冬の旅立ち
季節は、夏から冬へ。
暑さが去ったと思いきや、身体が凍える季節が訪れていた。薄着だった格好も、寒さを凌ぐ厚着に替わる。それは彼等とて、例外ではない。
「寒ゥー!」
「あっという間に冬だよ。季節の変わりは早いね」
「海の次は、雪なのだよ、メイル!」
「まだ降らん。降られても困る。僕達はまだ、寒さに対する身体が出来てないんだぞ」
「走れば暖まるのだよ!」
軽く走って見せるメル。彼女の吐く息は、寒さで白く見える。
「寒いって。どっか暖かい場所はないのかって!」
「南の方に行けば、多少は暖かいんじゃないか?」
「南か……」
ティタは、おもむろにガイドブックを開いた。
そして、目印を付けたページを見せてきた。
「冬にオススメのスポット! ノラン!」
「何でそこがオススメなんだって?」
「冬場でも暖かいからだよ」
「それだけって?」
「あとはお祭りかな。ノラン伝統のお祭りがあるの。一度行ってみたかったんだよ!」
「お祭りなのだよ!」
((まただ))
ウルとメイルに向けられる視線。その視線に弱い二人は目を背けるが、袖口をクイッと引っ張られ反応してしまう。
「「駄目?」」
わざわざしゃがみ、上目遣いで見つめるさまは、猫が見上げてくるのと似ていた。
ルーとティタが重なったウルは、呆気なく負けてしまう。メルの、この手の手口に慣れていたメイルは粘るものの、好きな女の子に見つめられている状況に押しきられてしまった。
※ ※ ※
「「ふんふんふーん♪」」
ティタとメルのハミングが、司令部を彩っていた。
司令部の重苦しい雰囲気を軽くしている。
「えらく機嫌がいいみたいだね。良いことでもあったのかね?」
「私達、ノランに行くことになったんです」
「ほう。確かにノランならば、冬でも過ごしやすい。これからは祭りもある。いいではないか?」
「大尉さん。何かお土産いる?」
「君達の、ノランでの土産話かね?」
「分かったのだよ。その為にも、いっぱい楽しんで来るのだよ!」
「あら? ウル君とメイル君は?」
「もうすぐ来ます。と、噂をすれば」
「……自分達の荷物だけでも持ってくれって……」
「疲れるぞ!?」
季節に似つかわしくない汗だく姿。
ティタとメルは謝りながら荷物を受け取った。
「ふふっ。大変だわね、男の子も」
「少尉もやっちゃうのって?」
「まあね。だってついつい頼りたくなっちゃうのよ。男の子に」
「少尉。君は何を言っているのかね!?」
「大尉には関係ありません。気になさらずに」
女性の怖さを再確認した男性陣。
男性の頼もしさを再確認した女性陣。
「それじゃあ行くよ」
「そんなに慌てるなって」
「気をつけて。いってらっしゃい!」
「土産話、待っている」
「「はーい!」」
寒さにも負けずに子供達は旅立っていく。
それを温かく見送る大人達。
少年少女の、新たな旅が始まった。




