決起
それから、一ヶ月後。すっかり傷の癒えたウル達。身体を伸び伸びと伸ばす度に、身体の神経がピリピリと訴える。ウルはその痛みに不思議な感覚を覚えた。
「こんなに動くのが気持ちいいとは……。五体満足なことに感謝だって!」
「五体満足、か。もう目は平気なのか?」
「ああ。……ギルの処刑後、不思議なものを見てないしな。あれは、ギルが俺に見せた最期のメッセージだったのかも」
「気を失ってから、三日も目を覚まさなかったくらいだ。君がそれだけの目に合うほどのメッセージとは、一体何だったんだ?」
「……正義に絶対はない……とか?」
ギルの最期をその左目で見たウルには、国を守る軍も絶対ではないという考えが生まれていた。
「成る程。そうかもしれない」
キリナが、ロイズから戻ってきて話した事。軍にもまた、闇が潜んでいるかもしれない可能性を聞いていたメイルは同意した。
「やっと治ったってのに、早々に激しく動くと振り返すよ」
「大丈夫だって! おばちゃんの治療は完璧だ!」
「おばちゃんかい? これでも二十五なんだけど」
「もう、ウルってば! 失礼だよ」
「いいよ。十歳にとっちゃ、二十五はおばちゃんだろう」
「そんなこと!?」
「ま、大人になれば分かるよ。大人の魅力をさ」
「さーて。メイル、ティタ、メル……どうする?」
「「何が?」」
「ロイズに居る少尉に会いに行くとしてだ。そのあとだって」
「君はどうしたい」
「……大尉に会いに行きたい。軍認の核師を確認しときたい」
「軍認? 何よそれ」
「軍に認められた実力を持つ核師だ。軍から協力の要請をされたら、如何なる理由でも拒むことは出来ない。その要請に応じなかった場合、待っているのは処罰だ」
「ギルが殺していたのは、軍認の核師だった訳か。軍の駒として使われてほしくなかった」
「ああ、多分な。軍を憎んでいた理由にはなる。なんにせよ、人を殺していい筈はないけどよ」
「私は、ウルに付いていくよ。なんだか不安なんだよ」
「僕も行く。その方が色々と安心だろう」
「ボクは、メイルとどこまでもなのだよ」
「決まりだって。んじゃ……行くって!」
※ ※ ※
ロイズへと着いたウル達は、ロイズ司令部へと向かった。書類を抱えていたキリナと遭遇したウル達は、自分達の考えをキリナに話す。キリナは驚きつつも、その考えに反対しなかった。
「向こうで大尉と会ったら宜しくね。それと、何かあったら、遠慮なくワタシに連絡して構わないわ」
「お姉ちゃん。ボク、立派にやってくるのだよ!」
「ええ。くれぐれも無茶は禁物だからね」
キリナとメルの姉妹のやり取り。温かく見守るウルの横でティタは、ある想いを秘めていた。
「ウル……あのね……」
「どうした?」
「〈精進の儀〉を終えたら言おうと思ってたけど、色々あったから気が変わったんだ。後悔したくないもん」
「何だ?」
「私ね、ずっとずっと前から……アンタが好きなんだ」
ティタの告白にメイルは驚いていたが、キリナとメルは笑みを浮かべていた。告白された張本人のウルは、少し経って照れ始めた。愛だ恋だなんて事は、もっともっと未来の話だと思っていたからだ。
「そ、そうだったのか。今まで気付かなかったって」
「ふぅー。ようやく言えた。後悔はないよ」
「用は済んだか? んじゃ行くって」
照れ隠しのように号令を掛けるウル。ティタとすれ違いざま、その手を握り締める。ティタは驚きながら引っ張られていく。
「分かんないけど……分かんないけどっ! 俺だって、お前が好きなのかも知れない。俺の正直な答えだって!」
「うん、分かったよ」
ウルの手を握り返すティタ。そんな感じの二人をメイルとメルは、後ろから眺めていた。気分を新たに、少年少女は進み出した。




