ライドVSウル
にょんちゃん元帥の声明、ルワンでの連続殺傷事件の解決……。目まぐるしく物事が動いていたこの頃、久々に休暇を取れたライドは、日頃のお礼を兼ねて子供達をある場所へ連れていっていた。
「大きい象さんなのだよ!」
「キリンの首って長いよね」
「あのチンパンジーの動き……使えるぞ!」
「腹減ったって」
「……君は興味なかったのかね? 動物に」
「俺にはルーが居るからな。事足りるって」
「そういうものかね。ゆっくり動物を見る機会などないだろうと思い、動物園に連れてきたというのに」
「こうやって見ていても凄いのは分かるって。人間なんて、この動物達に比べれば小っさいってのが」
「そういうのを痛感するのも勉強だ。自然界は厳しいものだ。君は勉強熱心なのだね」
「そんな事、学ぶまでもないって。本能で感じたんだって」
「得意の第六感かね?」
「そういうことにしとく」
動物達は、昼の時間を把握しているのかのように、飼育員の姿を見るや駆けていく。やはり動物も空腹には逆らえないのかと、ウルは苦笑する。
「ウル。何が食べたいかね?」
「肉。牛肉を噛み締めたい」
「そ、そうかね……」
ライドの視界に牛が映る。美味しそうに餌を食べる牛の姿を、気まずそうに見つめる。
「まさか大尉。牛に同情してる?」
「そんな訳がないだろう!?」
「大尉。俺達が今、生きていられるのは、他の動物の命を貰ってるからなんだぜ。食物連鎖ってやつ。それは命のリレーなんだ。同情じゃなく、感謝をしなきゃ駄目だって」
「妙に君は鋭いな」
「知ってるでしょ? 俺の第六感」
※ ※ ※
場所は変わりレストラン。牛肉を食べたがっていたウルだったが、実際に食べていたのは、パスタだった。
「牛肉はどうしたのかね?」
「パスタもアリだと思ったんだって」
「ウルは、コロコロ意見が変わるんだもん。合わせるのが大変だよ」
「俺は別に、合わせてくれだなんて言ってないって」
「もう。ウルって何にも解ってないよ!」
「そうなのだよ、ウルくん。ウルくんとお揃いでいたいのだよ、ティタちゃんは」
「食べれば無くなるのに?」
「フンッ。何にも解っちゃいないな、君は。僕なんかとっくに慣れているぞ」
「そういうメイルだって、ボクのお願いを聞いてくれないのだよ」
「君のは単に滅茶苦茶なんだ。何故、僕が君とお揃いのデザインの服を着なければいけないんだ!?」
「メイルのケチ」
「なんだと!?」
「ははは。本当に仲が良いのだね。私は安心した」
「ねえねえ、大尉さん。お姉ちゃんとは……どうなのだよ?」
「何がだね?」
「お姉ちゃんと付き合ってるのでしょ?」
「は?」
メルの表情からして冗談を言っているとは思えなかった。どうしてそんなことを訊いてくるのか、ライドは不思議に思った。
「違うの? ボクてっきり、大尉さんとお姉ちゃんは付き合っているとばかり思っていたのだよ」
「私と少尉は、上司と部下。良き仲間で頼りになる。だがね、格別プライベートを共にしたことはないのだが。どうして君はそう思うのかね?」
「だって二人、お似合いなのだよ。ボクとメイルよりも!」
「それは光栄だがね。少尉には、少尉に相応しい相手との出逢いがあるだろう。私には、彼女のプライベートにまで干渉する権限はない」
「そう……」
「キリナさんに相応しい人かぁ……。うーん……いないよ、そんな人。このままだとキリナさん、一生独身じゃない? そんなのあんまりよ」
「誰か、強引にでも貰っていかないと駄目だぞ。少尉の父親はメルの父親だ。つまり、あの親だ」
メイルの脳裏に浮かぶ顔。
娘を溺愛するあまり、後つけてきた父親。その親から娘を貰う人間は、さぞかし苦労するに違いないと思う。
「そうなのだよ、メイル。ちゃんと説得しないと」
「そんな先の話、知らん!」
「そんな先の話、か。ご馳走さまだね」
にこやかに笑いながら、平らげたビーフステーキを前に手を合わせた。命をありがとう、と。
※ ※ ※
「……どうかね? 食後の運動も兼ねて、私と手合わせをしないか」
「いきなりどうしたって?」
「私も核師の端くれだ。メキメキと頭角を現す子供が側に居て、気にするなと言うほうが無理な話だ。承けてくれるかね?」
「面白いじゃねえかって! 今度は、簡単には負けないって」
広場へと移動した二人。見物客は三人。
距離を取るライドとウル。緊張感が生まれる。
「ボクがバリアを張るから安心してなのだよ! だけど、バリアを張れるのは三分だけ。分かった?」
「「了解!」」
「始め! なのだよ!」
「「!!」」
制限時間は三分。その間に勝負を着けなければならない。二人共、短期決戦に持ち込もうと動く。
ウルは、瞳術のワープを使い間合いを詰め、変身をして瞬間速度を上げる。
(考えたな。しかし!)
ライドは、自分の周囲に稲妻を発生させ、物理対策を施す。拳を当てたウルは痺れ、動きに隙が生まれた。
「っ!?」
(触れなければ、どうということはない)
稲妻を纏ったライドの速度は、ウルの速度をも上回る。青から赤の炎へと姿を変えたウルは、炎の玉をライドに撃った。
(当たらん!)
「マジって!?」
容易く炎を避けたライドはそのまま、ウルに向かって稲妻を放つ。ワープを使い免れたウルだったが、稲妻の如く素早いライドに、移動先へ瞬時に詰められると、その稲妻に打たれてしまった。
「……全身が痺れて少しの間、自由が奪われる程度だ……。安心したまえ」
(クッソー! また負けたって!)
「流石はライドさん! そう簡単には負けませんね」
「済まない。彼の勝つところが見たかったであろう」
「気にしないでくださいよ。現実の厳しさを思い知らせないと、無茶ばかりしちゃいますから」
「私を超そうと無茶をするやもしれん。その時は、君が一番の説得役になるだろう。頼んだよ、ティタちゃん。一応、私の弟子なのでな」
「分かりました! ライドさん」
ライドは喜んでいた。敗れはしたが、格段に強くなっていたウルを。
そして望んでいた。いつか自分を超えてくれることを。




