到着
列車が止まる。降りる者と乗る者が行き交う。
彼等も例外ではなく、駅のホームへ踏み出した。
「着いたってぇー!」
「五月蝿いぞ。さっきまで寝ていたとは思えないぞ!?」
「うっさいな。カムールに着いたんだ。さっさと大尉の所に行こうぜ」
「待てウル。君は知っているのか? その大尉の居場所を」
「そりゃあ、カムール司令部だろう?」
「いくら軍の人間でも、ずっと司令部に居るわけがないだろう。確実に会うのなら、電話の一本でもいれたらどうだ」
メイルに促され、ウルはカムール司令部に電話を掛けてみた。ライドの名前を言うと、『外出中』と返された。他にライドの行きそうな場所など思い付かず、駅のベンチで項垂れた。
「こんなとこで座ってても進まないよ。とにかく駅を出ようよ」
「出てどうすんだって。どっか落ち着ける場所でも知ってるのか?」
「ウル。私を誰だと思ってるの。こんなこともあろうかと思って、カムールのガイドブックを手に入れてたんだよ!」
自慢気にガイドブックを取り出すと、パラパラとページを捲っていく。ページの角が幾つか折られており、既に幾つか目星を付けているようだ。
『ここよ!』と言いながらページ見開いてみせるティタ。スイーツの写真が掲載されていた。
「スイーツ! ティタちゃん、スイーツなのだよ!」
「そうだよメルちゃん! 甘い甘いスイーツ!」
女子が揃って反応している。そしてその雰囲気は、男子にも犇々と伝わっていた。
「い、行きたいのか?」
「行きたいのだよ、メイル!」
「お前もかって?」
「当たり前だよ! アンタが、カムールに行くって言い出す前から、いつか行けたらな~って思ってたんだよ!」
ティタとメルの、女子の憧れへの瞳の輝きが、スイーツなど興味なかった男子二人に突き刺さる。その瞳に見つめられたら最後、何も言えなかったウルとメイルだった。
※ ※ ※
「美味しいのだよ! ボク、このパフェが気に入ったのだよ!」
「チョコフォンデュ、サイコー! やっぱり、女の子とスイーツの組み合わせは揺るがないよ!」
「フゥ……。メル、落ち着いたらどうだ。口の周りにクリームが付いてるぞ」
備え付けてあるペーパーナプキンを取り出すと、慣れた手付きでメルの口を拭いていくメイル。その光景に、ティタは唖然とした。
「メイル。アンタ、メルちゃんとはどこまで進んでるのよ!?」
「どこまでとは……何だ?」
「その……キ、キス……とか」
「ボクとメイルならもう、チューしたのだよ?」
「えええ!!」
ティタの驚いた声が、店内中に響き渡る。
メルの告白にメイルも驚き、顔を真っ赤にした。
「どうしたのだよ? 二人共。せっかく来たんだし、いっぱい食べないと後悔するのだよ」
「メルちゃん! メイルとの初キスの事、詳しく聞かせてくれない」
「いいのだよ?」
「ば、馬鹿!? 君は何を!」
「ボクとメイルの初めてのチューの事を話すだけなのだよ?」
「それが問題なんだ!」
スイーツなど何処へやら。
すっかり話題は、スイーツから恋話へと変わっていた。話に混じらなかったウルは、ティタが食べ残していたチョコフォンデュに手を伸ばす。
「……たまにはチョコも悪くないな……」
「あー!?」
「んだよ。パンケーキだけだと飽きてきたから少し、お前のを貰っただけだろう?」
「私のフォークを使った!」
「食い終わって下げられたからな。それがどうかしたかって?」
「か、間接キス!?」
「はあ? 飲み物の回し飲みと変わらないじゃんか」
「飲むと食べるじゃ、話は別だよ!」
「嫌だったのか。じゃあ替えてもらうか」
店員を呼ぼうとするウルを引き留め、チョコフォンデュを食べるティタ。一口食べる度に、心臓の高鳴りを自覚する。ティタにとって、二度美味しいチョコフォンデュとなった。




