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結びの鐘の音

 ノランから歩いて三十分。鐘の音色が鳴り響く街、フォイン。

 街行く人の共通点は、カップルで歩いているということだ。今日もまた、共に鐘を鳴らすべく、大勢のカップルがフォインを訪れていた。


「けェー! どこもかしこもカップルって?」


「それだけ絶大な効果があるのだろう。迷信も、ここまでくればお見事だぞ」


「早く鳴らしに行きたいのだよ!」


「そう慌てるな。鐘がある塔の前を見てみるんだ。あの行列に並んだとして、二時間は並ぶようだぞ」


「に、二時間って!? その間、只単に並ぶのかって!?」


「そうだ。だから、並んでいる間に食べれる軽食や飲み物を用意してからのほうがいい」


 メイルの案により、フォイン名物のパンやジュースを準備して、行列に並んだ。塔までの距離は果てしなく、先に並んでいた人に訊いてみたところ、二時間というのも厳しいらしい。


「ティタ、大丈夫か?」


「大丈夫だよ。並んでいればいいんだもん。行列のひとつやふたつ、乗り越えられないと!」


「随分と気合いが入ってるんだなって」


「当然だよ。少しでもあやかりたいもん。ウルと一緒に……居たいもん!」


 ティタの頬が赤く染まった。どさくさ紛れにウルと手を繋ぎにいき、身体を密着させる。

 ウルはドキッとしながらも、周りもカップルだからか、ティタのアタックをすんなり受け入れた。


※ ※ ※


「メイル~!」


「もう降参か? 並んでから一時間。まだまだ並ばなければいけないんだぞ?」


「おんぶをしてなのだよ。メイルの背中で寝るのだよ」


「オイオイ。ティタは闘志を燃やしているぞ? 全然へこたれてなんかいない」


「ウルくんと手を繋いでいるからなのだよ。だからボクは、メイルにおぶってもらうのだよ!」


「……まったく。ほんの少しだぞ? 僕だって疲れるんだ」


 メルをおぶるメイル。背中に感じる柔らかい感触に照れつつも、そんなに苦しそうな顔はしなかった。それどころか、思ったよりも軽かったことに驚いていた。


「あれだけ食べていてこれか!? どういうことなんだ」


「何が?」


「何でもないぞ。しっかり食べて、ぐっすり寝る。それで元気なら文句はないさ」


※ ※ ※


 並ぶこと三時間。ようやくウル達の番がやってきた。結局、メイルはメルをおぶったままであった為、着いた頃には息切れを起こしていた。


「……疲れたぞ……」


「ふあ~! ご苦労様なのだよ」


「ほら、僕達の番だぞ。早く鳴らしてしまおう。行列は続いているからな」


 メイルとメルが縄を掴む。それを一緒に揺らして鐘を鳴らす。近くで聞く鐘の音は、二人の耳を激しく揺さぶった。


「おおー!? 凄いのだ」


「どうだった? 大迫力の目覚ましだったろう」


 入れ替わるように、ウルとティタが鳴らしに向かう。縄を掴んで大きく揺らした。鐘の音色がフォインに響く。


「この、身体の内側から響く感じ。かなり効いてくるって!」


「これで幸せになれるのね!」


「まあ、鳴らさなくても幸せだって!」


「えへへ。それもそうだね!」


 苦労を乗り越えたことで、ウルとティタ、メイルとメルの愛が深まった。鐘を鳴らす為の辛抱が、本当の鐘の効果なのかもしれない。

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