新たな出会い
ロイズから列車で揺られること、二時間。
いつもなら寝てしまっているウルだが、なかなか寝付けないでいた。それもその筈。隣でティタが寝息を立てていたのだ。
「珍しいって」
「無理もないぞ。寒さで目を覚ました挙げ句、メルと一緒に盛り上がっていたのだからな」
そう言うメイルの隣では、メルが寝息を立てていた。メイルの肩に寄り掛かり、すやすやと眠る寝顔に、メイルは見惚れていた。
「そうしていると、お似合いだって」
「その言葉、そのまま返してやるぞ」
「「……ぷっ!」」
思わず吹き出すウルとメイル。お互い、弄られてもお構い無しなくらい、今が幸せなのだろう。
「さて、目的のノランは終点だ。まだまだ着きはしない。お互い、お姫様もお休み中だ。どうするか?」
「お前、いつからそんなキザになったって!?」
「別に僕はそんなつもりないぞ?」
「自覚が無いのは恐いって」
「そういう君も変わったぞ? 前ならば、ちょっとしたからかいにも五月蝿かったのに」
「そうだっけって?」
「自覚が無いのも、お互い様だ」
「……なんか色々あったよな。旅を始めて半年くらいだってのにって」
「思い出に浸るには早すぎるぞ。これからまた、色々な出来事が待っているのだろうからな」
「色々、か。どんな事が待ってるんだろうって」
「流石の瞳術でも、未来を予知だなんて無理だ。それに、未来が判ってしまったら、旅をする意味がないと思うぞ?」
「それもそうかって。なんだか、俺らしくなかったって」
「気にするな。君の質問に、真面目に答える僕もらしくない」
話すだけ話して渇いた口を潤そうと、コップに手を伸ばした二人。しかし、中身は空になっていた。飲み物を得ようと、車内販売のカートを呼び止めた。
「水のおかわりを欲しいんだけど」
「水で良いの? ジュースも有るけど?」
「ジュースを飲むと、かえって喉が渇くって」
「へえ、利口ね。近頃の子供は割り切っているのね。さっきの子も、牛乳を選んでいたものね」
「さっきの子って?」
「あの子よ?」
車内販売の女性が指差した座席に、静かに牛乳を飲んでいる子供が居た。
その様子が変わって見えたウルは、その子供の元に行くと、声を掛けた。
「数ある飲み物から、牛乳を選んだのは何でなんだって?」
「馴れ馴れしい。アンチャには関係無い」
「アンチャ?」
「アタチの前から消えて。邪魔」
「邪魔って!?」
「アタチの視界から消えて。この方が解る?」
その目は冷たく、どこか壁を作っている。
ウルは、その目に〝何か〟を感じた。よく見ると、右目を眼帯で隠している。
「俺はウル。良ければ名前を訊きたいって」
「アタチは別に、アンチャの名前を聞いてない」
「駄目かって?」
「名前を名乗られて、そのままスルーするアタチではない。アタチの名前、メリー」
「メリーか! 名乗ってくれてありがとう」
「用件は済んだしょ? 消えて」
一瞬、温かな眼差しを向けていたかと思えば、冷たい眼差しへと戻ってしまう。
牛乳を飲む手を休め、景色を眺める子供。
ウルは〝何か〟が引っ掛かり、暫くの間、メリーを見つめていた。




