人騒がせ
連行される男。布一枚掛けられて歩いているさまは、なんとも虚しいものだった。
その男を睨み付ける女性陣。怖い目に遭わされただけでなく、見たくもない姿を見せられたのだから当然だ。
「絶対許さないんだから! キツく絞られちゃえばいいんだよ、セクハラ野郎!」
「ホントなのだよ! ボクはまだ、メイルの裸だって見れてないのだよ!」
「……どさくさ紛れに何を言っているんだ!?」
「照れないのだよ」
「照れてないぞ」
「……やれやれにょん。あんな人間が簡単に潜入出来てしまう程、この司令部は緩いのかにょん」
「俺達が言っている側からこれかって。もっと警備を強化しないと駄目だって」
「そうにょんね。充分に強化しないとにょん」
「今回は、ああいう覗き魔で済んだけど、これが凶悪な殺人鬼だったら、どうなっていたかって」
「ウルクン、ちょっと怖いにょん」
犯人の背中を睨むウル。隣に居るティタの手をギュッと握り締めている。ウルに手を握られて、ティタは静かに頬を染めた。
※ ※ ※
その日の夜。ライドの好意でホテルを取ったウル達は、昼間の事もあり、一緒の部屋に泊まることになった。
「大部屋が空いていてラッキーだったって」
「ライドさんに感謝だよ。司令部の近くのホテルに泊まれるなんてね」
「……にしても、メイルとメル、どこに行ってんだ?」
「良いんじゃない? 二人きりも」
「まあ大丈夫だろうがな」
「……ウル……」
「ん?」
「あのさ……お願いがあるんだけど?」
「何だ?」
「……キス……したいなあって」
「はあ!?」
今は、広い部屋にウルと二人きり。
昼間の事もあり、ウルを頼りたかったティタ。寄り添うだけでは埋められない気持ち。手を繋ぐだけでは埋まらない気持ち。その気持ちを埋めるのに、それ以上の事を求めるのも無理はないのかもしれない。
「駄目?」
「やったことないって」
「それはお互い様よ」
目と目が合い照れる二人。心臓の高鳴りを否応なしに感じてしまう。
目を閉じるティタと、それを見て高揚するウル。緊張しつつ、ティタをそっと抱き寄せるウル。顔が近付く度に、心臓の鼓動が速くなっていく。
(キス……しちゃうんだ、私。ウルと)
(俺、ティタの、初めてのキス相手になっちゃうんだって……責任重大だって!)
お互いに緊張しながら、初めてのキスを交わした。
どれくらいだろうか……。ウルとティタが離れると、ティタが涙を流していた。目を丸くするウル。そんなウルを見て、笑顔を見せるティタ。
「嫌だったんじゃないかって!?」
「違うよ、嬉しいんだよ。嬉し涙だよ」
「はぁ~! ビックリしたって。俺も嬉しかったから」
「ばーか。動揺しすぎ」
「たくっ……人騒がせな奴だ」
ティタの頭をポンポンと触れるウル。それに照れるティタ。二人に訪れた平穏なひととき。
※ ※ ※
「タイミング最悪だぞ!?」
「戸締まりは、ちゃんとしないといけないのだよ」
部屋の扉の前で、入るタイミングを窺っていたメイルとメルだった。




