが首を傾げた。


「なんで? 食べなくて平気なのに」


「平気かどうかの話じゃない」カイが言った。「食べることには意味がある。一緒に食卓を囲む、誰かのために料理する、季節の食べ物を楽しむ。そういうことが、人間を人間にするんだと思う」


 マイはしばらく考えた。


「そうなんだね」


「俺の父さんが猟師だったから、そういうことをよく言ってた」


 マイは何も言わなかった。カイも何も言わなかった。


「なら野菜や米のNPC増やそうか」


「そのうち農業する人も増やした方がいい。しばらくは足りそうか?」


「うん、しばらくなら」


◇◇◇


「じゃあとりあえず、4人転生させてみようか」


 マイが石板から顔を上げた。


「カイのお父さん、呼ぶ?」


 カイは少し止まった。


「いや、やめとく。落ち着いたらにするよ」


 マイは何も言わなかった。ただ頷いた。


「ランダムで、若い人がいいな」


「うん。スキルどうする?」


「氷魔法ってどんなの?」


「今作ってるのは氷の弾丸を飛ばすやつ。射程30メートルくらい」


「獣は倒せるか?」


「うん」


「じゃあそれと回復魔法でいいかな」


「選ばせなくていいの?」


「ファイア選んで山火事にでもなったら困るしな」


 マイが笑った。


「なるほどね」


「明日の朝、よろしく」


 マイが頷いた。


 広場に夕日が差し込んできた。NPCの村人が動き始めた。誰も食べないはずの夕食の準備が、静かに始まっていた。


 カイはそれを見ながら思った。


 明日から、この村が変わる。

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