ウル・ティタ:勇気
「ウル君、ティタちゃん。移動で疲れてない?」
「流石にちぃーと疲れたって」
「ウルは寝てたじゃない」
「ウル君は寝疲れかしら?」
「キリナさん。少し休みたいです。先に宿泊先を探したいですが」
「そうね。先に探した方が良いのは宿ね」
「そっかぁ。じゃあ俺達が前に泊まったホテルでいいんじゃないか?」
「もう夕方だよ、空いてるかな?」
「とりあえず、行ってみようって」
三人は、目的のホテルへと歩いていった。ウルの足元には、愛猫のルーがピッタリと付いてきている。
「お前と初めて泊まった所に泊まりに行くんだ。覚えてるか?」
「ニャー」
※ ※ ※
「キリナさん、ちょっと良いですか?」
「ん? どうしたの」
シャワーを浴びて出てきたキリナに、ティタが改まって椅子に座っている。キリナは、瓶に入った水を冷蔵庫から取り出すと、三人掛けのソファーに腰掛けた。
「こういう事を訊くのはどうかな? って思ったんですが、キリナさんからなら、良いアドバイスを貰えると思って……」
「アドバイス……ウル君のこと?」
「はい。ウルってば、この頃ギルのことで余裕が無い気がするんです。ウル自身に自覚は無いみたいだけど、無意識にギルを追っているんだと思うんです」
「……この二ヶ月、ウル君はギルを目標に修業をしてきたからね……。ギルに対して敏感になってしまってるのかもしれないわね」
「ギルは、私の師匠を殺しているんです。だから仇を取りたいんです。でも、ギルはライドさんの弟だと分かって、私は迷っているんです。仇の取り方を」
「大尉だって完全に割り切れてはいないわよ。やっぱり兄弟だもの、心が痛むでしょうね。けれど、大尉もワタシも軍人よ。役目は果たさなければならないわ」
「捕まえて裁きを受けさせれば、仇を取ったことになるのかな? それでショウさんは浮かばれるかな?」
「少なくとも、ティタちゃんがギルを殺したからって師匠は喜ばないと思うわよ。こんなに可愛い弟子に、自分の為に手を汚してほしくないでしょう」
「……ウルは……どう思ってるのかな」
「ワタシには分からないわ。ただ、大人として言えるのは、復讐は仇討ちにはならないってことね」
「……うん、そうですよね。キリナさん、ありがとうございます。キリナさんに訊いてみて良かったです」
「ワタシなんかが力になれたのならよかったわ。じゃあ、ワタシからも訊いていい?」
「何ですか?」
「ウル君のこと……好きなの?」
「はい!?」
「そうなんだろうなあ、って感じてはいるんだけど、ウル君の態度が態度だから」
「……好きですよ、ずっと。ウルは全然鈍感だから気付いてないです」
「そりゃそうね。女の子の手を無邪気に握れる程だものね。本当に大変ね、ウル君の攻略は」
「〈精進の儀〉を終えたら、気持ちを伝えようと思ってるんです。けど……」
「大丈夫わよ。ティタちゃんの想いは届くわ。けど〈精進の儀〉を終えてからでは遅いかもね」
「えぇ!?」
「この二ヶ月、ロイズでの修業の間に、ウル君の事を訊いてきた女の子が大勢居たらしいの。それこそ差し入れもあったみたいね。まあ、ロイズ司令部に出入りしている男の子ってのがポイント高いみたい」
キリナの話を聞いていたティタは放心状態だった。まさかここにきて、ウルのモテ期が来てるとは思ってもみなかったからだ。キリナは、ティタを呼び戻す為に、持っていた瓶をティタの頬に当てた。
「ギルの事が落ち着いたら伝えてみれば? ティタちゃんの素直を想いを伝えれば、きっとウル君に届くわよ!」
「……私、頑張ります!」
「さあ、ティタちゃんもシャワーを浴びてきなさいな。上がったら、ワタシが髪を乾かしてあげる」
「はーい」
※ ※ ※
「ハクション!」
「ニャー?」
「誰かが俺のことを噂してるな……誰が?」
ウルはベッドで、猫じゃらしを片手にルーと遊んでいた。




