三人の母親
人物紹介
【クロちゃん】(1)
『雲の上』で初登場したチオニスの家にいる人物(?)で、チオニスの秘密を知っている。
体を自由に出入りして、チオニスの体の中から喋りかける。
【フレイジス・コルエス】
「……ここで良いんだよな?」
チオニスから言われた場所に俺は待機している。
今日はチオニスが俺の家に来るらしいが、場所を教えるため少し離れた場所に待ち合わせしている。
「一体何故だ?」
何故今になって、俺の家に行きたいと言ったのだろうか?
それに対して母は……
「良いじゃない、私も気になってたもの。むしろお泊りでもいいんじゃないかしら?」
意外とノリノリだった。
お泊りは嫌だが、俺もチオニスが家に来ることは嫌ではない。
ただ、何のために来るかは分からない。来る条件として……
(今度お前の家にも行かせろ。)
どうやってあの強さを身に着けてるのか気になって俺はそう言った。
チオニスは……少し悩みながらも了承してくれた。
「そろそろか……」
そんな時だった。
「あれは……」
人が全くいない細道に、ベリリフィアとタンソフィアが入っていくのが見えた。
一体何だ?あんな所に何かあるのか?
気になった俺は二人を覗いた。すると……
「う……うぅ……!」
「大丈夫……大丈夫だから……あと3か月だから!」
タンソフィアが泣き出し、ベリリフィアが慰めていた。
どうしたんだ?いつも無表情で無口で、そっくりな二人に違いが見える。
(タッ!)
「……誰か見てる。」
足音を大きく立ててしまい、二人に見つかった。
「……見てた?」
タンソフィアに合わせるようにベリリフィアが泣き顔を作っている。
今までタンソフィアがベリリフィアに合わせてるのではという違和感があったが……
今はベリリフィアがタンソフィアに合わせている。
「あぁ、悪いな。見ていた。あと3か月とは一体……?」
「……そこまで聞いてたんだ。」
「私達はあと3か月で16歳になって、ギルドに入る。」
無口な二人が淡々と説明する。
「それで……私たちは……あの呪縛から解放される!」
「呪縛……とは?」
「この事は誰にも言わないで。」
「私達は……」
「「《似すぎた双子》でいなきゃいけないの!」」
「似すぎた双子……?互いの個性を捨てて同じような人間であるという事か?」
それが……似てるじゃなく似せてるという違和感を感じた理由か……?
「私たちの母親は、”双子”を育てている事を誇りに思ってる。」
「近所の人に”この双子すっごい似てて可愛いねぇ”って言われてからだった、母親が変わったのは。」
「母親が……?」
「母親は、事あるごとに”似ている”事を強要してくる……」
「違うところが出来れば沢山酷い事を言われて……殴りかかって来る事もあった。」
そんな親が……いるのか……?
「入学した時に私がお姉ちゃんより結果が劣って、順位差が出来た日は、凄く暴れてた。”障壁魔法”を遺伝してたから怪我はしてないけど……」
タンソフィアがそう説明する。
「私がお姉ちゃんに合わせられないせいなのに……私達の間に挟まったパンチズを憎んじゃった。」
「タンソフィアは悪くないから!あの時私がタンソフィアに合わせれば良かった!」
「でも……順位変動戦で……スーギールも間に挟まってきて……私がパンチズに負けたから!」
俺の母がどれ程優しかったか身に染みる。
俺の個性や夢、目標を肯定してくれて、叶えるために協力してくれて……今の俺がいる。
「反発したら危険な事をして来るし……」
「家出したいけど、私達だけじゃ稼げないし生きていけない。普通就職は18歳からで、ギルドは16歳にならないと……あと3か月でギルドに……」
”育ててやってるんだから言う事を聞け”というタイプの母親か……
16歳から大人ではあるものの、18歳にならないと就職してお金を稼げない。これは世界共通だ。
「……ごめん。関係ないのに、こんなに話しちゃって。」
「誰かに言えてスッキリした。ありがとう。」
「……あぁ。これは俺達の秘密にする。」
「何かお礼しなきゃね。」
「他の誰にも言わないって約束してくれたら、私達に出来る事は何でもする。」
「模擬戦でもデートでも良い。何ならさんぴ……」
「じゃあ、今度俺……いや、俺達に勉強を教えてくれ。」
何かベリリフィアが言いかけていたが、それを遮るように思いついた事を頼んだ。
「……そんなんで、良いの?」
「どっちも筆記は100点だからな。教えてくれると助かる。」
「「分かった……!」」
了承した二人。
タンソフィアは涙を拭いた後、ベリリフィアと共に去っていった。
「……色々な母親がいるんだな。」
「そうだね。」
「ああ、そう……って、は!?」
俺の背後に、いつの間にかチオニスが立っていた。
「お前……二人の話を聞いてたのか……!?」
「フレイジスが覗き見してるなーって思って、空から様子を見てたんだけど……あの二人の母親ってヤバい位に毒親だね。」
「……チオニス、お前はあの双子の姉妹を助けた方が良いと思うか?」
「……この国で認められてる人殺しは、自分を殺そうとした人を殺す場合だけだよ。」
「……あの二人の母親相手に説得しようとしても無駄だと思ってるのか?」
「あと3カ月なんだし、僕らは別に……」
「母親を殺す事以外にも、二人を助ける方法があるなら、俺は協力したい……!」
「お人好しだね。僕は知らないっていう事になってるから無理だけど。」
「お人好しか……王女様であるマンダリンを助けたお前もそうだけどな。」
「国の為だよ。」
試験の日も言ってたが何だよ国の為って……
「とりあえずフレイジスの家に案内してよ。」
「あぁ。」
俺はチオニスへ家を案内した。
「なぁチオニス。そういえば”幼い時に火事で両親を亡くした”って言ってたよな。その後ちゃんと誰かに拾われたのか?」
俺の母やベリリフィア達の母親の話をしていて、疑問に思ったことを聞いた。
「……いや、僕は自分一人の力で……いや、僕たちは頑張って生きてきたよ。」
「……ん?僕たち?」
チオニスの両親は火事で死んで……兄弟姉妹がいたのか?
「僕の家に今後来るんでしょ?その時に言う。」
「あ、あぁ……」
そんな事を話してるうちに、俺達は目的地である俺の家に着いた。
【チオニス・フエーラー】
「……。」
今度フレイジスに家に来てもいいと言ってしまった。
クロちゃんの事……どう説明しよう……
(ガチャ!)
「あ、いらっしゃいチオニス君……髪を染めてるのね。」
「…………っ!?」
フレイジスのお母さん……どこかで見覚えが……
「……何でチオニスの顔をジロジロ見てるんだ?」
「……あ!ごめんなさいねぇ、知り合いの男に似てたから……」
「っ!?」
「……チオニス、どうした?そんな驚いた顔をして。」
……何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で意味が分からない意味が分からない。
どうして……フレイジスの親が……コイツなの……
まだ確証がない……というより信じたくない。
ここは普通に”フレイジスが連れてきた友達”を演じないと……
どうか私に……星という恵みを……
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