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流れ星

 数日後。にょんちゃんの権限によって、ノランの代表と軍との間で交わされた協定が正式に破棄されたとの連絡を受け、ウル達は再び、メリーの父親の元を訪れていた。


「それは本当かい!」


「うん。これで少なくとも、司令部が建つ事はなくなったって!」


「やったしょ! お父」


「そうだなあ! メリー」


 条約の破棄は、直ぐにノランの住民へと伝えられていった。皆、それはそれはお祭り騒ぎで喜びあっていた。


「何とお礼を言えば!」


「そんなのいって!? 俺達は、俺達が出来る事をやったまでだって。それにお礼を言うべき相手は俺達じゃないって」


 ウルの手招きでやって来る仮面の元帥。忙しいところを駆けつけたのだ。


「来ても大丈夫って?」


「あはは。かなり無理を言って来ちゃったにょん」


「貴女が……元帥?」


「そうにょん。初めまして、にょんちゃん元帥だにょん」


「にょんちゃん?」


「テレサと呼ばれるのに慣れてなくて……。宜しくにょんよ!」


「……は、はあ……」


 あまりにも、あっけらかんとしている元帥を目の前に言葉が出ないメリーの父親。

 そんな様子などお構い無しに、オンボロのアパートを眺めるにょんちゃん。


「うーん。だいぶ劣化が激しいにょんねえ。えと、このアパートの取り壊しには異論ないにょん?」


「はい。それには異論ありませんが?」


「それじゃあ壊すにょん。費用は全て、軍が持つにょん。それでいいにょん?」


「街のアパートの解体に、軍……国が動くのはマズイのでは!?」


「今回の件に関しては、軍にも責任があるにょん。もう、代表には話を通してあるにょん」


「宜しいのですか!?」


「にょん。このアパートを取り壊した後は、ノランの住民が快適に使え、ノランを訪れた人々も笑顔になれる公園を造るにょん」


 アパートに住む十数人に対して、近くの空き家を提供することも約束したにょんちゃんは、仮面を取ると空を見上げた。


※ ※ ※


「へえ、お祭りにょんか」


「うん! まだ祭りまで日にちがあるって。それまでどうしようか考えてるんだって」


 すっかり陽は落ち、辺りは月の光で照らされていた。ホテルの一室で夜空を見上げるウル達。


「綺麗なのだよ!」


「ああ。いい月だ」


「私は星派だよ。夜空に輝く星には、何とも言えない魅力があるよ!」


「どいつもこいつも、月だ星だと色気付いてって。確かに綺麗だけど、俺にはそこまでの感性はないって」


「ウルってば、ノリ悪いよ!」


「構わないって」


 そう言いながら、ソファーに腰掛けるウル。

 ウルの視界に映るのは、星を見上げて喜ぶティタの、星にも負けない眩しい笑顔だった。


「素直じゃないしょ」


「俺は、花より団子だって」


「ティタを団子に例える辺り、あまり芸術の類いは期待出来ないしょ」


「……お前はこれからどうするんだって?」


「いきなりだしょ。……お父はお母の所に帰るって言ってた。アタチも一緒に行くしょ」


「九歳だったんだな。てっきり同い年かと思ってたって」


「そう。〈精進の儀〉は来年しょ。アタチは、アンチャ達にとって後輩になるしょ」


「じゃあ来年、旅立ちの時になったら迎えに行くって」


「え?」


「だから、それまでは家族一緒に居るって」


「……しょうがないしょ……分かったしょ。どっちも約束する」


「おう!」


 ウルの笑顔が、メリーの目に眩しく映る。それだけで充分に、メリーの寂しさは消えていた。


「あ! 流れ星なのだよ!」


「本当!? メルちゃん」


 流れ星で一喜一憂する姿。その姿もメリーにとっては眩しかった。


「ありがとうしょ」


 満面の笑みでお礼を言うメリー。

 ウル達は笑顔でメリーに応えたのだった。

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