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理由

 通された部屋は殺風景な雰囲気だった。

 男性一人が寝起きするのならば充分だが、子供が五人も来れば狭くなる。


「何にも用意出来なくてごめんよ」


「それよりも! こんなボロボロのアパートに住んでいるのは何で!」


「いきなりの質問がそれか。うーん……どう言えばいいかなあ」


「理由があるんですか?」


「何て言えば……。この街を救う為、かなあ」


「ノランを? どういう事ですか」


「来るときに見たんだろう? この住宅街の有り様を。それでも、人が住んでいるには訳があるんだ」


「お父、一体何なの!?」


「抗議だよ。ノランの再開発の」


「再開発って?」


「この住宅街にあるアパートを全て壊して、その跡地に司令部を造ろうと計画しているらしい」


「司令部の建設に反対なんですか?」


「前元帥の告白を聴いたかなあ? あれで軍に対して不信感が生まれたんだよ。女性の元帥に代わったとはいえ、そう簡単に組織は変わらない」


「今の元帥……テレサ元帥なら大丈夫だって! きっと国を変えてくれるって!」


「そうなのだよ! こんな危ない場所に住んでいたら大変なのだよ!」


「ノランに司令部が出来てしまったら、この街は様変わりしてしまう。アパートの取り壊しそのものには異論はないんだ。あくまでも、司令部を造る事に反対なんだよ」


「お父。お母と会ってほしいしょ! その為にアタチは来たんだしょ」


「手紙や電話のやり取りも数える程だ。二年も会っていない。それなのに、いきなり会うのはおかしいだろう?」


「今会わないと駄目なんだしょ!」


「何故だい?」


 メリーは全てを打ち明けた。母親が病気で長くないこと。寄越してくれた手紙の差仕出しを頼りに来たことを。


「そうか。無理を掛けてしまっていたかあ」


「お父!」


「一目なら、一目だけならいい。だけど直ぐに戻る。この場所を死守しなければならない」


 メリーの父親の意思は固かった。

 一応の約束は取れた為、五人は部屋をあとにした。


※ ※ ※


「お前は、あのまま一緒に居ても良かったんだって?」


「なんとなく居づらくて。二年も離れていたから余計にだしょ」


「でも羨ましいのだよ。ちゃんと一緒に暮らしていた記憶があるんだから」


「メルにはないしょ?」


「うん。物心つく前に離れたからね。だから、会いたいって思わないのだよ」


「それはそれで寂しいしょ」


「正直ね、〝ママ〟は恋しいのだよ。だけど今は、メイルが傍に居てくれるし、皆が一緒だから寂しくないのだよ」


「友達、か」


「メリーちゃんも一緒なのだよ? もう、ボク達は友達なのだよ」


「メル……ありがとうだしょ」


「どういたしましてなのだよ」


 母親と会う事を明日に控え、五人はノランのホテルに泊まることにした。

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