重なる境遇
地図を頼りに歩いていた五人。
メイルがメリーの代わりに地図を読んでいた。
「あと少しだぞ」
「本当!?」
「ああ。君の得ている情報に誤りがなければ」
「メイル~」
「どうした? 食事ならしただろう」
「ボクはそんなに食いしん坊じゃないのだよ!」
メルは、一軒の花屋を指差した。
店の前に、幾つもの花が並んでおり、道行く人が立ち止まっては入っていく。
「メリーちゃん。パパ、好きなお花はないの?」
「赤い花が好きだったって、お母から聞いたことがあるしょ」
「赤いお花か……よし!」
メルは一目散に花屋へ向かっていく。
その様子を見たメイルは微笑んだ。
「メルの奴はきっと、君と自分を重ねているんだ」
「重ねてる?」
「彼女の両親も、彼女が幼いときに別れているんだ。君とは違い、父親と暮らしていたんだ」
「お母とは?」
「顔も覚えていないらしい。だからなんだろう。君を父親と会わせるのに必死になっている」
「何でそんなに他人の為に」
「そこが彼女の良いところでもあり、弱点でもある。その弱点を埋めるのは僕の役目」
「好きなの? メルの事」
「不思議と惹かれてしまった。今の僕の弱点は彼女かも」
「そうなんしょ」
メリーは、右目の眼帯を外した。そして、メイルをジーッと見つめる。
「へえ。綺麗な緑色の瞳だ」
「この目で視れる未来は精々、一年。来年の今頃、アンチャとメルは……」
「どう、なんだ?」
「……大丈夫。仲良く一緒に居る」
「そうか。そいつはよかった」
メイルはいつの間にか、手に汗を握っていた。
メルが大きな花束を持って戻ってきた。
「店員さんのセレクトなのだよ! これ、パパに渡すのだよ!」
「いいの?」
「ボクからの応援なのだよ!」
「ありがとう」
大きな花束は、メリーを隠してしまう程に大きかったが、そんなことなどお構いなしに、メリーは抱えて歩いていく。
暫く歩いていくと、静かな住宅街に入っていく。閑静と言えばオシャレな雰囲気を想像させるが、静かな住宅街は同時に不気味さも与える。
「古い建物ばっかって。こんなに汚れているのなら、新しく塗り替えればいいのにって」
「塗り替えるにも予算が要る。これだけ沢山のアパートとなれば、人手も材料も掛かる筈だ」
「メリーちゃん。パパのアパートはどこなのだよ?」
「あれ、だと思う」
メリーが指差したアパートは、他のアパートよりも年季が入っていた。汚れだけではなく、ヒビもあちこちにあった。
「人が住んでるなんて思えないよ」
「とにかく行くって。会えば分かる」
緊張の面持ちで階段を上がる。メリーの父親の部屋は、三階の奥の角部屋だった。
メリーは呼び鈴を鳴らす。ノックをする。
部屋の奥から足音が聞こえると、ドアのチェーンを外す音がした。ガチャッとドアノブが捻られる。
「はい?」
「……お父……?」
「メリーかい!? 何で判った」
「手紙の住所を頼った」
「そうか。立ち話もなんだ、入った入った!」
メリーの父親は温かく出迎えてくれた。
玄関のドアを少し重く感じたウルだった。




