奪取
「ダルン族の者のようだが……どういうことだね?」
「我らダルン族は、この国そのものに疑念を抱いている。あんな蛮賊を野放しにしている現状がおかしい」
「確かに。リバルナ盗賊団を早く捕まえてさえいれば、君達ダルン族の植民地が襲われることを回避出来たかもしれん」
「聖地を襲われ、奪われた。ダルン族の、神への信仰心は遥かに高い。神の教えに従い、殺生を禁じている。命を奪うことは叶わない」
「ダルン族には、生まれ持った身体能力があるではないか。相手の戦意を削ぐくらいなら叶った筈だがね」
「火を放られた! 抗いの隙はなかった!」
「その銃はどうしたのかね?」
「聖地から逃げたときに」
「それで抵抗出来た筈だが。その銃で私達を狙うのはお門違いだと思うがね」
「言った筈だ! 我らは、この国に疑念を抱えていると」
「……どうすれば……その疑念は消えるかね?」
「我らの聖地を取り戻さなければ……消えない」
「なんだ、簡単だにょん」
仮面を着けた者が、車から降りてくる。
身に纏っている赤い軍服が一層、威圧感を与えていた。
「「にょんちゃん元帥!?」」
「皆して驚かないでにょん。ロイズ司令部に遊びに行ったら、こんな騒動が起きたにょん。元帥として駆け付けた次第だにょんよ」
「元帥と在ろう者がノコノコと。蛮賊を野に放っていた罪、ここで受けてもらう!」
ダルン族の者が、銃の引き金を引き、銃弾がにょんちゃん目掛けて飛んでいく。
にょんちゃんは若干、面倒そうな素振りを見せるものの、銃弾を気にする素振りを見せずにいた。
「にょん」
「き、消えた!?」
「にょんちゃんに銃弾は無意味だにょん。銃弾の時間を巻き戻して、銃弾を無かった事にしたにょんよ」
「そんな!?」
「ダルン族は、殺生を禁じられている民族。食べるのは野菜や豆類。動物の類いは食べないにょん」
「それがどうかしたのか!?」
「今こそ、にょんちゃん達の助けが必要なんじゃないかにょん?」
「蛮族を捕らえられなかった組織に何が出来る!」
「君達のお願いを叶えてあげることが出来るにょん」
にょんちゃんは静かに答えた。
にょんちゃんには、確かな自信があった。
「よっ……と」
「これはメイルクン。にょん?」
「リバルナ盗賊団の頭です。他の仲間は、中で気を失ってます」
「頭クン。ちょっとお遊びが過ぎたにょんねえ。ダルン族の聖域を荒らしちゃうなんて」
「ああ!?」
「にょんちゃん、許さないにょん。平気で人の大事な物を奪う奴を!」
「黙れアマ! チヤホヤされてイイ気になってるみたいだが、リバルナ盗賊団を舐めてると怪我するぜ」
「ふうん」
ガシッと頭の口を覆うと、持っていた拳銃で太ももを撃ち抜いた。撃たれた頭は、痛みで倒れこんでしまう。
「軍を舐めると怪我をするにょん。覚えておくにょん」
「……撃っちゃったのだよ」
「いい薬にょん。薬莢だけに」
「……笑えないって」
「ライドクン。早く行こうにょん」
「どちらへ?」
「決まってるにょん。ダルン族の領地を取り返しに行くにょんよ。これ以上、面倒な揉め事は御免にょん」
まるで散歩にでも行くのかのように軽く言うと、セレンと運転を変わっていた。にょんちゃんが乗ってきた車にセレンは乗り込んだ。
「ライドクーン! 行っていーよにょん」
「やれやれ。頼もしいが、立場を考えてほしいものだ」
ライドの運転する車が先方、にょんちゃんが運転する車が後方を走る。
にょんちゃんの助手席に座らされた頭の顔は青ざめていた。傷は、にょんちゃんが止血したので問題はなかったが、撃たれたことによる恐怖心が、頭の身体を震わせていた。




