命散りて……
腕を吊り上げられ、力なくぶら下がるギル。身ぐるみを布一枚にされ、痛々しい傷の痕が際立っている。
「どうかね? 軍隊を見下ろす心地は」
「……」
「そうだった。リイムの連中が懲らしめたのだった。これは失敬」
赤い軍服に身を包む男。腕を後ろで組み、ギルに背中を向けている。普段のギルなら、穴を呼び出して攻撃を仕掛けているだろう。が、今の彼にはそれが出来ない。軍の開発した特効薬により、能力を封じられているからだ。
「さて。処刑される者は、その方法を指定する事が出来るのだが……どうかね、ご希望の死に方はあるかな」
「……」
「おや失敬。喋れないのだったね」
男は刀を引き抜いた。その刀をギルへと振るう。胸を斬り付けられたギルが苦悶の表情を浮かべる。上半身を血で染める。ギルにとって屈辱以外の何物でもなかった。
「我に斬られることを望むか? 軍隊の銃弾の雨霰に撃たれることを望むか? それとも、それ以外を望むかね?」
「……」
「今頷けば、斬る。じゃなければ、撃つ。それ以外を望むとならば、火破りでもしよう。どうするかね?」
「……」
「言葉は不要か。頷きはなし。その目は、撃たれることも拒む目だ。反抗の目……面倒な目だ」
男は刀をしまう。執行人に合図をする。男の目は、その場の誰よりも冷たい目をしている。その目に見つめられたギルは、思わず冷や汗をかいていた。
「死を前にして尚、目の前の人間に震えるか」
「……」
「いいだろう。楽にしよう」
※ ※ ※
「何だ……これ」
左目に映る光景にゾッとするウル。夢ではないことは理解しているが、現実としても受け入れられなかった。ウルの様子に、ティタは焦る。ウルは過呼吸になってしまう。汗は止まらず、呼び掛けにも応じない。
(俺の見ている景色じゃない! これは、まさか!)
左目の景色はボヤけていく。それと同時にウルが気を失った。それから暫く、ウルは目を覚まさなかった。
※ ※ ※
「ご苦労だった。無事に処刑を完了した。これでまたひとり、悪の命を散らせた。諸君よ、感謝する!」
「「はっ! 元帥殿!」」
息絶えたギルを背に、国軍元帥が高らかに刀を天に掲げた。それに合わせ、兵士達も刀を掲げたのだった。




