ライド隊
視線を強く感じる度に、周囲に注意する。両手を書類で塞がれており、身を護るのにも遅れを取るからだ。
(大尉も警戒しているのね。名前を名乗りはしなかった)
「キリナ少尉」
(!?)
突然呼び掛けられたキリナは、思わず肩をビクらせる。恐る恐る顔を合わせる。相手の姿を確認すると、ホッと肩を撫で下ろした。
「ハリー曹長。ビックリしたわよ」
「すまない。驚かすつもりは微塵もなかった」
「それで、呼び掛けたのには訳が?」
「今日は大将がお出掛けのようだ。思わず嬉しくなって声を掛けてしまった」
ウインクをしながら去っていくハリー。
キリナの持っている書類の上に、『落とし物』と言って紙を置いていった。
(大将が司令部を空ける……ワタシの監視も居なくなる)
キリナは書類を持って、大将室へと向かった。
※ ※ ※
「ご苦労だ。私は所用で司令部を空ける。その間、護衛も居なくなってしまうが、問題はないか?」
「ここの防犯は優秀です。心配要りません」
「そうだね。それもそうだ。司令部に居れば問題ない。職務を全うしてくれたまえ」
「お気をつけて」
背筋を正して敬礼するキリナ。大将が部屋を出ていく最後まで、キリナの緊張が解けることはなかった。
「ふぅ」
深く息を吐くと、ハリーが寄越した書類に目をやる。そこには、階級が大将の者達が、とある場所で集まる旨が書かれていた。キリナはハリーに感謝した。
「カムール司令部側、カムール研究所。日や色々な研究がされていると聞くけれど……わざわざ妙だわ」
警戒しながら部屋を出るキリナ。その足で射撃場へと向かう。アルンがキリナに気付き、そっと近付いてきた。
「どった?」
「いい落とし物が届いたのよ。アルンも見る?」
「見して見して」
※ ※ ※
「やけに静かだと思ってたけど、成る程納得、平和になってる訳だ」
「ワタシの隊長に知らせなければね。ワタシは外に出れないの。誰か代わりに知らせてくれないかしら」
「やらしいね~。あたしが断ると思ってんの?」
「やらしくて良かったわ。人徳ね」
「そう、キリナの人徳。ライドの人望」
「大尉の?」
「隊長不在でも纏まってるだなんて。うらやま」
※ ※ ※
「上手くいったっすか?」
「誰に言っている。情報集めなら任せるんだ」
「そう言うお前さんはどうなん」
「それを訊くのは野暮ってもんっすよ。俺は平和主義者。争いは好まんっす」
「上手くキリナ少尉を逃がすように言ったのに。仕方ない、自分でやるか」
「苦労が絶えんねんね。ワッチには関係ないんが」
「セレン。なんでそう、トーマの肩ばかり持つっすか」
「お前さんよりイケメンだからん」
「セレン。クリスのことを言えないぞ。自分の指示に、オマエも従ってないじゃないか」
「それを言われると痛いん、トーマ。折角のイケメンが勿体ないん」
「兎に角、いいか。少しでもライド大尉とキリナ少尉の手助けをするんだ。ハリーが戻ってき次第、キリナ少尉と合流する。大将が不在の今、ライド隊が動き出さなければならない。いいか? セレン、クリス!」
「「了解」」
トーマに敬礼するセレンとクリス。
人知れず、ライド隊が動き始めていた。




