仲間の後押し
キリナは空腹を覚える。監視が付いていない今、自由に外には出れる。だが、あの大将のことだ。警戒に警戒を重ねるくらいが丁度良いと思っていたキリナは、司令部の食堂でランチを済ますことにした。
「キリナ」
「セレンじゃない。どうしたの?」
「ワッチから、キリナへの朗報なん。聞きたいん?」
「是非」
キリナの隣に座るなり、麺をすすり始めるセレン。
食べながら話してくる為、キリナは全く聞き取れずにいた。そんなことなどお構い無しに、セレンは汁まで飲み干した。
「ぷはー! 旨かったん!」
「ねえ、あのね……」
「もしかして理解出来てないん?」
「それ以前の話だわ。セレン、食べながら話すのはやめなさい。ちゃんと聞き取れなかったわよ」
「すまんすまん。麺が伸びちゃうと思ったら」
「それで、朗報って?」
「キリナを逃がしてやるん」
キリナの耳元で囁いたセレンは、コーヒーに角砂糖を十個入れて飲んでいる。キョトンとしているキリナのことなどお構い無しだ。
「逃がすって……何で?」
「司令部に居たら、キリナの身の安全はない。ワッチ達の総意だん」
「下手に動いて監視を強化されたら厄介だわ」
「その辺は任せなん。トーマの作戦通りにすれば、そういう心配はないん」
「作戦?」
「キリナはこれから、カムール司令部に向かうん。そんでもって、ライド大尉のサポートをするん」
「大尉の指示で、ワタシは司令部に残ったの。わざわざ後追いなんて……。それにワタシが居なくなったら、真っ先に疑われるのはセレン達だわ」
「大丈夫なん。ワッチが化けるからん」
「ば、化ける!?」
キリナの顔がひきつった。今の言葉の意味を即座に理解してしまった自分に参る。一番の心配事が出来てしまったからだ。
「テキトーなカツラでも被ってればバレん。案外、人の顔なんて見てないん」
「バレるわよ! そんな観察力じゃ軍にはいられないもの。速攻バレるわ!」
「トーマの作戦なん。心配要らないん。ハリーとクリスに助っ人のアルンも居るん。全力でキリナをサポートするん」
「……ライド大尉のサポートって?」
「ハリーからの書類を見たでしょん。カムールもヤバい気がするん」
「それはワタシも思ったけれど」
「ライド大尉には、キリナが居てあげないといけないん。ワッチらの総意……後押しなん!」
ニコッと微笑むセレン。子供のような明るい笑顔に、キリナの不安が和らいでいく。
意を決して立ち上がり、身体をグイッと伸ばしたキリナは、セレンの道案内で隊員達と合流した。
「あとは任せるんだ。ライド大尉を頼んだぞ」
「分かったわ。ここは任せたわよ、トーマ」
「少尉少尉! 俺には?」
「貴方は少し、落ち着いたらどう? 精々トーマの足を引っ張らないように。分かった? クリス」
「また言われてるん。ダメダメなクリス」
「五月蝿いっす! ぺったんこなセレン」
「ワッチの胸をからかったん!」
「やめないか。子供じゃあるまいだろう」
「ふふっ。〝子守り〟はお願いね、ハリー」
「「子供じゃない(っす!)(ん!)」」
「それでは、行ってきます。皆、ありがとう」
ライド隊の敬礼に見送られながら、キリナはライドの元へと向かっていった。カムール司令部へ。




