伝わる危機
キリナは、着けている腕時計にチラッと視線をやると、大将達の方へ向き直った。
「単刀直入でお伝えします。あなた方は、命を狙われています。元帥の息の掛かった者達に」
「どういうことだ?」
「〈研究所の悲劇〉なら、ワタシも聞いたことはありました。ですが、事件の詳細までは知りませんでした」
「おれ達を見て、〈研究所の悲劇〉が出てくるってことは……」
「ここに来るまでに知りました。道中泊まったホテルにて、ここへ来る大将の会話を聞いたんです」
「盗み聞きにょんね」
「こんな所での会議とは? と気になったものですから」
「その大将は何と?」
「『全員残らず始末しろとの、元帥様からのお達し。ヘマは出来ない。地位と名誉の為』、と」
「元帥とて、おれ達の行動までは知る由もない筈だ」
「やはり、ライドクンの部下が」
「ライド? ……ライド大尉のことですか」
「うん。にょんちゃん達が、ここで集まる事を盗み知った疑いがあるにょん。君が来たのも、情報を知ったからでしょにょん?」
「同じ隊の者から知りましたが。彼が、どうやって情報を入手したか迄は……」
「そうにょんか……分かったにょん」
「ワタシを疑わないのですか?」
「ライドクンから直接訊けばいいにょんから」
「そうですか」
「……で、おれ達を地位と名誉の為に始末しようとしている大将は?」
「もうすぐ到着するでしょう。その前に場所を変えましょう」
「アタイ達がゾロゾロと移動すれば目立つし」
「どうする気っしょ?」
「カムール司令部へ行きましょう。ライド大尉なら、信用に足ります。仮面の方、どうでしょう?」
「それは構わないにょんが……その、司令部も物騒だにょん」
「ここに居るよりは安心かと」
「そうにょんねえ~、分かったにょん」
※ ※ ※
「久し振りではないか、少尉。君も結局、来てしまったかね」
「行かざるを得なかったものですから。命令に背いたことは謝罪します。が、今は緊急事態です」
「仕方あるまい。さて、研究所の様子はどうかね?」
「……何か居るって。よくは分かんないけど、〝偉そうな奴とその部下〟って感じ」
ライドの部屋から、双眼鏡を覗くウル。
ウルの言葉を聞いたライドは、重い腰を上げた。
「どうするかね? 攻めるか、待ち受けるか、隠れるか」
「いつまでも隠れられる訳じゃないし、待っているなら研究所でも良かったし。アタイは、攻める」
「四の言う通りだ。攻めるチャンスがあるのなら、その瞬間を逃す訳にはいかない」
「そうにょんねえ。そうするにょん」
「纏まったようだね。私とキリナ少尉も同行する。誰が会議の情報を流したかを問い詰める」
「大尉。俺達は?」
「ここに居るんだ。今回は、軍の問題だからね。君達を巻き込むつもりはない」
「……分かったって……。大尉、少尉、にょんちゃん大将、気を付けてって」
「ありがとう、ウル君。帰りを待っててね」
「行ってらっしゃいのだよ~」
「ライドさん、キリナさん、どうか気を付けて」
「武運を祈る」
ウル達に見送られ、ライド一行は研究所へと向かった。主が留守にした部屋は一転、静かな空間へと様変わりしたのだった。




